プロローグ
「あれっ!?」
気がつくと、いつもの寝慣れた布団ではなく、草むらに横たわっている自分がいた。
ぼんやりとした頭に喝を入れ、けだるいながらも起き上がり辺りを見回す。
そこは見渡す限りの草原、辺りに人の姿はない。
「そうか、やっぱりあれは夢じゃなかったんだよな……」
その声は、伝達という本来の役目を果たすことなく消えていった……
目の前で小学生低学年くらいの女の子が土下座をしている。
なんだ、この状況は…。 っていうかここ何処?
「ここは神域でちゅ。今のあなたは魂だけの状態でこの空間に存在してまちゅ」
土下座から少し顔を上げた状態で、ショートボブの女の子が回答をしてくれた。
おっ! かわいい!! なかなかの美少女(幼女?)でした。
いやいや! 俺はロリコンではないぞ!!
「あの〜。とりあえず頭を上げてもらえます。 お互い喋りずらいでしょうし」
おそるおそる女の子が顔を上げる。
うん、やっぱりかわいい。
女の子の話では、どうも人間違いでうっかり俺を殺してしまったらしい。
本当は、天寿を全うした95歳のおじいさんの魂が、天国へと回収されるはずだった事。
一度回収してしまった魂は、もう元には戻せない事。
天上界のミスなので、魂を神域に回収してきた事。
要するに俺は死んでしまったということだ。
「わたしのミスでちゅ。 本当にもうしわけ無い事をしたでちゅ」
女神様(らしい)は、目をうるうるさせて今にも泣き出しそうだ。そんな目で見ないでくれ、良心が痛む。
「わかりました、その事はもういいですから。もともと天涯孤独ですし…。ただこれから俺はどうなるんですか?」
「また新たに生まれ変わることになるでちゅ。 ただ…」
「ただ…?」
「一度回収した魂は、次の転生では元の世界に戻せないでちゅ。なのでわたしの管理するもう一つの世界にいってもらうことになるでちゅ」
うだうだと言っても始まらないので、新たな転生先の世界について教えてもらうことにする。
そこは剣と魔法のファンタジーな世界だった。
しかも女神様のミスなので、赤ん坊からでなく15歳の体型のまま転生させてくれるらしい。う〜ん、お約束だね。
「では、転生をおこなうでちゅ。 心の準備はよいでちゅか」
「ええ。いつでもどうぞ!」
ちっちゃな女神様がなにやら呪文をとなえると、足元に魔法陣のようなものが展開された。
「では、気をつけていってくるでちゅ。 おまけもつけておいたので後で確認ちてくだちゃいね〜〜〜」
女神様の最後のセリフを聞き取る前に、俺の意識はブラックアウトした。