第65話 決着! 新旧騎士団
そして一日が過ぎ、俺は今、舞台の上で対戦相手を目の前にしている。
対戦相手はヨーデルという青髪の優男、もちろん新騎士団所属だ。
「ふふふっ。私の引き立て役になる為にわざわざ勝ち上がってくるなんて、ご苦労なことですね」
顔を合わせるなりの第一声がこれなのだから、よほど新騎士団には性格の良い人たちが集まっているらしい。
ただ、逆にその方がやり易くもある。
相手の騎士団が良い人だったら逆に気が引ける。
まあ、闇討ちをする集団だからそれは無いと思うが……。
「あなたの剣は以前見させて頂きました。良い所まではいっていると思いますが、まだまだ私には勝てませんよ。無駄なことはせず棄権なさってはどうです? 私も無駄な運動はしたくありませんし――」
こちらが黙っているので言いたい放題だ。
とりあえず俺は無視を継続する。
「――だんまりですか。いいでしょう。勝敗の決まっている試合は時間の無駄だとは思いますが、新騎士団のエースたる私がお相手をしてあげましょう。今日この場で無くなる古臭い騎士団への手向けと思ってください」
俺は黙って剣を構える。
ヨーデルも剣を抜き、正眼に構えた。
そして合図を待つ――
「準々決勝! 始めっ!!」
審判の合図とともに、俺から仕掛ける。
相手の懐に飛び込み、下から上へと剣でかち上げる。
ギィィンッ!!
剣と剣がぶつかり合う音が響く。
ヨーデルは剣の反発した勢いを殺さず後ろへと飛び退く。
「――へぇ。やるじゃないですか。どうやら前見た時より強くなっているみたいですね」
俺は特に返答をせず、再びヨーデルに剣の切っ先を向ける。
対するヨーデルは、まだ余裕の笑みを浮かべていた。
先ずはその笑みを消してやる!
後で思えば、言われたい放題言われて多少なりとも腹を立てていたのだと思う。
俺は全力ダッシュで相手に接近する。
シュパッ!!
ヨーデルの目の前で居合のように放った斬撃は、彼の鎧を大きく傷つける。
まだ浅いか!
ヨーデルは驚愕の表情で俺を見ている。
「ヨーデル! 何を遊んでいる! さっさと片付けないか!」
野太い声が舞台上に届く。
客席を見ると、成金趣味の貴族風の男が仕切りに怒声を浴びせていた。
「――お遊びはお終いです。スポンサーに嫌われてしまってはいけませんしね」
ヨーデルの俺を見る目つきが変わる。
俺は油断なく相手の出方を窺う。
相手に動きは無い。
ならば……
俺は踏み込み、袈裟掛けに剣を振り下ろす。
シュパッ!!
しかし、手応えが無い。
ヨーデルの姿が、幻のように薄れ、消えていく。
ガキィン!!
突如、横からの衝撃を受け弾き飛ばされる。
嫌な予感に反応して咄嗟に剣を防御に向けたが、ダメージは殺しきれない。
俺は左腕のダメージに耐えつつ、再び剣を構える。
「ほう、あれを初見で躱しますか」
ヨーデルは底意地の悪い笑みを浮かべる。
何があった?
俺は頭の中で情報を整理する。
「くくくっ。次は本気で行きますよ。この剣にかかって無事でいた人はいません。そういえば、貴方の仲間もそうでしたねぇ」
彼の頭の中では勝利が確定しているのだろう。
再び余裕の表情で俺を見下す。
「これで古臭い騎士団は終わりです。思えば短い付き合いでしたが、諦めて次の就職先でも探してくださいね」
負ける訳にはいかない。
カリスの為にも――
俺はその場で目を瞑る。
「くくくっ。諦めたのですか。良いでしょう、引導を渡してあげますよ」
ヨーデルの気配が次第に薄くなる。
そして一つ、二つとその薄い気配が広がりを見せる。
俺はさらに精神を集中させる。
ブワッ!!
その気配の一つが大きく膨らんだ。
そして俺の背後から迫る。
シュッ!
グワシャッ!!
客席から大きな歓声が上がる。
目を開けると、場外で伸びているヨーデルの姿があった。
「ふぅ……」
俺は大きく息を吐き、緊張を解く。
「勝者! 王国騎士団カリス!!」
今だにヨーデルのあの剣のからくりは分からないが、一つだけ言えることがあった。
特訓時のダグラスさんの言葉を思い出す。
「余程の達人でない限り、完全に気配は断てないものだ。特に攻撃に転じるときはな。そこに必ず隙が出来る」
そう、こちらがじっとしていれば、相手が必ず仕掛けてくる。
その気配を追撃すればよい。
実戦では初めてやってみたのだが、上手くいって良かった。
結構ぎりぎりだったけどね。
ぎりぎりでも結果は俺の勝ち。
とりあえず、これでカリスの件は解決だ。
俺はほっと胸を撫で下ろす。
さあ、残りあと二つ!
ミウとの約束通り狙うは優勝。
どんな相手が来ても、全力でやるだけだ。
そう誓いつつ、俺は鳴り止まない観客席の歓声に応えるべく手を上げた。
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