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第41話 竜の鱗

更新が遅れ気味で申し訳ありません。

ズパァン!!


 横薙ぎ一閃!

 俺の剣は水平な軌道を描き、魔物の肉を捉える。

 通常よりも威力の上がったスキルによる斬撃に、獅子のような魔物は堪らず崩れ落ちる。

 しっかりと倒せていることを確認した後、俺は静かに息を吐く。


「カナタ! だいじょうぶ?」


 見ると腕から結構な血を流していた。

 どうやら魔物の爪にやられたらしい。

 それほど深くはないが、今になって多少痛みが感じられた。

 俺は集中していてかすり(・・・)傷程度にしか認識していなかったが、ミウには心配をかけていたらしい。

 ミウによる治癒魔法を受けると、次第にその痛みも引いていく。


「ありがとう、ミウ。助かるよ」


 そう言いながらミウを撫でる。


「もう痛みはない?」


 ミウの質問に俺は黙って頷く。

 そこでようやくミウの顔に安堵の表情が現れる。


「……カナタ、気をつけないとダメ。毒を持つ魔物もいる」


 ミサキにも心配をかけたようだ。

 俺は素直に謝っておく。


「……ん。よろしい」


 ミサキ様のご納得が得られたようだ。







 討伐部位の剥ぎ取りを終え、俺たちはコルソの街へと依頼の完了報告に向かう。

 コルソの街は、王都の西、セフマールの森の北に位置する農業の街で、大規模な農場があることが有名である。

 街の中には作物の直売所が所々に設けられており、王都に出回る農作物の大半がここで作られている物らしい。

 後で別荘でも育てられそうな苗があったら買っていく予定である。


 街のギルドへの報告を早々と終えた俺たちは、街の直売所を見て回ることにする。

 そこには馴染みのある物から無い物まで、ありとあらゆる作物が売られていた。

 とても1日で回れるような規模ではない。

 

「カナタ〜♪ これ美味しいよ!」


 ミウも小さい体で飛び跳ねながら、農作物(主にフルーツ)を物色していた。

 その可愛さを前面に押し出し、売り子のお姉さんから試食をもぎ取る様が、なかなかのやり手である。

 もっとも、本人にはそのつもりは無いのだろうが……。

 


 俺たちはかなりの作物とその苗を買い込み、この街の宿へと向かう。

 ギルド紹介のその宿は小綺麗で、掃除も行き届いた良さそうな宿だった。

 名物の野菜スープなど、食事が美味しいと評判らしいので、今日は別荘では無くこの宿に泊まることに決める。

 

 苗や野菜を別荘に届け、俺たちは食堂へと向かう。

 鳥肉と野菜をふんだんに使ったスープが、俺たちの目の前に用意される。

 そのスープをスプーンにて1口啜る。


「!? 美味い!!」

 

 透き通ったスープに染み出る野菜の出汁と鳥のコク、そのスープが染み込んだ色とりどりの野菜、旨さが2重、3重にも重なり、それが更なる味の高みに至っている。

 ホクホクのじゃがいも、スープがよく染み込んで柔らかくなったキャベツ、骨からほろりと取れる柔らかく煮込まれた鳥肉、それぞれがどれも最高に美味い。


「美味しいね〜♪」


 ミウの食べるペースが速い。

 ミサキも口には出さないものの、黙々と平らげている様を見ればかなり気に入ったみたいだ。

 俺たちはさらに3杯もおかわりしてしまった。


「あら、良い食べっぷりねぇ。作ったこっちも嬉しくなってくるわ」


 さすがにお腹いっぱいで苦しくなりその場で食休みをしていると、女将さんというにはまだ若い女性が話しかけてきた。


「お姉さんが作ったんですか? 凄く美味しかったです!!」


 まだ感動覚めやらぬ俺は、そのままの感情をストレートに表現する。


「そう、それは良かったわ。ここでしか食べられないから、もし気に入ったのなら次にこの街に来た時にも是非またここに泊まって頂戴」


「はい! そうします!」


 俺が元気に返事をすると、お姉さんは満足げに厨房へと下がっていった。

 うん。また来よう。





 滞在2日目もいろいろな露天を見て回る。

 ミサキもミウに便乗して、ちゃっかり試食をしている。まあ、良いけどね。

 オークたちへの土産も含め大量に食料を買い込んだ俺たちは、嬉々として宿屋に帰る。

 あの野菜スープには味付けにバリエーションがあるらしい。是非、全ての味を完全制覇しなくては!



 しかし、帰った俺たちを待っていた食事は、他の宿屋と変わらない食事だった。

 宿の女将さんに聞いてみる。


「ごめんなさいね。マリーちゃんのお母さんが倒れたらしくて……。あの野菜スープはマリーちゃんしか作れないのよ」


 仕方がないとは言え、残念な情報である。

 俺は早々に食事を済ませ、睡眠を取る(ふて寝する)ことにした。



 

 次の日の朝、俺たちは次の依頼を受けるべくギルドへと向かう。

 そこで、気になる依頼を発見する。



 <竜の鱗の調達  金貨20枚 詳細はXXXX マリーまで >



 マリーとはあのマリーさんだろうか?

 竜と名のつく依頼とあってBランクの依頼なのだが、誰も見向きもしない。

 熟練者っぽい冒険者に聞いてみると、相場に比べてかなり安く、おそらく誰も受けないだろうとのこと。

 気になったので、俺は依頼の紙に書いてある住所を元に、マリーさんの所まで尋ねることにした。





「あら、あなたは……。ごめんなさいね、あんなこと言ったのにしばらく宿には行けないのよ」


 自宅から出てきたマリーさんは心底残念そうに謝罪する。


「いえ、そのこともあるんですが、今回はギルドの依頼について気になったもので……」


「えっ!? 受けてくれるの?」


 マリーさんの顔がパッと輝く。


「ギルドのランクは足りないのですが、一応話だけでもと思いまして来ました」


 それを聞いたマリーさんの顔に落胆の色が窺える。

 

「そうなの……。まあいいわ、上がって頂戴」


 マリーさんに促され、俺たちは家に入れてもらう。

 外見とは裏腹にしっかりとした造りの家である。

 居間に案内された所で、マリーさんが話し出す。


「実は私の母親は長いこと病気で、完治させるには竜の鱗が必要なの。他の薬で騙しだまし生活していたのだけれど、とうという倒れてしまって……。医者にはこのままだともう長くないと言われたわ」


 マリーさんは溢れる涙を隠すことなく続ける。


「相場よりだいぶ低い金額なのも分かっている。でもあれが用意できる全財産なの。出来るのならば私が行って取ってきたい。でもそれが出来ないのが悔しくて……」


 その言葉を聞き、俺はマリーさんに提案する。


「分かりました。知り合いの冒険者に受けてくれそうな人がいるので当たってみます。ただし、依頼料は金貨ではなく例の野菜スープのレシピでどうですか?」


 マリーさんは、今まで俯いていた顔を勢いよく上げる。

 涙で濡れていた目が、驚きのあまり見開かれている。


「えっ!? それはもちろん構わないけど――、本当にいいの!?」


「はい、報酬は依頼完了後でいいですよ。じゃあその冒険者に連絡をつけてきますのでこれで――」


 そう言うと俺は驚くお姉さんを後にして家を出る。





「……カナタ。知り合いの冒険者って?」


 分かっているくせにミサキが聞いてくる。


「いるわけないだろ。勝手に受けちゃったけど――――良い?」


 念のため2人に聞いてみる。


「いいよ♪ これで別荘でもあのスープを食べられるね♪」


 最近食欲旺盛なミウはやる気満々だ。

 ミサキも黙って頷く。


「よし! じゃあ次の依頼は竜の鱗調達で決定だ!」


「「お〜っ!!」」


俺たちの次の依頼がが決定した瞬間だった。

 

 



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