第60話 再び王都へ
不覚にも風邪で寝込んでしまいました。
皆さんも健康には十分に注意してください。
「気にしないで下さい。残念ではありますが妖精の皆たちは助かりました。感謝しています」
そう言うと、フィーネは俺たちに頭を下げた。
「いや、こちらこそ森を守ると言っておきながら力になれなくて申し訳ない」
「そうよ、そうよ! 守るって言ったじゃないの! どうしてくれんのよ!」
妖精の一人が避難する。
「アエラ、やめなさい。カナタさん達は十分やってくれました。貴方が助かったのだって、カナタさん達のおかげなんですよ」
妖精を諭すフィーネ。
小学生くらいに見えるフィーネが大人びた言葉で諭す姿には多少違和感がある。
その違和感は置いておくとして、俺は考えていたことをフィーネに提案する。
「どうだろう。この空間には小さいながらも森があるので、よければそこを住まいにとして使って貰えればと思うのだけど……」
「ホント!?」
アエラが食いつく。
それをフィーネがあわてて止める。
「いえ、助けてもらった上に、そこまでされてしまっては――」
「……これから住む森を探すとなると危険。せっかくの命、大切にするべき」
「そうだよ! そうしなよ!」
フィーネの断りの言葉をミサキとミウが遮る。
妖精たちはその間もじっとフィーネを見つめている。
その妖精たちを見回し、再びフィーネは口を開いた。
「わかりました。ご迷惑ばかりかけますが、ご厄介になります」
「いや、こちらこそよろしく。困ったことがあったら何でも言ってほしい。それから敬語はいらないからね」
「わかりまし……、いえ、よろしくね」
こうして、別荘のまわりに新たな住人が増えることとなった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「坊主、これをやる。見に行って来い」
激しい特訓が終わり、息も絶え絶えな俺に向かって何かを投げてよこすダグラスさん。
「これは!?」
「ある伝手で貰った闘技大会のチケットだ。六日後にやるらしいから見て勉強して来い」
どうやらただの観戦チケットのようだ。
ダグラスさんならいきなり出場しろとか言い出しかねないだけに、内心ほっとした。
「――何なら、出るか?」
その俺の心境を見抜いたのか、半分冗談交じりで提案してきた。
しかし、目が笑っていない。
「いえ、一生懸命見て勉強してきます!!」
「なんだ、残念だな。出るからには優勝以外許さんというつもりだったのに……」
そう言い、豪快に笑う。
その様子を縁側に座りながら微笑みながらアリシアさんが見ている。
膝の上にはミウ、横にはミサキといういつもの構図だ。
「世の中にはまだまだ強いやつがいる。そいつらの戦い方を見るのもまた勉強だ。吸収して来い!」
「はい!!」
俺は元気よく返事をした。
確かに、こちらに来てから他の人の戦いを見る機会はほとんど無かった。
目の前の人外な人の戦いなら何度も目にしているが、もっとレベルが近い人たち(人間レベル)の戦いはどの様なものだろうか。
参考にして戦力アップにつなげよう。
「ん!? 何か失礼なことを考えなかったか?」
ダグラスさんの鋭い勘による突っ込みを即座に否定する。
今日もバレン村は平和であった。
「――と、いうことで王都に到着!」
ゲートを利用し、王都近辺に降りた俺たちは、そのまま歩きで王都へと入場する。
城下町を見渡すと、以前来た時よりも冒険者の数が多いように見えるのは気のせいでは無いようだ。
やはり闘技大会があるからだろうか。
別荘には戻らず、王都でしばらく宿を取ることに決めている俺たちは、先ずは宿を探すことにした。
それにしてもすごい賑わいだ。
数々の露店も道沿いに出回っている。
「闘技饅頭いかがっすか〜? ここでしか買えないよ!」
「第42回闘技大会記念アクセサリーはいかがっすか〜? これを逃すと二度と手に入らないよ〜!」
どこの世界にでも便乗商法というのはあるらしい。
商魂逞しい男たちが、声を張り上げお客を呼び止める。
中には女性もいるみたいだ。
「アクセサリー、いかがなの?」
考え事をしていた俺の目の前に小さな露店が現れた。
いや、俺が呆けていて曲がり角を曲がれなかっただけなのだが……。
そこには所々穴の開いた布を地面に敷いて、その上に小さめのアクセサリーが置かれていた。
露店というよりフリーマーケットのような店だ。
「アクセサリー、安いの。買ってほしいの」
店主というにはあまりにも小さい女の子が、懸命に売り込んでくる。
留守番だろうか?
「お嬢ちゃん、えらいね。店番かな?」
俺は怖がらせないように微笑みながら話しかける。
「……誘拐犯発見。通報します」
「するかっ!!」
ミサキの失礼な物言いに突っ込む俺。
少女はそれを不思議そうに見ている。
「ごめんね、驚かせちゃったね」
少女はふるふると首を横に振る。
お詫びにアクセサリーでも一つ買っていくか。
効果などどうでもいいが、試しに鑑定をかけてみる。
ルビーメタル
炎系魔法威力 +30%
サファイアメタル
水系魔法威力 +30%
身代わりのロザリオ
HP30%以上のダメージを半減 消耗品
「えっ!?」
驚きの鑑定結果に思わず声を上げてしまった。
まだ幾つか商品は並んでいるが、どれも見劣りしない一級品だ。
言い方は悪いが、こんな露店で売っているのが信じられない。
ミサキと顔を見合わせる。
ミサキは珍しく俺たち以外が見てもわかるような驚き方をしていた。
「ねえ、これはどこで仕入れたのかな?」
「……企業秘密なの」
「これ一ついくら?」
もうすでに幾つか買う気でいるが、値段が気になる。
金貨10枚とか言われたらどうしよう。
しかし、少女の答えは、邪魔者によって遮られることとなる。
「てめえ! ここで商売するんじゃねえと言っていたはずだ! ここに露店を出していいのはシドー様に許可をもらった者だけだ。構わねえ、品物をすべて叩き壊しちまいな」
いきなり現れて、有無を言わさず強硬手段に入る集団。
騎士のような恰好をしているので、どこかの貴族のお抱えのようだ。
恐らくはショバ代を払う払わないみたいなものか。
どちらの味方をするかは聞くまでもない。
俺は少女と商品に襲い掛かる騎士を押さえつけ、後方へ弾き飛ばした。
「なんだ、てめえは!」
騎士の格好をしている割には中身はごろつきの様だ。
雇い主の顔が知れる。
「いきなりそれは無いんじゃないかな。あまりにも乱暴だよ」
「うるせえ! おめえら、こいつもやっちまえ!」
こりもせず俺に向かってかかってきた。
素人な動きだが油断せず、慎重に対処する。
もちろん手加減も忘れない。
「くそっ! 覚えてろ!」
ゴロツキ騎士団は、お決まりの捨て台詞を残して去って行った。
辺りを囲んでいた野次馬も、次第に興味をなくし散開していく。
「やったね、カナタ!」
「大したこと無かったからね」
頭の上のミウを撫でてから、俺は少女に近づく。
「怪我は無かったかい?」
その問いに少女はコクリと頷く。
その拍子に、かぶっていた帽子が地面に落ちる。
きれいなロングの青色の髪、尖った耳が俺の視界に入る。
ざわっ……
周りの雰囲気が変わった気がする。
立ち止まった通行人の一人がぼそっと呟く。
「ダークエルフだ……」
その呟きが周囲に伝播し、ざわつきが止まらない。
「ミサキ!」
俺の合図とともにミサキが少女を抱え上げる。
俺は商品を敷いていた布にかき集めるようにひとまとめにする。
お互い眼で合図した俺たちはその場から逃げるように立ち去った。
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