第45話 潜入
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「ククククッ、進めているようだな……」
薄暗い部屋の中で、男の声がする。
「あら、いらしたの。報酬でもせびりに来たのかしら?」
女は、その男の声ににべも無く答える。
「まあそう言うな。利害の一致したもの同士、仲良くやろうじゃないか」
馴れ馴れしい男の物言いに、女は「ふん」と鼻を鳴らす。
「そう、私と貴方はそれだけの関係。仲良くする義理はないわ」
その答えに、男はニヤリと笑った。
女は、男に一瞥もすることなく作業に没頭している。
その様子を眺めながら、男は再度、女に話しかけた。
「ここまで想われる旦那は幸せ者、いや不幸者か。まあ、俺は報酬さえ貰えればどちらでもいいがね。約束、忘れるなよ」
女は振り向くことなく答える。
「ええ、契約ですものね。そこは安心して頂戴、直に手に入るわ」
女の物言いに、男は満足げな笑みを漏らす。
「そう願いたいものだ――」
そう言うと、男は地面に描かれた模様に吸い込まれるように消えていった。
「キュルルル……」
その二人のやり取りをじっと見つめる小動物。
小動物は、役目が終わったとばかりに壁の穴から部屋を抜け出していった。
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俺の目の前には、見たこともない生き物が数十匹、籠に入れられている。
見た目はハムスターをさらに小型にしたような感じだ。
鮮やかな緑色の葉っぱを一生懸命かじっている。
「……これはクリッターという生物。この子達を使う」
「褒めてもいいよ」という雰囲気を醸し出すミサキさん。
いや、よく分からないんですけど……。
ミウも、無い首を捻っている。
「……この子達の言うことがカナタならわかるはず。これで貴方も立派なスパイ結社の頭領、おめでとう」
あまりにも説明不足なので、さらに突っ込んで質問をしてみる。
詳しく聞いたところ、アリシアさんが宮廷魔術師をしていた頃に、自らクリッターを使って情報収集をしていたとのこと。
ただし、その事はアリシアさん以外は誰も知らないらしいが……。
なぜ、そんな秘密をミサキが知っているのか?
「……私と師匠の絆は海よりも深い。当然」
どうやら本人に教えてもらったらしい。
もっともアリシアさんの場合は、クリッターの魔法順応性の高さから、何となく分かる程度なのだそうだが……。
しかし、俺たちは違う。
こう見えてクリッターは立派な魔物である。
しかも頭が良い。となれば話は簡単、クリッターと会話して教えてもらえば良いだけである。
「キュルルル」
クリッターが喉を鳴らすように鳴く。
ちなみに俺にはこう聞こえる。
「偵察するよ。ただし報酬に美味しいもの食べさせろよな」
なかなか現金な小動物である。
俺は報酬を約束し、籠からクリッターを放つ。
クリッターは、瞬く間に隙間から部屋の外へと出て行った。
「後はここで待てばいいんだね♪ じゃあミウは寝てるね」
そう言うと、ベットで早くも寝息を立てるミウ。
俺も休もうかと思ったが、何かが頭の中で引っかかる。
俺はミサキに質問した。
「ミサキ、あのクリッターたちは今回のために準備したものでは無いよな?」
「…………」
ミサキが無言でそっぽを向く。
――確定だな。
今後は、小動物の目にも気を付けようと心に誓った。
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クリッターたちの情報を元に、俺たちは現場へと急ぐ。
向かうは貴族邸の隠し部屋。
マリーさんの計らいにより、俺たちは金ピカと供に現場へと向かう。
もちろん金ピカの住んでいる屋敷ということで、正面から堂々と入場だ。
今回の目的は、呪いの現場を押さえる、呪いの解析の二点である。
「しかし、まさか屋敷の中とはな……」
金ピカことミューラーが呟く。
現在向かっている地下室の存在自体、知らなかったとのこと。
「申し訳ございません。私の落ち度です」
走りながら器用に頭を下げるサツキ。
「いや、過ぎた事は良い。今出来る事をしよう」
ミューラーの物言いに、俺は少し驚く。
ただの小太り成金貴族かと思っていたが、部下思いのところもあるようだ。
そうこうしているうちに、問題の地下室へとつながる隠し通路の入口へとたどり着く。
情報通り、本棚の裏のレバーを下におろす。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
石畳の床に穴が空き、地下へと向かう階段が現れる。
俺たちは迷うことなくその中に飛び込んでいった。
正面に現れた重厚な扉に蹴りを入れる。
扉は見事に開かれ、中の様子が目に飛び込む。
床には禍々しい魔法陣のような紋様が刻まれ、壁には血の跡だろうか、所々に飛び散ったような染みがある。
そして、その部屋の中心には、驚きの表情の中年女性の姿があった。
女性はミューラーの姿を目に捉えると、全てが分かったかのように話しだした。
「そう、とうとう嗅ぎつけたのね。もう少しだったのに……」
そう言うと、女性はうっすらと笑みを浮かべる。
その微笑みに、俺の感が警鐘を鳴らす。
その答えが間違いでないことを証明するかのように、怪しい気配が魔法陣から漂う。
「気をつけろ! なにか来るぞ!!」
俺は皆に注意を促す。
「ふふふふっ……。大人しく知らない振りでもしてくれたら良かったのに……。ここから生きて出られるかしら?」
公爵夫人は狂気を含んだ笑みで俺たちを見つめている。
その時、魔法陣から野太い腕が現れ、床を掴む。
その腕にぐっと力が入り、魔法陣から自らの本体を引きずり出す。
その頭には雄牛のような角、つり上がった目は一切の慈悲をも感じさせない。
「……デーモン」
ミサキが呟く。
何であろうが敵であることは間違いない。
さあ、戦闘だ!
俺は剣を抜き、デーモンと対峙した。
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