第48話 忍び寄る影
「ん〜っ!?」
俺はけだるい感覚で目を覚ます。
夕食も軽めにそのままベッドへ、気がついたらもう今になっていた。
「カナタ、おはよう! もう大丈夫?」
いつの間にか俺の腹の上にいるミウが、俺の顔を覗き込みながら問いかけてくる。
俺は改めて自分の体の状態を再確認する。
「ああ、昨日よりはだいぶ良さそうだよ。ありがとう」
魔力もだいぶ回復している。これならば問題ない。
「じゃあご飯にしよう♪ ミウ、もうお腹すいたよ」
「そういえば、俺もお腹がすいたな。よし、もう起きるか」
立ち上がった俺の頭の上に飛び乗るミウ。もう慣れたものである。
俺たちは階段を下りて食堂へと向かう。
そこにはもう席についているミサキの姿が……。
「……おはよう、カナタ。……もう大丈夫そうね」
「ああ、おかげさまでね」
俺たちはそれぞれの席に着く。席にはすでに朝食用のグラスが並べられていた。奥からは、何かいい匂いがしてくる。
俺はそのまま匂いの元を待つことにする。
しばらくすると、スラ坊が器用に朝食を運んできた。
それをミサキの前へと置く。
「カナタさん、ミウさん、おはようございます。お二人の分も今持ってきますので少々お待ちください」
そう言うと、スラ坊は台所まで下がっていった。
ふと、ミサキの方を見ると、じーっとこちらを見ている。
「いや、食べていいよ。ミサキの方が長く待っていた事だし……」
そのセリフを受け、朝食を食べ始めるミサキ。そのメニューは純和食。焼き魚に納豆、生卵といったところだ。
ん!? 納豆?
「冷蔵庫の中にありました。他にもいろいろ増えてますので、後で確認してください」
俺とミウの食事を運んできたスラ坊が俺の疑問の目にに回答する。
しかし、よく食卓に出そうと思ったな。初見では何だかわからないだろうに……。
ミサキも食べ方がよく分からないみたいだ。一粒一粒摘もうとしている。
「違うよ、ミサキ。これの食べ方はね――」
俺の目の前に運ばれてきた納豆をかき混ぜてみせた。その後醤油とネギを投入。ミサキもそれを真似てかき混ぜる。
ミウも器用にかき混ぜている。なにげに凄いな。
納豆は好みの分かれるところだが、どうやら二人は気に入ったらしい。
支度の終わったスラ坊と供に、俺たちは落ち着いて朝食を取る。
ちなみにユニ助は外で食事である。朝から肉を食べているらしい。あいつ本当に馬か?
食事も終わり、俺たちは出立の準備をする。もちろんマリーさんの所に向かう予定だ。
「治っているといいね」
ミウの言葉にミサキが答える。
「……大丈夫。割と優秀そうだった」
ミサキが言っているのは、公爵お抱えの魔術師たちのことだ。
うん、ミサキがそう言うなら、多分大丈夫だろう。
「……もちろん私の方がもっと優秀……」
ミサキが胸を張る。
はいはい、言わなくても分かっておりますよ。
そうこうしている内に準備は終わり、俺たちはコルソの街へと向かった。
「あら、いらっしゃい。――ここでは何だから上がって頂戴」
マリーさんに促され、俺たちは家の中へと招かれる。
悲観した雰囲気では無いところを見ると、少しは体の具合が好転したのだろうか。
居間にて出されたお茶をすすりながら、マリーさんの話を聞く体制になる。
おっ、このお茶結構うまいな。あとで売っている所を教えてもらおう。
「今日の朝方にサツキが治癒師を連れて来てね。呪いの解析が終了したからと言って母を治療してくれたの。治るまでしばらくはかかるらしいけどね」
マリーさんは続ける。
「貴方たちがいなかったら解決出来なかったとも言っていたわ。本当にありがとう!」
両手で俺の手を握り締め、感謝の意を表すマリーさん。
ふと横を見るとミサキの目が怖い。いや、これは仕様がないでしょ。
「ミサキちゃんにミウちゃんもありがとう!」
その視線には気づかず、ミサキとミウの手も交互に握り締めるマリーさん。
ミサキも毒気を抜かれたようだ。よかった……。
「じゃあ治る目処はついたんですね」
俺の問いにマリーさんは笑顔で答える。
「ええ、本当にありがとう!」
その後、昼食に手料理をご馳走になった。とても美味しかったです。
マリーさんと別れ、俺たちはギルドへと向かう。もちろん、次の依頼を受けるためだ。
ギルド内に入り、早速掲示板にて依頼を物色する。
「う〜ん。どれがいいかなぁ」
「カナタ、これなんてどう?」
「……これとこれ。良いと思う」
三人で話し合い、一つの依頼を受けることに決めた。
<調査隊護衛任務> Dランク以上
レムール遺跡にて新たな階層を発見。未知領域の調査のため、護衛をお願いしたい。
報酬:一人 金貨1枚
備考:討伐魔物の危険度により追加報酬有り(ギルド規定による)
俺たちはその紙を持って受付へと向かう。
「はい、チームでの依頼ですね。募集人数が揃いましたので、調査隊の出発は明後日となります。よろしいでしょうか?」
異論はないので、俺は黙って頷く。
無事、依頼を受けた俺たちはギルドから出る。
気がつくともう日が落ちかけていたので、今日は別荘へと戻ることにした。
夕食にはスラ坊が、例のスープを作ってくれる予定になっているので、とても楽しみだ。
美味しい食事で英気を養い、また明日から頑張ろう!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「…………」
「……見たか? 今の男」
「はい。アレス様の魔力の残滓が感じられました」
「うむ、俺も感じた。……やつの受けた依頼――、………………」
「はっ! …………」
ギルドの角のテーブルにて、ひっそりと話された会話に気づく者は、誰もいなかった。
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