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第63話 大会出場!?

 ベッドの上で紅い顔をして寝込んでいる男。

 あれから一日たった今、意識は取り戻している。


「……はぁ、……はぁ。すいません、ご迷惑をおかけしてしまって……」


「いえ、気にしないでゆっくり治してください」


「いや、そういう訳にも……」


 無理やり立ち上がろうとする男を強引に寝かしつける。

 症状からしてもまだ安静にしていた方が良いだろう。

 だが、男もすぐには引かない。


「明日には大会が控えているんです! いつまでも寝ている訳にはいかないんです!」


 この男の名はカリスさん、騎士団の団員で今度の闘技大会に出る予定らしい。


「……その体では出ても無駄。諦めて安静にすべき」


 ミサキが冷静に分析する。


「しかし……」


「カリスさん、今年無理せずとも来年があるじゃないですか。それにこんなフラフラじゃあ勝てませんよ」


「いや、今年じゃなくちゃ駄目なんです!! ゴホッ!ゴホッ!」


 仕方がないので、スリープの魔法で眠らせる。

 効き目が薄い魔法だが、弱っている人間には丁度良い。


 しばらくして、カリスさんは眠りについた。







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





 そして始まった闘技大会予選。

 客席にはミサキ、ミウ、アリアの姿が見える。


「――しかし、なぜ俺がここにいる……」


 そしてその闘技場の中心には俺がいた。

 理由はわかっているが、正直口に出さずにはいられなかった。



「カナタ〜! 頑張れ〜!」


 ミウの声がここまで届く。

 だから名前を言っちゃ駄目だって!

 周りはミウの言葉が分からないから良いようなものの、ばれたら台無しだ。


 そう、俺の姿は周りから見たらカリスさんそっくりだ。

 魔法でそう見えるように細工してある。

 つまり、俺はカリスさんの代わりに大会に出ている。

 理由は――一言でいうと仕方なく、である。







 現在、王国には二つの騎士団がある。

 昔からある王国の騎士団と、ここ数年前に出来た新設の騎士団だ。

 二つの騎士団は事あるごとに対立をし、国王を悩ませていた。

 そこで、国王はある一計を案じた。

 今年の闘技大会で成績上位の者のいる騎士団の方を正式に残すと――

 

 旧騎士団の予選突破者は五人いた。

 新騎士団は三人、人数的には有利な展開だった。

 だが、旧騎士団の代表者は闇討ちに会い、カリス以外出場辞退を余儀なくされていた。

 そこへ来てカリスも倒れたのでは、旧騎士団の取り潰しは決定的である。

 カリスは藁にも縋る思いでカナタに何とかしてほしいと頼んだ。

 何とかなるとは思っていなかった。

 只々、必死だったのである。


 カナタも初めは受ける気は無かった。

 それがこうして受けることになったのは、偏にカリスの素性によるものだ。

 カリスは――ダグラスさんとアリシアさんの息子だった。

 二人には数えきれない借りがあるカナタには、選択肢は残っていなかった。








「よく出場できたな。だがお前が負ければそれで終わりだ」


 一回戦で当たったのは、早くも新騎士団のメンバーだ。

 下品な笑みを浮かべてカリス(さんに化けた俺)を挑発する。


「闇討ちなどして、卑怯とは思わないのか!」


 カリスさんの口調をまねて言い返す俺。


「何か証拠でもあるのか? 言いがかりをつけてもらっちゃあ困るなぁ。求められるのは結果のみ、そして古臭い騎士団はここで終わりを告げるのさ、ひひひっ」


 カリスさんの言っていた通りだな。

 こんな奴がメンバーに居る騎士団なんてろくなもんじゃ無い。

 手加減無用、速攻で終わりにさせよう。


「始め!」


 開始の合図とともに駆け出す。

 相手も剣を振り下ろすが……


「遅い!!」


 相手の剣がまだ振り下ろしきらないうちに、懐に潜り込み横なぎに剣を振るう。



シュパッ!!



 防具を切り裂き相手を吹き飛ばす。

 武闘場の足場をはるか越えて、客席の壁に激突する。



「そこまで! 勝者、王国騎士団カリス!」


 客席から割れんばかりの歓声が届く。

 少々目立ち過ぎたか……


 俺は歓声に応えることなく、そそくさと控室へと戻った。






「カナタさん強いの。凄いの」


 初めて見たカナタの戦いぶりを見て、アリアが興奮気味に話す。


「カナタなら当然だよ!」


 会場の雰囲気も相まって、ミウも興奮気味だ。


「……まだまだこれから。油断大敵」


 そう言いつつも、ミサキは嬉しそうであった。





 

 二回戦は一般出場の剣士だ。

 特にこれといった特徴は無いが、ここまで来るという事は、何か隠し玉でも持っているのだろうか。

 一応、ステータスは確認しておく。


 しかし、この試合もあっけなかった。

 相手の剣を下から跳ね上げて飛ばした後、剣を突き付けての勝利である。


 本日の試合はここで終わり。

 俺は控室で着替えてからトイレに寄り、変身を解いてミウたちの元へと戻った。


「カナタ、やったね♪」


「すごいの、強かったの」


「……お疲れ様」


 三人が俺を手放しで迎え入れてくれる。

 楽しめたようで何よりだ。


 だが、まだ新騎士団の出場者二人は勝ち残っていた。

 まだまだ油断は禁物、せめてその二人より良い成績を残さなければ……


 俺たちはカリスさんの待つ宿屋へ向かう。

 寝ているカリスさんに勝利報告するために――







 


「お前たちは何をやっている!!」



ガシャン!!



 ある一室に怒声が響き、何かの割れる音がする。

 その言葉の先には、平伏している騎士がいた。


「ははっ。恐れながら四人の騎士を出場辞退に追い込んでいます。我が騎士団で残っている二人は腕利きでございます。後れを取る事は無いかと……」


「だまれっ!! 私の望みは完ぺきな命令の遂行だ! まだ向こうには一人残っている! 万が一があったらどうするつもりだ!」


「申し訳ございません!」


 怒声を浴びせ続けている貴族風の男は、まだ怒りが収まらないらしく肩で息をしている。


「シドー様、恐れながら申し上げます」


 横に控えていた執事風の男が発言する。


「本日の大会終了後に、再び襲う手はずを整えております。ご安心ください」


 執事風の男の言葉を聞き、シドーは聞き返す。


「今度こそ、失敗は無いのだろうな?」


「ははっ! 必ずや!」


 騎士の返事に満足げな笑みを浮かべるシドー。


「くくくくっ。邪魔な騎士団がつぶれれば、後に残るのは私の子飼いの騎士団のみ。そしてゆくゆくは……」




 しかし、変身を解いたカナタを襲撃者は分かるはずもなく、再びシドーは怒り狂うのであった。


 


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