表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/74

第5話 特訓 実践編

 初日の訓練から4日経ち、今日は特訓の一環としてダグラスさんと村の外で狩りを行う。

 もちろんミウも一緒だ。

 今日の獲物はワイルドウルフ。

 この村近辺によく出没する狼の魔物だ。

 毛皮には利用価値があり、肉もまずまずの味だそうだ。

 魔物の中では弱い部類で、村の貴重なタンパク源らしい。

 特徴を聞いて、何か見たことがありそうだと思ったのは気のせいでは無いだろう。

 まあ何事にも油断は大敵、気を引き締めていかねば……。


「キュ〜!キュ〜!(ミウもやっつけるよ!!)」


 以前襲われた仕返しかどうかは分からないが、ミウはやる気十分だ。










「そろそろやつらの生息区域だ。やつらは1匹1匹は弱いが、何匹かで群れているからな。どの魔物に対する時もそうだが、決して油断するんじゃあねえぞ!」


 ダグラスさんに気合を入れられ、注意深く辺りを見渡す。

 すると200mくらい先の草むらで、何かが動いた気配がした。


「ダグラスさん」


 少し小声で呼びかける。

 ダグラスさんは既に気づいていたらしく、


「3匹ってところだな。坊主、危なかったらフォローしてやるから、そのチビと2人でやってみろ」


 俺は黙って(うなず)き、ミウとともにゆっくりと気配の元に近づいていった。





 100mくらい近づいたところで、俺の視界が3匹をとらえた。


「ミウ、今から俺が2匹を仕留める間、残り1匹を魔法で牽制してくれ」


「わかったよ。ミウ頑張るよ!」


 気づかれないように注意しながら、3匹の後ろに回り込む。





ザッ!


 なるべく音を立てないように駆け出した。

 1匹がこちらに気づいて臨戦態勢をとる。

 残り2匹にはまだ気づかれてはいないが、それも時間の問題だ。


「キュ〜!」


 ミウの魔法が発動、高圧力で収束された水が、こちらに気づいていないワイルドウルフの1匹を襲う。


バシュッ!


 ワイルドウルフの右肩をかすめる。まだまだ命中精度は今ひとつだ。


「グルルル!」


 残りの1匹もこちらに気づき、飛びかかろうと重心を後ろに落とす。


ザシュッ!


 俺の剣が、はじめにこちらに気づいた1匹を横薙ぎで捉えて首を飛ばす。

 残り2匹。


「ガァァッ!」


 大きく口を開けながら1匹が、こちらに飛びかかってくる。

 その口めがけて、剣を前に突き出す。


「グガァァッ!」 


 そのまま串刺しにする。

 あと1匹。


「キュ〜!」


 肩を痛めた1匹に、今度こそとミウが魔法を飛ばす。


ザシュッ!


 ミウが飛ばした風の刃がワイルドウルフの喉元に命中。

 もうすでに虫の息のところを、俺が剣でとどめを刺す。






「ふぅ〜」


 初めての本格的な戦闘を終えて、大きく息を吐く。


「ミウ頑張ったよ! すごい? すごい?」


 ミウが褒めてもらいたそうに、短いしっぽをパタパタと動かす。


「ああ、すごいよ。よく頑張ったね」


 そう言って頭を撫でると、ミウは気持ちよさそうに目を閉じた。


「まあ初めてにしては上出来だが、終わったと思った後にすぐに気を抜きすぎだな。中にはしぶとい奴もいる。完全に勝利を確信するまで気を抜くな!」


 ダグラスさんからの追加指導を受けつつも、戦闘が終わったことに安堵(あんど)する。

 やはり初めての戦闘は、精神的にかなりの負荷を与えていたらしい。お気楽なミウが羨ましい。

 そんな視線をミウに向けると、


「キュ〜?(どうしたの?)」


 つぶらな瞳で見返してきた。


「いや、なんでもないよ」


 そうだな、ミウはやっぱりこのままがいい。






 狩りも終わり、剥ぎ取った素材を担ぎながら帰宅の途についている。

 辺りはもう夕方を通り越して夜に近い。

 あれから3度の戦闘を経験した。

 相手はワイルドウルフのみだったが、かなり得るものはあったと思う。

 素材の剥ぎ取りに関しても、中々勉強になった。

 何も知らない自分ひとりでは、おそらく何をして良いのか分からなかっただろう。

 ダグラスさんとの出会いに感謝だな。






「おう!帰ったぞ!」


「おかえりなさい、ダグラス。カナタくんとミウちゃんもお疲れ様」


 アリシアさんが笑顔で出迎えてくれた。


「ただいま戻りました」 


「キュ〜♪(ただいま♪)」


 挨拶をすませ、中に入ると何やらいい匂いがした。


「今日はお鍋よ。獲ってきてもらったお肉も入れるから、もうちょっと待っててね」


 出来上がったワイルドウルフのお鍋は、結構おいしかった。






 俺は布団の中でこれからの事を考えていた。

 あと3日もしたら、俺はバレン村を離れ、冒険者として生活することとなる。

 果たして自分に出来るのだろうか。

 今日はたまたま弱い魔物だから勝てたものの、毎回それが続くとも限らない。

 それにその頃にはもうダグラスさんはいないのだ。

 考えれば考えるほど弱気な思考しか出てこない。


「どうしたの?」


 どうやらミウも起きていたようだ。


「いや、大丈夫。なんでもないよ」


 努めて明るく振舞った。


「カナタ、不安なの?」


 どうやらミウには通じなかったらしい。


「大丈夫、ミウがいるよ」


 いつになく真剣にミウが言った。


 そうだ、俺は一人じゃなくミウがいる。

 ミウを守らなくちゃいけない。

 いや、時には助けられるれることもあるだろう。

 この世界でたった1人の相棒なのだから。


「ありがとな、ミウ。これからもよろしく」


「うん、カナタ。よろしくね」


 2人で頑張れば何とかなる、そんな気がした。



初めて戦闘シーンを書きました。

いかがだったでしょうか。

ご意見・ご感想お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ