第31話 新たな装備
ぐっ!
俺は力を込める。
その力が、拳にしっかりと伝わる。
「よし!」
俺は部屋の中で、一人ガッツポーズをとる。
あの日から2日、治癒魔法のおかげで、かなり早く完治できたようだ。
「カナタ!」
ドアが開き、ミウが飛びついてくる。それを俺は両手で受け止める。
「カナタ、大丈夫なの!?」
ミウが俺の左腕を心配する。
「ああ、ミウのおかげだ、ありがとう」
「……私は?」
ミウの後に続いて入ってきたミサキが、俺に問いかける。
「もちろん、ミサキのおかげでもあるよ。ありがとう」
「……どういたしまして」
さて、心配かけていたオークの人たちにも顔を見せに行きますかね。
ギルドの番人討伐は、本日行われているはずである。
俺も行きたかったが、ミウとミサキに断固反対された。
左腕が動く状態ではなかったので、当然ではあるが……。
俺は気分を切り替え、今日は武器屋に行くことにする。
前回の戦いでロングソード改はかなりボロボロ、修復では済まないところまで来てしまっていた。
ただ、あの激しい戦いの中、よく折れずにいてくれたと思う。
俺の命を救ってくれた一品、ドルムさんには感謝である。
俺はロングソード改を別荘に保管し、ミサキとミウに武器屋に行くことを告げる。
「……私も行く。武器の強化は必要」
「ミウはカナタといつも一緒だよ!」
こうして俺たちは3人で王都の武器屋に行くことになった。
武器屋というよりはデパート。
王都の武器屋に入った俺の第一印象である。
広い空間の中には、いろいろな武器が陳列されていた。
所々での、無骨な冒険者とキッチリとした身なりの店員とのやり取りが、何となくアンバランスである。
「いらっしゃいませ! 何かお探しでしょうか?」
店員さんが俺たちを見つけて、笑顔で話しかけてきた。
「いえ、少しいろいろ見させてください」
俺はとりあえず自由に見て回ることを選択する。
「かしこまりました。何かございましたらお声がけください」
そう言うと、店員は忙しそうに他のお客に向かっていった。
「どうするの?」
頭の上から、ミウが俺に問いかける。
「とりあえずいろいろ見て回ろうよ」
先ずは武器コーナーに向かうことにした。
「う〜ん」
俺は並んでいる武器を見て考え込む。
確かに品揃えは多い。だが何となくしっくりこない。
例えば、同じロングソード改があるのだが、確認してみるとドルムさんのそれの方が確実に性能が良い。
それよりも良い武器は売られてはいるが、性能の割に割高に感じてしまうのは俺が貧乏症だからなのだろうか?
今まで結構稼いできたので、お金が足りないということではないのだが…。
「……カナタ、悩んでる?」
「まあ、いい武器だとは思うんだけど…」
俺はミサキに思っていることを打ち明ける。
「……分かった」
ミサキはそう言うと、俺の腕を引き誘導する。
いや、そっちは出口なんですけど――。
「……一応知っている店がある。そこへ行く」
俺はミサキに引かれるまま、武器屋を出て行った。
「……あそこ」
ミサキが指を指した方向には、何やら怪しい建物がある。
緑の三角屋根に煙突が立っており、そこから何やら赤い煙が立ち上っていた。
また、朱色の壁は見事に王都の景観とミスマッチ、現代社会ならば近隣住民から訴えられそうである。
くたびれて文字のかすれた看板には、「武器・防具・アクセサリー・その他各種」と書いてあった。これにより、かろうじでここが物を売っている店だと分かる。
「……何をしているの? 早く入る」
色々な意味で圧倒されていた俺に、早く入れとミサキが急かしてくる。
俺は覚悟を決めて入ることにした。
チリン♪ チリン♪
俺たちが入るとともに、ベルのような音が鳴る。
すると、奥の方にいた人がこちらに向かってくる。
「ん、お客さんかい? あたしは一見さんには物は売らないよ。帰っとくれ」
黒いローブを身にまとったちびっ子が、大人びた口調で断ってくる。
「……わたしはミサキ。分かる?」
ミサキの問いかけにちびっ子は、じーっとミサキを見つめる。
すると、思いついたようにちびっ子が言った。
「何だい、ミハルの娘かい。ならそう早くお言い!」
「……入ってすぐ言った…」
「そういえばそうだね。で、今日は何の用だい?」
「……カナタの武器が欲しい。あと私のも…」
俺を指差してミサキが答える。
「ミサキの頼みならしょうがないね。但し代金はいただくよ」
「……当然」
こうして俺たちは武器を見せてもらえることになった。
「あんた、魔法は使えるのかい?」
ちびっ子改めマーテリアさんが聞いてくる。
見かけと違い100歳を超えているらしい。
「ええ、使えます」
「……カナタは優秀。私の人生のパートナー」
「なんだい、ミサキの旦那かい。じゃあサービスしないとね」
否定する間も無く、奥へと引っ込んでいく。
しばらくすると、マーテリアさんは奥からひと振りの剣を持ってやってきた。
「握って魔力を込めてみな」
そう言って剣を渡される。
「いや、込めろといっても…」
「どの属性でもいいから、思い浮かべて剣に流すイメージでやってご覧」
言われた通りにやってみる。
すると刀身が真っ赤に染まっていく。
「ふむ、どうやら火属性を使えるようだね。他の属性でも大丈夫だから、使えるようなら試してみるといい」
いろいろ試してみると、それぞれで刀身の色が変わった。
「属性だけでなく魔力により剣も強化されるから、そんじょそこらの売り物には負けないよ。なんなら試しにこれを切ってみるといい」
マーテリアさんは鉄の塊を俺に向かって放り投げる。
シュパッ!
その塊は、見事に真っ二つになる。
「凄い…」
「どうだい、気に入ったかい。値段は金貨10枚と言いたいところだけど、7枚に負けといてあげるよ」
俺は即決で買うことを決めた。
「おまけでこれもあげるよ。頭の上の嬢ちゃんに着けてやるといい」
マーテリアさんから投げられた指輪を俺は慌てて受け取る。
リジェネーションリング
一定時間ごとにMP10%回復
「キュ〜!(ありがとう!)」
ミウのお礼にマーテリアさんは、「いいんだよ」と答える。
何となく通じたようだ。
その他、防具系の買い物もして、気がつけば料金は金貨20枚に達していた。
これでもかなり負けてくれたらしい。
買い物リストは以下の通りだ。
カナタ
魔力の剣 金貨7枚
魔法のフード 金貨3枚
ミサキ
シャドーロッド 金貨3枚
シャドーフード 金貨2枚
シャドーハット 金貨1枚
ミウ
防御の指輪 金貨2枚
法師の腕輪 金貨2枚
リジェネーションリング おまけ
ミサキは敵の標的になりにくい装備、ミウは主に治癒系強化で揃えてみた。
「いろいろありがとうございました」
「……ありがとう。助かる」
「キュ〜(ありがとう)」
俺たちはマーテリアさんにお礼を言う。
「原価は割ってないから気にしなさんな。今の武器で物足りなくなったらまたおいで」
また来ることを約束して、俺たちは店を後にする。
その日の夜、討伐隊壊滅の知らせが王都のギルドへと届いた。
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