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第44話 結ばれぬ二人

 その翌日、いつもよりキツめの特訓を終えた俺は、ミウに回復魔法をかけてもらい、その日のうちにコルソの街に到着する。

 本当は今日一日休んでいたい気分だが、そんなことも言っていられない。

 特に寄り道もせず、マリーさん宅へと向かった。


「あら、今日はどうしたの?」


 昨日の今日でまた来るとは思わなかったのか少々不思議そうな顔をされたが、マリーさんは優しく出迎えてくれた。

 

「いえ、実は病気のことで分かったことがありまして――」


「わかったわ。上がって頂戴」


 真剣な顔つきになったマリーさんが、家に入るよう促してくれた。

 俺たちはマリーさんの後に続き、家へとお邪魔する。


「それで、何がわかったの?」


 部屋に着くやいなや、いきなり本題に入るマリーさん。

 俺も無駄な話は省き、単刀直入に話すことにする。


「はい。実は私の知り合いでそういった事に詳しい人が居まして、その人に伺ったところ、例の病気が呪いでほぼ間違いないとの事です。それで失礼ですが何か恨まれる心当たりはないかと思いまして――」


 それを聞いたマリーさんは、ふと地面の底から落ちたような顔を見せる。

 ただ、それは一瞬のことで、元に戻ったマリーさんは母親のことについて、ポツリポツリと話し出した。


「そう……。私の母が恨まれるとしたらこの事しかないわね。実は――」



 マリーさんの母親(マリアンヌ)は、早くに夫と死に別れ、女手一つでマリーさんを育てていた。

 そして、それは偶然か運命か、とある貴族の跡取りに見初められる。

 男の名はラルム――公爵家の一人息子だった。

 ラルムの熱烈なアプローチもあり、2人は互いに惹かれていき大恋愛に発展。その一年後、マリアンヌはラルムの子を授かる。

 ラルムはマリアンヌと結婚するべく、両親ならびに一族の説得を図るが、身分の違いと、マリアンヌがこぶ付きということもあり一族は大反対。

 結局2人の仲は引き裂かれることとなり、ラルムは両親に決められた婚約者と結婚してしまう。

 

 そして数年後――

 とある馬車がマリアンヌの家の前に止まる。

 馬車を降りたのは、優しそうな細身の中年男性――――ラルムである。

 再開の喜びを噛み締める暇もなく、ラルムは申し訳なさそうに要件を告げる。

 息子を譲って欲しいと――

 そう、ラルムと夫人の間には跡取りが生まれていなかったのである。

 初めは難色を示したマリアンヌだが、その息子を我が身に変えても守り、幸せにするというラルムの涙ながらの説得に応じ、息子を手放すことを決意する。

 泣く息子をなだめつつ、馬車へと乗せる。

 その馬車は愛しい人と愛する息子を乗せ、マリアンヌの元を去っていった。

 その後、ラルムとマリアンヌは二度と会うことはなかった――。


「――私の母の悲恋のお話よ」

 

 おとなしくその話を聞いていた俺は、マリーさんに疑問を口にする。


「今の話のどこに恨まれる要素があったんですか?」


 すると、マリーさんはしまったという顔をして、話を続ける。


「その現在の公爵夫人がね、情報によるとラルム様とうまくいっていないらしいのよ。いえ、ラルム様にあまり相手にされていないというのが正しいわね。随分母を恨んでいるらしいわ。おそらく――」


 バタン!!!


 マリーさんの話の途中で、急に部屋に飛び込んでくる影があった。

 その影は息を切らしてマリーさんに詰め寄り話し出す。


「姉上様、母上様の病気の原因がわかりましたぞ! 実は――」


パコンッ!


 マリーさんが拳骨を落とす。


「落ち着きなさい! 客人の前です、みっともないですよ!」


 すると、その影は俺の方を見て一言。


「ん!? いつぞやの庶民ではないか。なんだ、この間の褒美が待ちきれなくて押し掛けてきたのか?」


パコンッ!!


 再びマリーさんの威力二割増しの拳骨が落ちる。


「痛いです、姉上様……」


「いつからそんな口を利く様になったの! お客様に謝りなさい!!」


「……はい、すみませんでした」


 いつの間にかその横にはメイドが控えている。

 そう、飛び込んできたのはあの金ピカである。


「マリー様、お取り込み中のところ申し訳ありません。ですが、緊急で伝えなければいけない事でしたので……」


「いいのよ、サツキ。それに呪いのことだったらカナタくんが調べてくれたわ」


「何と!? このような庶民が!」


ぎゅーっ!!!


 マリーさんが金ピカの膨れている頬っぺたをつねる。


「いふぁい! いふぁいれす、はねふえひゃま!!」


「ミューラー。貴方から見たら私も庶民よねぇ。そんな口を私にも利くのかしら♪」


「いふぇ、ひょのひょうなふぉとふぁ……」 


「だったら――、わかるわよね♪」


「ふぁい」


 ようやく金ピカが解放される。

 マリーさんの笑顔が怖い。バックに修羅が見え隠れしている。決して怒らせないようにしよう。


 俺たちがじっと見ていることに気づいたマリーさんがコホンと一言、体裁を整える。


「ごめんなさいね、騒がしくて。一応紹介しておくわ、これが私の弟、ミューラーよ」


 これ呼ばわりされても、震える小動物のように大人しくしている金ピカ。いや、そんなに可愛くはないが……。


「実は先ほどの恨まれているという情報も、このミューラーから入ってきたものなの。弟はともかくサツキは優秀だから確かな情報よ」


「もったいないお言葉、ありがとうございます」


 メイドがマリーさんに向かって一礼をする。

 金ピカは不満そうだが口には出さないでいる。まあ理由は分かるが――。

 

 落ち着いたところで、再びメイドが話し出す。


「その呪いについてなのですが、実は現在も行われている模様。しかしどこで行われているかなどは現在調査中です。申し訳ございません」


「ありがとう。また分かったら知らせて頂戴」


「はい、必ずや!」


 そう言うと、メイドは金ピカを背に乗せ、去っていった。

 相変わらず素早いことで……。

 俺たちも帰るか。


「じゃあ俺たちもこれで――。また何か分かったら来ます。手伝えるようなことがあったら遠慮なく言って下さいね」



「いろいろ調べてくれてありがとう。もしもの時は頼むからよろしくね」


 冗談っぽく言っているが目は真剣だ。

 思っている以上にマリアンヌさんの具合が悪いのだろう。


「はい、失礼します」


 俺たちはマリーさんの家を後にした。




「これからどうするの? カナタ」


 マリーさん宅では一言も発することのなかったミウが、今後について聞いてくる。


「……公爵夫人を調べる」


 ミサキが呟く。

 いや、それはそうだけどさ。

 問題はどうやってって事なんだけど……。


「……まかせて。いい方法を思いついた」


 自信ありげにミサキが胸を張る。

 よし、その作戦に乗ってみますか。


 無茶な作戦じゃなかったらね……。 





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