第27話 オーク救出作戦
あれから1日が過ぎてしまった。
今日は冒険者ギルドから討伐隊が出る日である。
現在俺たちは、森の中で待機している。
ゴランの族長としての決心は分かっているが、出来ることなら助けたい。
別荘で待つ幼いグランの為にも……。
もしかしたらギルドと敵対するかもしれない。
出来ればそれは避けたいが、敵対してしまったらそれはそれで構わないと開き直っている。
最悪の場合、ギルドと関わらずに別荘に引きこもって暮らせば良いだけだ。
ただ、俺やミウはそれで良くても、ミサキはそうはいかない。
そう思ってミサキに作戦から外れるように言ったのだが、
「……夫婦はいつも一緒。大丈夫、覚悟は出来てる」と、押し切られた。
初めのセリフはともかく、後半部分は目が本気だった。
ということで、俺たちフレンズは一人も欠けること無く作戦参加が決定し、現在の状態に至る。
俺たちは、一晩考え抜いたある作戦を実行に移すことにする。
「ミサキ、ミウ、オークたちの方を頼んだ。俺は討伐隊の方に行ってくる」
「……わかった。気をつけて」
「カナタ、一人でだいじょうぶ?」
ミウが心配そうに俺に問いかける。
「ミサキは水属性魔法が使えない、ミウが力になってやってくれ。 こっちは大丈夫だから。なあに、危なくなったら逃げてくるさ」
「うん、わかった。でも気をつけてね」
俺とミウ、ミサキは手筈通り二手に分かれる。
ここからは分担作業だ。失敗は許されない。
森の入り口から少し離れたところに俺は待機している。
討伐隊は必ずここを通るはずだ。
待っている時間がとても長く感じられる。
静かな森の中、心蔵の鼓動だけが耳に響く。
…………
来た!
討伐隊の集団が、列になってこちらに向かってくる。
よし、始めよう。
緊張で凝り固まった心をほぐすように息を吐き、俺は呪文の詠唱に入る。
「霧よ、辺りを覆いつくせ! ディープミスト!」
討伐隊を中心に深い霧が発生する。
彼らは突然発生した霧に驚いている様子だ。
だが、そこは歴戦の冒険者たち、慎重な足取りで前進してくる。
そこに俺は新たな呪文を展開する。
「虚構の敵を映し出せ! イリュージョン!」
すると討伐隊の視界にオーク(幻)が現れる。
オーク(幻)は一斉に呪文を唱え始める。
「オークの奇襲だ! 気をつけろ!」
討伐隊のリーダーらしき人物が叫ぶ。
オーク(幻)の呪文の詠唱が終わると共に、大量の炎の球が討伐隊を襲う。
実は、この魔法も俺が唱えている。
同時に幾つもの魔法を駆使しなければならないのは大変だが、そんなことは言っていられない。
まさかすべてのオーク(幻)が魔法を使うとは思っていなかったらしく、討伐隊に混乱が生じる。
大量に降り注ぐ魔法に、討伐隊の中でもランクの低い冒険者は逃げ出し始めている。
リーダーも立て直しに苦労しているようだ。
もうひと押しだな。
今回の作戦での俺の役割は、一旦冒険者を退却させることにある。
俺は最後の脅しをするべく、魔法の詠唱に入った。
「雷よ、行く手を阻め! サンダーストラック!」
討伐隊の行く手を阻むように雷が降り注ぐ。
詠唱の通り、討伐隊にはまともに当たっていないが、迫力は満点である。
「くそっ! 一旦立て直すぞ。 引き上げだ!」
リーダーの号令とともに、最後まで踏ん張っていた討伐隊員も引き上げていった。
俺は慎重に辺りを確認、周りに誰もいないことを確認出来た所で大きく息を吐く。
ミウたちはうまくいっただろうか?
最後のひと仕事をする為、俺は森の奥へと進んでいった。
「じゃあ何か? さっきの人間どもは幻か?」
「ええ、魔法で作った幻です」
俺たちは、ゴランをはじめとするオークたちと話し合っている。
俺がミウとミサキに合流したときは、まだ2人が人間(幻)によって、オークを足止めしてくれていた。
もう役割を果たしたとばかりに人間(幻)が消えた時、オークたちは「呆気にとられる」という言葉が、まさにピッタリの状態だった。
ある意味興奮状態が冷めたオークたちに俺が話しかけ、現在に至る。
さあ、ここからが正念場だ。
俺にオークが説得できるのか? いや、しなければならない。
俺はオークたちに向かって話し始める。
「実際に来ていた討伐隊は引き上げました。だが間違いなくまた来るでしょう」
「「「また来ても返り討ちだ!」」」
オークたちは叫びだす。
それに対して俺は反論する。
「俺たちの幻術にも気づかず足止めを喰らうあなたたちが、返り討ちなど出来るはずないでしょう? 仮に1回目は成功したとしても、2回、3回と討伐隊はやって来ます。しかも回を増すごとに強力になってね」
オークたちが押し黙ったのを見て、俺は続ける。
「あなたたちはそれをずっと繰り返すつもりですか? そんなのはただの自殺志願者と一緒だ! あなたたちにも家族はいるでしょう? それを全て巻き添えにして死にたいんですか!」
その言葉を聞き、1人のオークが反論する。
「だが俺たちには行き場がないんだ! 前の場所を逃げてきて、ようやくこの場にたどり着いたのに…。もう戦うしかないんだよ!」
「「「そうだ! そうだ!」」」
そのオークのセリフに他のオークも同調する。
そこで俺は提案をする。
「場所があれば、戦わずに済むんですね?」
俺のセリフに、オークたちが、「そんな場所があるはずがない」という顔をしている。
ようやくゴランが重い口を開く。
「本当にそんな場所があるのか?」
「ええ、今から連れて行きますよ」
俺はゲートをその場で展開する。
オークたちは、別荘ならびに立派な畑を見て驚いている。
そりゃあそうだろう。俺でさえ、初めて見た時には驚いた。
「この土地の一部をあなたがたに開放します。集落よりは広いと思いますので、建物を建てるなり好きに使ってください、もちろん常識の範囲内でね」
オークたちから歓声が上がる。
さっそく住むには何が必要か、などを話し合っているみたいだ。
その様子を眺めていたゴランが俺に問いかける。
「本当に良いのか?」
俺には、人間がオークにこのような事をして後悔しないのか?という問いかけに思えた。
「ああ、大丈夫だ。問題ない」
俺が答えると、
「ふっ、元の通り丁寧語はやめたのだな。だがその方がいい。これから先もぜひそうしてくれ。儂は堅苦しいのは好かんのでな」
ゴランはそう言って笑った。
「お父さ〜ん!!」
別荘から出てきたグランが駆け寄ってきて、ゴランに抱きつく。
笑顔のグランを見て、作戦が成功して良かったと心から思った。
グランを腕に抱き上げ、ゴランが俺に言った。
「我ら一族、カナタ達に返せないほどの貸しができた。出来ることがあったら遠慮なく言ってくれ。微力ながら力になろう!」
こうして俺たちに、また新たな仲間が出来た。
ちなみに後日談ではあるが、2回目の討伐隊は王国の後押しもあり、1回目よりもかなり強力なメンバーが編成されたとのこと。
その中には、急遽呼ばれたダグラスさんがいたとか、いなかったとか。
……危なかった。
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