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第62話 王都散策

ピピピピッ! ピピピピッ!

 


 時計のアラーム音が鳴り、目が覚める。

 そっと腹の上のミウを持ち上げ、ベッドに戻す。

 

 結局、宿には泊まらず別荘で睡眠を取った。

 色々な理由で落ち着いて眠れそうになかったから……。

 ミサキは残念がっていたようだが、そこは俺が押し切った。


 それによりアリアを別荘に連れて来ることになったが、それについては問題ないだろう。

 オークや妖精の面々を紹介したときは、初めこそ緊張していたようだが、後半はずいぶん打ち解けていた。

 特にアウラウネのフィーネとは気が合ったらしく、色々と話が盛り上がっていた。


 そのアリアだが、現在はミサキと同じ部屋で寝ている。

 ミサキは無口だが面倒見は良いので問題ないだろう。


「さて、朝飯でも食うか」


 そう言って、ドアノブに手をかけた俺に声がかかる。


「カナタ、待って! ミウも行くよ!」


 いつの間にか起きていたミウが頭の上に飛び乗る。

 そのいつもの重さを感じつつ、俺は階段を降り食堂へと向かった。



 目の前に置かれたのは温かいご飯に卵、味噌汁。

 今日の朝食は俺のリクエスト通りだ。

 卵に醤油をたらし掻き混ぜ、ご飯にかけた後さらに掻き混ぜる。

 卵かけご飯の出来上がりである。

 それをさらさらと口の中に流し込む。

 スラ坊の腕によりをかけた美味い食事も良いが、たまにはこういったシンプルな食事が恋しくなる時もある。

 横ではミウが目玉焼きを器用に頬張っていた。


「……おはよう、カナタ」


「おはようなの」


 丁度食べ終わる頃、ミサキとアリアが食堂に入ってきた。


「おはよう、二人とも。アリア、よく眠れたかい?」


「ぐっすりなの。ありがとうなの」


 見ると顔色もだいぶ良くなっているようだ。

 良かった。


 ミサキとアリアが食べ終わるのを待って、俺たちは宿屋の部屋に飛んだ。

 宿には朝食はいらないと話してある。

 そのまま街を回ってみるつもりだ。


 部屋を出て、受付にいたアンジェラさんに鍵を渡す。


「あらん♪ お出かけかしら♪」


「はい。おそらく夕方には戻ります」


「そう。気をつけてね♪」


 アンジェラさんに片目でウィンクされる。


「…………」


 不吉なことが起こらなければ良いが……。





 せっかく王都に来たので、マーテリアさんの店にも顔を出した。


「いらっしゃい。どうだい、装備の調子は?」


「はい、大分良いです。今日は武器のメンテナンスをお願いしたくて来ました」


 俺は腰から剣を鞘ごと外し、目の前のカウンターに置いた。


「ふん、こんなに傷めて……、仕方ないねぇ。代金はしっかり貰うよ!」


 メンテナンスは2日程かかるとの事。

 ――となると、大会までの間に依頼を受けるのは無理だな。

 まあ、ゆっくりするのも偶にはね。


 マーテリアさんの店を出て、しばらく当てもなく歩く。

 ふと、辺りを見ると、いつの間にか店や露店が消えていた。


 周りの建物も風変りして、木造の掘っ立て小屋のような物や石造りだが人がもう住んでいないような建物などが並んでいる。


「わたしはここでよく寝てたの」


 アリアがある建物を指さす。

 その先に在るのは、見るからにボロい廃墟のような建物だ。

 うん、やっぱりこれからのアリアの住まいは俺が保証しよう。

 さすがにあんな建物に戻れとは言えない。


 ここは所謂貧民街といった所なのだろう。

 先程から、ギラギラした視線が俺たちに向けられている。


「……カナタ、あまり長居しない方が良い」


 ミサキの意見に従い、俺たちは元来た道を戻ることにする。

 

 しかし、その途中で何やら揉めているような声が聞こえてきた。


「くそっ! なぜこんな事をする」


「へへっ、これも依頼なんでな。悪く思うなよ」


「なあに、もうちょっとだけ傷つけさせてくれればいいだけだ。何も命までは取らねえよ。大人しくしていた方が身の為だぜ」


 俺は声のする方向に向かって走り出す。

 ミサキとアクアもそれに続く。

 狭い建物の間を抜けると、そこには一人の若者が数人の男に囲まれていた。

 

 若者は剣を片手で構え、肩で息をしている。

 どうやら腕に怪我を負っているようだ。

 対するは七人の見るからに人相の悪い男たち。

 見た目だけでもどちらが悪か分かってしまう。


「キュ〜!」


 頭の上でミウが魔法を唱える。

 風が刃となり男たちを襲う。


「ぐわっ!」


「何だ!?」


 男たちは突然の奇襲に対処出来ず、数人が倒れる。

 さらに、ミサキからも魔法が放たれる。


「くそっ! 役目は果たした、引き上げだ!」


 リーダー格であろう男の掛け声とともに、男たちは倒れた数人の仲間を残して逃げ出していった。


「大丈夫ですか?」


 片膝をついている若者に話しかける。

 若者といっても二十代前半、俺よりも年上ではあるが……。


「ああ、問題な……い……」


 若者は、発した言葉が終わらぬうちに前のめりに倒れた。

 俺はその男を抱え起こす。

 見ると、赤い顔をして冷や汗をかいている。


「とりあえず運ぼう!」


 俺は男に回復魔法をかけ、そのまま背負って宿へと向かった。

 ちなみに、倒れているゴロツキは、運ぶ手段がないのでそのまま放置しておいた。

 ミサキやアリアに運ばせるわけにはいかないからね。




ぎゅっ……ぎゅっ……


 絞った布が男の額に当てられる。


「とりあえず安静にしていれば大丈夫よ♪ 恐らくは季節の流行病ね。四〜五日の安静が必要だわ」


 男は防具を脱がされ、俺たちの部屋のベッドに寝かされている。

 どうやら怪我ではなく病気で倒れた様だ。


「それで――、貴方達は何処で寝るの? 何だったら私の部屋でも良いのよ♪」


「いえ、大丈夫です! 床でも何でも屋根があれば十分です」


 アンジェラさんの不吉な誘いを即座に断る。


「あら残念♪ じゃあ布団で良ければサービスで貸してあげる。後で持ってくるわね」


 そう言って、アンジェラさんは部屋を出て行った。


 とりあえずの危機を脱した俺は、ミサキに話しかける。


「この人はここで寝かせて置くことにして、別荘には戻りにくくなったね」


「……いざという時にはどこからでも行ける。問題ない」


 ふと見ると、アリアが男の顔をじっと見ている。


「何か見た事あるの。何処だかは忘れたの」


 俺は、何故か嫌な予感がした。

 この時の予感はいろいろ当たっていたと、後々嫌というほど感じることになるのだが、この時の俺は知る由もなかった。





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