第49話 遺跡到着
「私が調査隊の隊長を務めるタリオンです。今日はよろしくお願いします」
護衛依頼を受けたのは、俺たちの他は2チーム。一ヶ所に集められ、今日の依頼の説明を受けている。
「今回は約一週間、調査のため滞在するつもりです。時には遺跡の内部で過ごすこともあると思って下さい。中はどうなっているか分かりませんので、危険と判断した場合は撤退することもありえますが、その時にも報酬はお支払い致しますのでご安心ください」
他の冒険者たちが黙って頷く。
「では、これから出発いたしますが、何かご質問ありますでしょうか?」
俺はもちろん、他からも特に質問は出なかった。
それを確認したタリオンさんの出発の合図と供に、俺たちは馬車へ乗り込む。
六人乗りの馬車が四台。先頭と後続には俺たち冒険者の乗った馬車、それに挟まれるように研究者の乗った馬車が進む。
俺たちが乗る馬車は先頭の馬車となった。
「おう、カナタとミサキだっけか? よろしくな」
見た目ゴリ……、体格の良い人がチーム「ソネット」のリーダーのゴルドさん、歳は四十歳前くらいだろう。
「はい、よろしくお願いします」
俺は失礼の無い様、丁寧に頭を下げる。ミサキは黙って会釈する。
それを見たゴルドさんが考え込む仕草をする。
「ふぅむ、冒険者にしちゃ珍しいタイプだな。それくらいの歳なら多少いきがってるのが殆どなんだが……」
「いいじゃないすか、リーダー。若手のお守りの手間が多少無くなって、あっしは大歓迎ですね」
今話しているのがキューイさん、キツネ目の細身の男だ。
その他のメンバーは、魔術師のアクスルさんと剣士のミレイさん、以上ソネットのメンバー四名が俺たちと同乗している。
道中、色々と冒険者の心得などを教えられつつ、馬車は目的地まで進んでいく。
そして、一度もトラブル見舞われること無く、遺跡へとたどり着いた。
俺は馬車を降り、辺りを見回す。
そこには形の揃った大きな岩が転がっており、確かに昔何かが建っていたような雰囲気だ。
あいにく俺は、古代建築には詳しくないので良くは分からないが、おそらく遺跡とはこんな感じなのだろう。
「カナタ、何かすごいね!」
ミウも初めて見る風景に、落ち着き無く辺りを見回している。
だが、いつまでも観光気分に浸ってはいられない。
俺たちは、タリオンさん率いる調査隊を守るように遺跡の中心に進んでいく。
しばらく歩いた所で、調査隊の合図により俺達は足を止める。
着いた場所は広いエリアが平坦になっており、どうやらここにテントを張るようだ。
「あちらに見えるのが、新しく発見された地下の入口です。今日はもう遅いので、明日の朝から調査を開始します」
タリオンさんの説明の後、俺たちはテントの設営の手伝いをする。
思えばこちらの世界に来てテントなど張った事も無かったので、俺はあまり役には立たなかった。
別荘のおかげで野営とは無縁だったからなぁ……。
設営も終わり夕食の時間。
調査隊より出された食事は、お世辞にも美味いとは言えなかったが、腹には溜まった。
これが通常の冒険者などが外で食べる食事らしい。
今まで常識を外れる行動を取ってきた分、今回はいろいろと勉強になっている。
今後、他の冒険者と一緒に行動する可能性を考えると色々と覚えておいた方がいいだろう。
食事も終わり、数名の見張りを残し、皆テントへと戻る。
俺は交代時間を考えて、早めに寝ることにした。
俺たちのチームは、三交代の一番最後の時間を任されている。どうやら一番危険の少ない時間帯に置いてくれたようだ。
見るからに若造二人(+ミウ)だから当然といえば当然ではあるが……。
「起きな! 時間だよ!」
眠い目をこすりながら俺は目を覚ます。
目の前にはミレイさんの顔が……。
間近に見る女性の顔に思わず顔が熱くなる。
「ぐっすりの所悪いが交代の時間だ。私はもう寝るから後は頼んだよ!」
ミレイさんは俺の様子に全く気にする素振りを見せず、言いたいことだけを言い終えると、さっさとテントから出て行った。
「ふぅ……。よし、いくか」
すっかり目が覚めた俺は、テントから出る。
外の冷気が熱い顔を程よく冷ましてくれて気持ちいい。
ミウはそのまま寝せておこうと思ったが、どうやら起こしてしまったらしく、現在俺の頭の上に乗っている。
だだ、乗り終わるとすぐにまた夢の世界に旅立っていったが……。
見張りの所定の位置、即ち周りが見渡せる位置へとたどり着く。
そこには既にミサキがいた。
「……よく寝られた?」
「ああ、起こされるまでぐっすりだよ」
「……そう。休息は大事。どこでもちゃんと寝られることは冒険者にとって必須」
たまに出るミサキの冒険者らしいセリフに俺は頷く。
でも、そうすると俺の頭の上で寝ているミウが一番素晴らしい冒険者だね。
その事を冗談めかしてミサキに言うと――
「…………くすっ」
普段表情の乏しいミサキが、いつもより分かり易い笑顔を向けてきた。
その笑顔は、月明かりに照らされて、とても幻想的に映る。
「当然だよ♪ カナタ」
寝ていたと思っていたミウから肯定の返事が漏れる。
どうやら起こしてしまったか?
「ぐっすり寝たからだいじょうぶだよ♪ さあ、お話の続きをしよう♪」
こうして、夜の見張りは何事もなく、ただゆったりと俺たちの談笑により時間が流れていった。
朝になり、テントからまばらに人が起きだしてくる。調理班の料理が出来たところで全員が起床、朝食だ。やはりあまり美味しくなかったが、今日の体力をつける為、残さず食べることにする。
朝食も終わり、それぞれの準備が整ったところで、タリオンさんの説明を聞く為に一度全員が集合する。
「おはようございます。昨日はぐっすり眠れましたでしょうか? 本日からいよいよ地下遺跡へと潜っていきます。今日は私たち調査員六名と「ブラックソウル」、「フレンズ」の各チームに潜ってもらいます。「ソネット」の皆さんは残りの調査員と供に地上に残り、周りの警戒をお願いします」
俺たちは初日から潜ることになった。
ミウ、ミサキと供に持ち物などの確認を行う。――といっても、いざとなれば女神様の小袋があるので簡単な装備チェックのみだが……。
その時、一緒に潜る「ブラックソウル」の面々が近づいてきたので挨拶をする。
「よろしくお願いします。フレンズのカナタです」
しかし、ブラックソウルの面々はそれを鼻で笑い、立ち去っていく。
遠くから声が聞こえる。
「あんなガキどもに何が出来るって? ついてねえぜ、これじゃあ楽が出来ねえじゃねえか」
「囮くらいにはなるだろう。あとは居ないものと思えばいいさ」
好き勝手なことを言っている男四人。
ここで俺の直感が危険を告げる。
不味いと思い、ふと後ろを見ると、案の定ミサキが魔法を展開中。
「ミサキ! ストップ!! それは不味いから!」
慌てて止めに入ると、ミサキが術式の展開を止める。間に合った……。
「……これからの為、実力を見せたほうが良い」
「いや、でも怪我をさせちゃ不味いって。これから護衛任務の本番だし……」
何とかミサキを説得し、俺たちはタリオンさんの元へ合流する。
そこにはブラックソウルの面々も揃っている。
もうこちらのことは気にかけてはいない。ならばこちらも気にしないことにしよう。
ミサキは…………大丈夫そうだな。
こうして、俺たちの遺跡探索は不安な幕開けとなった。
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