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第12話 バレン村の危機

 今、俺たちは馬車に揺られてバレン村へと向かっている。

 まだ1ヶ月も経っていないはずなのだが、景色とかが妙に懐かしい。


「楽しみだね〜♪」


 ミウもアリシアさんに会うのが楽しみなようだ。

 そういえば、滞在中はよく懐いていたからなぁ。


「カナタよ。こちらの方角で合っているのか? 我は場所をしらんぞ」


 ユニ助が話しかけてくる。


「ああ、この方向で合っているよ。もう少しで着くからよろしくな」


「……まあ仕方がない。任せてもらおう」


 はじめの頃と比べて随分素直になったものだ。

 ミウとの仲は相変わらずだが……。

 だが、予想以上にユニ助は役に立っている。

 何といっても、御者が全く必要無いというところが良い。

 御者の必要性など、すっかり頭から抜け落ちていた俺にとってはラッキーだった。

 これも女神様がくれた、運の高ステータスのおかげだろう。

 (ロリ)女神様にまた感謝の祈りを捧げておこう。






 バレン村の門に着いたが、何やら様子がおかしい。


「誰だ! この村に何の用だ!」


 門番が少し喧嘩腰に話しかけてくる。


「私は冒険者のカナタといいます。ダグラスさんとアリシアさんに会いに来たのですが……」


 特に喧嘩をする気もないので、なるべく丁寧に対応する。


「ダグラスさんなら不在だが、アリシアさんならいる。確認してくるから少しそこで待っていろ」


 そう言うと門番は村の中に入っていった。

 門の外で待っている間に村の中を観察していたが、村人がせわしなく動いている。

 落ち着いたのどかな(・・・・)村だったはずだが……。


「あら、カナタくん。久しぶりね。元気そうで何よりだわ」


 しばらくすると、門番に連れられアリシアさんがやって来た。


「キュ〜♪(ひさしぶり〜♪)」


 ミウが飛びつく。

 アリシアさんはミウを難なく受け止め、胸に抱える。


「ごめんなさいね。村は今ちょっと大変なことになっているの。詳しいことは家で話すわ。馬車は家の横に止めてちょうだい」


 アリシアさんの口調からは、あまり大変そうには聞こえないのだが、他の村人の雰囲気を見るとかなり切羽詰っているのだろう。

 先ほどの門番の余裕のなさからもうかがえる。

 俺は馬車とともにアリシアさん宅へと向かった。




 家に着くと、アリシアさんがお茶を出してくれた。

 1口飲んで落ち着いたところで、アリシアさんが話しかけてくる。


「実は村の近くでゴブリンの巣が発見されたの。いつもならダグラスが、ふらっと出かけて殲滅してくるのだけれど、あいにく王都に用事で出かけてるのよ」


 ふらっとで出かけて殲滅か……。

 おそらくダグラスさんにとっては散歩程度なんだろうなぁ。

 冒険者の経験が増えれば増えるほど、あの人の化物っぷりが分かってくる。

 訓練で何度死にかけたことか。

 アリシアさんの回復魔法にかなりお世話になった事は記憶に新しい。


「村で有志を募って退治に行ったのだけれど、思ったよりも規模が大きいらしくて返り討ちにあってしまって……。死人こそいないものの、かなりの人が大怪我で戻ってきたの。現在私の魔法で治療中ではあるけれど、まだ回復までに時間がかかるわ。その時を狙って村を攻められたら……と皆が慌てているのよ」


 なるほど。それで皆、慌てていたわけか。


「私が出向いて行きたいところなのだけれど、思ったより怪我人が多い上に状態が酷くてね。村の人にも私が行くのを反対されていて、どうしようかと思っていた(・・・・・)ところなのよ」


 ん!? 思っていた(・・・・・)ところ? 過去形なんですけど……。


「――ということでカナタくん。ちゃちゃっと行って巣にダメージを与えてきてくれない? 殲滅しろとは言わないわ。怪我人が回復するまでの間に、ゴブリンが攻めてこられない位のダメージを与えてきてくれればいいわ♪ 報酬も出すわよ♪」


 アリシアさんがにこやかに無茶を言ってくる。

 村人とはいっても、集団で返り討ちに遭っているんですよ。

 俺ひとり(+ミウ)でどうにかなるものでもないでしょう。

 一応その無茶ぶりに反論を試みるが……。


「カナタくんなら大丈夫よ。魔法の腕は私が保証するわ。いざ接近されても剣術で遅れを取らないし。私たちが1週間とはいえ、みっちりと教えたんですもの。自身をもっていいわよ」


 アリシアさんの揺るぎない自信によって、反論は却下される。

 まあ行くことには問題はないんですがね。

 せめて村の人との共同作業かと思ったもので……。


「ごめんなさいね。今現在の村に戦力はほとんど残されてないの。本当は何人かつけてあげたかったのだけれど……」


 アリシアさんが申し訳なさそうに謝罪する。


「いえ、そういう事なら仕方がないですよ。どこまで出来るか分からないですけれど、出来る限りやってみます」


 もともとアリシアさんの頼みを断るという選択肢は無かったので、俺たちだけというのが多少不安だが、引き受けることにする。


「ありがとう、悪いけどよろしくね。ただし、引き際を間違えて無茶はしないようにね。ある程度ダメージを与えたら戻ってくるのよ」


「はい!わかりました」


 元よりそのつもりだ。

 ダグラスさんも2週間くらいで帰ってくるらしいので、そこまで持ちこたえればこちらの勝ちは揺るがない。

 あえて無茶をすることもないだろう。


 こうして俺たちはゴブリン退治に向かうこととなった。






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