第8話 新たな武器
「カナタ、起きて! おいしそうなにおいがするよ! おなかすいたよ!」
目を覚ました俺は、眠い目をこすりながら目を開ける。
すると、ミウが俺のお腹の上で飛び跳ねているのが見えた。
「ミウ、おはよう。早起きだね」
「早くないよ! もうお昼だよ。 早くごはん食べよう!」
どうやら寝すぎてしまったらしい。
ミウも流石にお腹がすいて我慢できなかったようだ、悪いことをした。
俺は顔を洗うため洗面台に向かう。
余談だが、この異世界では水の便だけはしっかりしているようだ。トイレは水洗、中央通りの中心には噴水もある。
他は中世っぽいんだけどなぁ。まあ便が良いのはいいことだ、おかげでサッパリ顔とかも洗えるしね。
あまり深く考えないことにしよう。
ミウを定位置に乗せ、1階へと降りて食堂に向かう。
席に着き、鍵を見せて宿屋のおばちゃんに質問をした。
「すいません、寝坊して朝食に間に合わなかったんですけど、今でも大丈夫ですか」
「う〜ん。本当はダメなんだけどね。初日ということで特別だよ。次回からは、昼は別料金をもらうからね」
「ありがとうございます。あとミウの分の食事も頂きたいのですけどいいですか。もちろんこれは料金を払います」
「ああ、もちろんいいよ、1食が銅貨4枚だよ。4日分だと32枚だけど30枚にまけとくよ」
俺は追加料金を支払ってミウと食事を堪能した。
今日のメニューは、パンとシチューのような煮込み料理だ。肉もたっぷり入って結構うまかった。
さて、お昼も食べたしギルドカードでも貰いに行くか。
稼がないとその後の資金もないしね。
ギルドに到着した俺は、カウンターに声をかけた。
「すいません。昨日登録してもらった者なのですが、ギルドカードは出来ていますか?」
受け付けてくれたのは、昨日とは違うお姉さんだ。
「お名前を教えていただけますか」
「カナタといいます」
「カナタさんですね。――出来ていますよ。こちらになります」
渡されたギルドカードには、しっかり自分の名前が記されていた。
「ギルドカードは、無くされますと再発行に銀貨3枚いただきますので、紛失には十分注意してくださいね。では、ご活躍を期待しております」
そう言うと、お姉さんはすぐさま並んでいた次の人の相手を始めた。
「さて、いろいろ見てみようか」
「うん♪」
ミウの同意を得て、俺は依頼の貼り出されている場所まで移動する。
依頼は壁に張り出されており、それぞれのランクごとに分けられていた。
早速、Hランクの依頼を確認すると、ほとんどが採取系の依頼か、草むしり・修理などの街の雑務の仕事だった。
「どれにしようか?」
「キュ〜?」
2人で悩んだ末に、ヒナタ草の採取という依頼を受けることにした。
紙をはがして受付に向かう。
依頼受付窓口にはサトミさんがいた。
「この依頼を受けたいんですけど、ヒナタ草の生えている場所や見分け方の資料はありますか?」
「はい、ありますよ。資料の貸出は厳禁ですが、ここで読んでいく分には大丈夫です。昨日登録されたカナタさんですね。頑張ってください」
どうやら覚えてくれていたようだ。なにげに嬉しい。
サトミさんが言うには、ヒナタ草の採取は期限が決まっておらず、常時依頼されているとのこと。ポーションの材料になるので、需要が多いらしい。
資料に目を通した俺は、依頼に向かうのは明日にして、街を見て回ることにした。
屋台の串焼きをミウと供につまみながら、俺は武器店へと足を運んだ。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか」
見た目15歳くらいのおさげの女の子が声をかけてきた。
「このロングソードなんですが、修復と手入れの依頼は可能ですか?」
「はい、大丈夫だと思います。少々お待ちください」
店員さんは奥へと引っ込む。
しばらくして、奥からずんぐりむっくりなおじさんが現れた。
ドワーフだ!
「あんたが修復を頼んできた客か。どれ、物を見せてみろ」
俺はロングソードを渡す。
「こりゃひでぇ! 手入れをせずに使っているからこんな事になる! こりゃもうダメだな」
「そうですか……」
仕方がないので、ロングソードを諦めることにした。
「じゃあ、売っている武器を見せてもらっても良いですか」
すると、ドワーフのおじさんは少し考え込み、
「よし、じゃあ兄ちゃんのために、俺が武器を見繕ってやろう」と言い、奥へと引っ込んだ。
しばらくして、目の前に3つの武器が持ち込まれた。
ドワーフのおじさんが説明を始める。
「まずこいつが一般的なロングソード、兄ちゃんが持っていたのと同じタイプだ。まあ俺が打ったやつだから、多少は性能は良いがな」
そう言うと、自慢げに髭を手でこすった。
「そしてこいつはレイピアだ。斬るというより突く武器だな。サイズとしては、ロングソードと似たようなものだから兄ちゃんでも使えるだろう」
突く武器か。使いどころが難しいな。
「最後はまたロングソードだが、切れ味と頑丈さを強化してある。まあ、その分多少値は張るがな。兄ちゃんはまだ冒険者に成り立てみたいだから、その剣があればしばらく武器には困らないと思うぜ」
俺は良い方のロングソードを買うことにした。
値段は銀貨5枚で持ち金が足りなかったが、手付けに銀貨1枚、残りは分割払いにしてくれた。
さらには、素材剥ぎ取り用のナイフもおまけで貰えた。
「いろいろありがとうございます。借金はなるべく早めに返します」
「いや、気にするな。仮に返ってこなかったとしても、見込んだ俺の目が狂っていただけのことだ。さっきのロングソードを見たが、あれはここ数日で大量の魔物を斬って出来たものだろう? それほどの腕前なら銀貨4枚程度を稼ぐのは容易いと踏んだだけさ」
「それでもありがとうございます。見込み違いにならない様に精一杯頑張ります!」
「おう! だがあまり気負い過ぎるなよ。それで失敗した冒険者を俺は何度も見てきているからな。それから俺の名前はドルムだ。手入れが必要な時はいつでも来い! 完璧に仕上げてやるぞ!」
「俺の名はカナタで、こっちはミウです。また来ますのでその時はお願いします」
「キュ〜(またくるよ)」
こうして俺は、新たなる武器を手に入れた。
中々話が進まなくてすいません。
次回、カナタがようやく街から出る予定です。