とりあえず、友達でお願いします
会長さんに呼ばれ、今は生徒会室にいる。
そして私は会長さんと姫宮さんに二度目の告白をされた。
私は今、顔が赤くなっていくのが分かる。私は恥ずかしくなり俯いた。
一度目は会長さんが逃げ出して何が何やら分からず、恥ずかしい気持ちとかは湧かなかったけれど、今は告白をされているんだなとわかっているから、嬉しいような気恥ずかしいような感じだ。
この感情はただ、初めての告白が嬉しいだけのようだから、恋人としては付き合えないと思った。
だから、意を決して顔を上げる。
顔を上げると二人とも顔が赤く染まり、とても不安な様子だ。
「ごめんなさい」
私は頭を下げながら言った。
「……そう、ですか」
「……すみません、急に呼び出したりして。……気持ち悪かったですよね」
姫宮さんと会長さんがとても辛そうに、涙目で笑いなが言うから、私はなぜか罪悪感が出てきたりして慌てながら言う。
「別に気持ち悪くないです。ただ、嬉しかったです。初めて告白されたし……。私は恋愛とかよくわからないですけど、もし、よかったら友達になってくれると嬉しいです」
……何を言ってるんだ自分!!?
日本語が少しおかしくないか!?
「……友達になってくれるんですか?」
「あ、はい。もし良かったらですけど」
「ぜひともわたしと友達になって下さい!」
「私もお願いします!!」
私は二人に迫られるように言われ、ビックリしながら頷く。
「あっ、ごめんなさい。急に近づいてしまって」
「私も、つい嬉しくなって……すまない」
「いえ、大丈夫です」
二人は近づきすぎたのに気がついたのか慌てて謝りながら離れていった。
二人とも軽くだけど、また頬を赤く染めて笑っているのを見て、私は可愛いなあと思う。
会長さんはかっこいい感じの人だと思ってたけど、本当は凄く可愛い人なんだとわかった。
私が二人に見惚れていると姫宮さんが話しかけてきた。
「わたしは姫宮彩、一年三組です。よろしくお願いします」
「私は二年二組、神宮寺薫だ。これからは友人として宜しくお願いする」
「わ、私は一年一組、児山いつきです。こちらこそよろしくお願いします」
私の自己紹介も終わると今度は会長さんが紙を取り出して、その紙に何かを書き出し、それを私に渡してくれた。
「私の携帯のアドレスと番号だ。好きなときに連絡してくれると嬉しい」
「ありがとうございます」
「わたしのも渡しますね」
姫宮さんにも渡されて、私はどうも、と言いながら貰う。
私の携帯は寮の方に置いてきているから手元にはなく、しかも自分の携帯の番号とかを覚えてないので紙に書いて渡すことが出来ない。
なので仕方なく私は帰ったら必ず連絡すると伝える。
「今日はありがとうございます、いつきさん。こんな所に来てくれて」
「いえ、会長さんと姫宮さんと友達になれて嬉しかったですし……」
私がそう言うと二人とも機嫌がなぜか悪くなっていて、私は何か怒らせるような事を言ったのかな?と思っていると姫宮さんがむすっとした表情で言う。
「名前で呼んで下さい。友達なんですから」
「それに敬語とかもやめて欲しい」
二人の言うことに、確かに友達になったんだから、そうだよね。と思ったので改めて私は笑いながら言う。
「うん、わかった。これからはよろしくね。薫さん、彩さん」
「できれば、さん付けもやめて欲しいんですけど……」
「……えっと、それは後からおいおい外すね」
彩さんが少し不機嫌に言うから私は苦笑し、そう言った。
いきなり呼び捨てはさすがにレベルが高いです。
「では、もう帰るか。寮まで送ろう」
「送ってもらわなくても大丈夫だよ。学校から近いし」
薫さんの申し出を断ると、薫さんは落ち込んでしまって私は少し慌てる。
すると彩さんが私の右腕を取り、絡ませて来て楽しそうに言ってくる。
「じゃあ、わたしと一緒に途中まで帰りましょう!」
「あ、うん。いいよ」
私がそう言うと薫さんが慌てて少し不安そうに言う。
「私も一緒に帰ってもいいか?」
私はにこっと笑いながらその事に、いいよ。と伝えると、薫さんが頬を微かに赤く染め、ほっとしたように笑うから、またも私はその表情に見惚れた。
「早く帰りましょう!」
「……うん、そうだね」
彩さんの声で、はっとして、その言葉に頷く。
頷いて、生徒会室から出るのはいいけど、彩さんは私の腕を絡ませたまま歩き出す。
それにしても、同年代で腕を絡まされるのは高校に入ってから、久しぶりだ。
中学の時はスキンシップが大好きな友達がいたからよくされていたけど。
それとわかった事がある。
彩さんは着痩せする方なんだね。
結構、胸が大きいのだ。
兄さんのお嫁さんもお酒を飲むとスキンシップが激しくなる為、よく抱き締めてくるので胸の大きさがわかる。彩さんは義姉さんよりも大きい。
私は同い年なのに差をつけられた事に少しショックを受けた。
チラリと隣で歩いている薫さんの胸を見ると、不謹慎ながらも喜ぶ。
私よりも小さいかも。
そんな事を考えながらまた薫さんを見てみる。
薫さんの背は私の頭一つ分高く、スレンダーだ。
なので、たとえ胸が小さくても十分魅力的な身体だ。
今度は彩さんの方を見てみる。
私の目線よりも下だから背は私よりも少し低いくらいだろう。
その上、着痩せしているから脱いだら凄そうだよね。薫さんも脱いだら凄そうだけど。
二人とも本当に可愛くて美人さんだよね。
そうそう、胸って言ったら副会長さんの胸がすごいよね。
制服の上からでも大きいのがわかるんだもん。
そんな変な事を考えていたら、いつの間にか校内を出ていて、薫さんが私に話しかけてきた。
「……あの!手を繋いでも良いですか?」
薫さんが恥ずかしそうに俯きながら言ってきて、私は左手を差し出しながら、いいよ。と言うと薫さんは、ぱあっというように嬉しそうな顔で私の左手を握った。
薫さんの握る力が少し強くて、左手が痛かったが、それは最初の方だけだった。
私は、これが俗に言う、両手に花かと思った。
※※※
両手に花、状態で寮に着き、今更ながら疑問に思った事を聞く。
「そういえば二人の家はどこなの?」
「わたし達はあっちの方だよ」
そう言って彩さんが指を指した方向は私達が来た道。
「って、逆方向じゃん!?」
「いつきは気にしなくてもいいよ」
「そうそう、わたし達が一緒に帰りたかっただけですしね!」
二人ともそう言ってくれたけど、なんか納得がいかなかった。しかもあんまり喋ってなかったし。
まぁ、今度は二人の家方面で一緒に帰ろうと思った。
「それじゃあ、また明日」
「うん。また明日」
二人に別れの挨拶をして、二人が離れていくのを見て、少し経ってから寮の中に入って、自分の部屋の中に入る。
着替えてからベッドに寝転び、思い返す。
なんか昨日から濃い日々だったなぁー。
しかも帰り道、すっごい視線が突き刺さってたよ。
二人とも気づいてたかな?
あー、なんかいろいろと疲れたけど、友達が増えたのは嬉しいな。
そうだ。二人にメールを送らなきゃと思い、自分の机の引き出しに入ってる携帯を取り出す。
本当は寮で携帯を持っているのは禁止なんだけど、どうせ禁止しても持ってくるだろうから寮母さんは、最低限のマナーを守れば持っているのを許可してくれている。
薫さんと彩さんへのメールの内容は無難に感謝とこれからもよろしくみたいな事を書いて送った。
なんか、明日もいろいろと聞かれそうだなと思いながら、睡魔が襲ってくるのを感じた。
寝ても良いよね。昨日はあんまし寝れなかったんだし。
部活から帰って来る葵に夕飯時になったら起こして貰えばいいし……。