第24話 オークの森
俺たちは、現在馬車に揺られてペタの村へと向かっている。
今回ギルドで受けた依頼、「ペタの村への手紙の配達」を達成するためだ。
初めはダンジョンの依頼を受けようと思っていたのだが、あまり依頼がなかったこと、ダンジョンには依頼でなくてもギルドの入場証を貰えば入れること、ペタの村がダンジョンへ向かう道からそれほど離れてないこと、などを理由に、どうせならと依頼を受けることにした。
しばらくして、周りの景色も変わり、農地が見える。
結構広めの農地が柵に囲われ、その中では村人であろう人が農作業をしている。
その農地を回り込むように馬車を走らせ、村の入口へと向かう。
入り口が確認できた所で、俺はその正面に馬車を止める。(止めているのはユニ助だが……)
「こんにちは。冒険者…にしては若いな。この村に何の様だい?」
入口の前にいた村人が声をかけてくる。
「はい。実はギルドの依頼で手紙を届けにきました」
そう言い、俺はギルドの依頼書を見せた。
依頼書には問題なしということで、その村人はわざわざ手紙の宛名の人のところまで案内してくれた。
無事手紙を渡し、ダンジョンへと向かおうとした所で、別の村人に声をかけられる。
「お兄さん達、冒険者なんだってな。悪いが村長に会ってくれないか?」
どうもこの村の村長が、依頼したい事があるとのこと。
どんな依頼か分からないので、とりあえず会うだけなら、という約束で了承する。
村長の家の居間に通され、しばらく待っていると、多少身なりの良い中年男性が、先ほどの村人を従え現れた。
見た目は50代半ばの細身、眉間にしわが深く入っており、気難しい印象を受ける。おそらくこの人が村長なのだろう。
「ん!? 冒険者がいると聞いていたが女子供しかおらんぞ! まさか君らが冒険者とでもいうのか?」
いきなり失礼なおっさんだ。
俺は腹が立つのを抑えて、丁寧に返答する。
「ええ、一応冒険者をやっています。何でも依頼したいことがあるという事でしたので、とりあえず話だけ伺おうと思ってやってきました」
村長は値踏みするように俺たちを見た後、
「ふん! 近くにオークが出たらしいというので調査を頼もうかと思ったが…。まだ被害も無いし、ギルドにでも依頼を出しておくとしよう。君らはもう帰っていいぞ」
蠅でも追い払うかの様に、俺たちは居間から追い出された。
「カナタとミサキは強いのに! 何であんなこと言うの!」
珍しくミウがプリプリと怒っている。
俺はミウを抱き上げて、手櫛でとかすように頭を撫でる。
「まあ若いのは確かだから仕方がないよ。ああいう事もある」
俺は、ミウの怒りっぷりに逆に冷静になれた。
そういえばミサキは大人しかったな。イメージでは火炎魔法でもぶっ放しそうだが……。
俺の思っていることが伝わったのか、ミサキが返答する。
「……言われ慣れている。問題ない」
確かにミサキは、才能の割に若い。今までも同じような事があったのだろう。
もう少し俺が年を食っていれば良かったのだが……。
「……今のままで良い。年の差なしのベストカップル」
いや、まだカップルでは無いです。
ペタの村からダンジョンに向かう為に、森の中を通っていく。
森の中を進むといっても、轍のある道のようなものが通っているので、道なき道を突き進む訳ではない。
もちろん平地より魔物の出現率は高いので、注意しなければならないが……。
ミウは怒り疲れたのか、俺の腕の中で寝息を立てている。
ミサキは珍しく、御者台で森の景色を眺めているようだ。もちろん馬車の運転はしていない。
「ふぅ…」
ガタゴトと規則的に続く馬車の音色、森林浴に来たような自然の香りは、今まで忙しなく動いてきた俺にひと時の癒しを与えてくれた。
このまま俺も寝てしまおうか。ミサキとユニ助がいるからいいかな。
そう思っていた所に、お約束のようにミサキから声がかかる。
「……カナタ、何かいる」
俺はミウを膝の上から座席に降ろし、御者台へと向かう。
ミサキに言われた方角を見ると、確かに何やらいる。
俺は魔法を使い目を凝らす。
すると猪のような顔をした魔物が確認できた。
「……オーク」
ミサキにも確認できたようだ。
何の因果だろうか? 噂のオークと出会ってしまったようだ。
馬車を止め、俺たちは地面へと降り立つ。もちろんミウも起こした。
馬車をやられない様に、俺はユニ助の前方へと進む。
オークも続々と姿を現した。
見えているだけで8匹か…。
それぞれが剣、槍を持っていて、胴には革製の鎧だろうか? 簡素な鎧を身につけている。
オークたちは、俺たちと馬車を取り囲むように展開していく。
かなり統率が取れている。
「かかれっ!」
オークが叫ぶ。
こいつ、話せるのか!?
だが既に先頭の何匹かのオークが、俺たちに襲いかかろうとしている。
「……ファイアウォール」
俺たちの周りを炎の壁が取り囲む。その壁がオークたちの足止めとなる。
さすがミサキ、分かっている。
「待ってくれ! 話がしたい」
俺はオークたちに聞こえるように、大声で話しかける。
炎が小さくなり、再びオークたちが姿を現す。
「話がしたいとは変わった人間よ。儂の言葉が分かるのか?」
どうやら話は出来そうだ。
「俺たちはあなたたちを害しようとは思っていない。ここは退いてくれないか?」
それを聞いたオークが「ふんっ!」と鼻で笑う。
「いままで人間に散々煮え湯を飲まされてきた。儂らは特に何もしていないのに退治と称して襲いかかってくる。おかげで前の住処も追われた、信用できんな。どうせ見逃した処で後ろから襲いかかってくるか、大群でも引き連れてくるのだろう?」
確かに、オークと見れば、人間は討伐と称して殲滅に向かうだろう。
それが世の中では、当たり前になっているのだから。
それでも俺は……。
「信用して欲しい。どうすれば良い?」
すると周りのオークから、
「信用できるか!」
「仲間の敵を撃て!」
「族長、やっちまいましょう!」
などの怒号があたりを覆った。
その怒号を手で制し、オークのリーダーが言葉を発する。
「……ついてこい。お前ら、手は出すんじゃねえぞ!」
そう言うと、そのオークは森の中に入って行く。
周りのオークたちも、従うように森の中に入る。
「みんな、行こう! ただ十分警戒を怠るな。 ユニ助、しばらくそこで待機していてくれ。危険があったら馬車を置いて逃げていい」
「わかったよ!」
「……了解」
「うむ、了解した」
皆の返事を聞いた後、俺はミウを頭に乗せ、オークの待つ森の中へ入っていった。
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