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番外編・親友とその妹

※男女のカップルが出ているので、百合だけを見たい人はご注意下さい。(正確に言えば真依とその彼氏の話し)

いつき先輩の家を出て、急いで自分の家に戻り、部屋のベッドへダイブする。


ベッドの上で上着を脱ぎ捨て、抱き枕をぎゅーっと抱きしめ、唸りながら、ごろごろと転がる。



あぁー、思い切ってやってしまった! ディープキスとか絶対引かれたよっ! 何やってんのよ、わたしはっ!!?


お姉ちゃんからいつき先輩がこっちに帰って来ている事を教えて貰い、簡単なケーキを作って先輩の家に持って行こうとしたら、衝撃的な事を言っていたから、焦ってあんな事をしちゃったんだ!!



まさか、わたしと同じ様にいつき先輩を好きになる人がいるだなんてっ! いつき先輩は人見知りするから慣れるのに時間がかかるだろうから一年の間は大丈夫、なんて思うんじゃなかった!


明日、謝った方が良いかな? でも、会ってくれるかな。いつき先輩……



「美由ー! わたしのケーキはどこー?」



わたしはもんもんと悩み、ベッドの上で抱き枕を抱き締めながら、ごろごろと左右に転がっていると、ノックもしないで姉がいきなり部屋を開けて中に入って来た。



「…………何してるのさ、美由」


「お姉ちゃん、ノックはしてって前から言ってるよね」



呆れた様な視線をわたしに向けるお姉ちゃんに睨みながら言うけれど、悪びれた様子もなく、最初に聞いてきた事をもう一度わたしに聞いてくる。



「ごめんごめん。でさ、さっきケーキ作ってたけど、うちのケーキは?」

「……はあ。冷蔵庫に入ってなかった? なかったらお母さんかお父さんが食べたんじゃない?」


「冷蔵庫になかったから食べられたかあー」



お姉ちゃんはがっくりと項垂れて部屋を出て行こうとしたけど、わたしはお姉ちゃんを引き止め、少しだけ相談に乗って貰う事にした。



「お姉ちゃん、どうしよう。いつき先輩に嫌われたかも」


「へ? いつきに? また何でさ。あのいつきに嫌われる様な事って」


「うっ。……無理矢理キスをしました。……しかも深いやつ」



わたしは身体を起こし、抱き枕を抱き締めながら、項垂れて言う。


その言葉にお姉ちゃんは驚いた表情をした後に、呆れた表情になった。



「何ともまあ、積極的な事を……。でも、いつきはそんな事で美由を嫌いにならないと思うけど」


「そうかな? 本当に嫌われてないよね?」


「そうそう。嫌われてないよ。ところで、何でキスをしたのさ?」


「……キスをしたら、妹に見られないようになるかなって思ったんだけど、キスは初めてじゃないって聞いたら、思わず入れちゃいました……」



いつき先輩の親友であるお姉ちゃんの言う事をわたしは信じ、少しだけほっとして、その時の事を思い出す。……そういえばあの時、いつき先輩の唾を飲んじゃった。


そう気がついたら身体が熱くなっていくのを感じる。


いつき先輩がわたしの中に入っているんだ……。いつき先輩の体液が……わたしの中に……。



「……美由!」



お姉ちゃんのわたしを呼ぶ声に驚いて、我に返ると、お姉ちゃんは顔を真っ赤にしながらわたしを見ている。



「そういうのはうちの居ない所でやってっ!」



いつの間にか、わたしの手は胸を触っていて、もう片方の手は太股の付け根のところにあった。



「とりあえず明日にでもいつきに謝っといたらっ」



お姉ちゃんは早口で言うと、逃げる様にわたしの部屋を出て行く。


わたしはお姉ちゃんが出て行ったのを見届けた後、身体の熱さをどうにかしようと手を動かし始めた。……いつき先輩……。



◇◇◇

わたしは妹の部屋を飛び出して一階のリビングに向かう。


別に自分の部屋に戻っても良かったが、隣の部屋の美由の声が漏れて聞こえて来るので、一階に下りてきた。


わたしは溜め息を吐き、美由のあの変態行動はどうにかならないのかと考えるが、無理だろう。


しかし、あの抱き枕には毎回驚く。何しろ、美由の作った抱き枕で、いつきの身長と同じ大きさだ。いつきの写真でカバーを作り、それをその抱き枕に被せ、いつき抱き枕を作ったのだから。


さらに美由はいつきをデフォルメしたらこんな風になるだろう、というような人形やストラップまで作ったのだから凄いを通り越して、呆れる。

でも、まだいつきの写真を壁に貼り付ける様な事をしないので、少しわたしは安心している。……いつきだけのアルバムが五十を越えたらしいけど。



リビングに着き、冷蔵庫から飲み物を取り出してソファーに座り、まだ美由が可愛かった頃を思い出す。



いつきと出会う前と出会った最初の時はまだ、わたしの後ろに引っ付いていた筈だよね。


美由は恥ずかしがり屋だから外で遊ばずに家の中で一人で何かしてたし、人見知りも激しかったから外に行く時はわたしも一緒にいたし。


いつきも初めて会った時は無愛想で、取っ付きにくそうだったけど、暫く一緒に遊んでいたら、なれたのか笑うようになってたし。

だけど、いつ頃だったけ? いつきと美由が一緒に遊び始めたのは。



あー、思い出してきた。確か美由が珍しく、わたしと外で遊びたいって言ったからだ。


その時はいつきと遊ぶ約束をしていて、しょうがなく美由も連れて行ったんだっけ。


そしたらいつきは美由を自分の妹の様に接し始めて、美由もいつきに慣れていき、いつきにも懐くようになって、そしていつ頃かは知らないけど、なぜか美由はいつきを恋愛対象にしていて、わたしは美由の反応が面白かったから、今思えば少しだけ過剰気味なスキンシップをいつきにしていたんだよねぇ。


それにしても、いつきはよく気づかなかったよね。美由の気持ち。傍から見たら美由がいつきを好きだ、何てバレバレなのにね。


あー、でも、いつきは美由だけじゃなくて他の子にもモテモテだったね。男女問わず。不思議な事に……。


遺伝かな? かしわ兄さんもモテモテだったし。



そういえば一回、美由がいる時のノリで、いつきにスキンシップをしたら、一部の視線が怖くて、それ以来はいつきと美由だけがいる時にしかやらなくなったんだよね。……うん。あの時は本当に怖かったわ。



まあ、いつきは優しいし、頼もしい時も時々あったから分からなくもないけどね。



わたしは物思いに耽っていたら、携帯が鳴る。着信を見てみると、約束を破ったあいつの名前だった。


出るか出ないか迷ったけど、仕方なく出る事にする。



『もしもし? 真依?』


「……この電話番号は――」


『いや、真依でしょ!?』



「現在使われておりません」と続く筈だったわたしの言葉を遮る様に、彼は慌てて言ってきて、仕方なくぶっきらぼうに言う。



「何か用?」


『……とりあえず、真依の家の前にいるから出て来てくれないか』


「は?」



その言葉に驚き、部屋着のままだったけど、急いで玄関を開けたら、そこには携帯を耳に当てている彼がいて、携帯を持っていない方の腕を軽く上げる。



「よっ」


「どうしたのさ。こんな時間に」


「今日中に渡したい物があってさ」



彼は携帯をしまい、リュックの中から綺麗に包装された長方形の箱を取り出して、わたしに渡してきた。



「ほれ、メリークリスマス。いやー、悪い。まさか急に三人も休むとは思わなくてさ。約束守れなくてごめん。でも、今日中に渡したかったんだよな、それ」



本当に申し訳なさそうに彼は言い、最後の方はどこか照れたように話す。


その彼に素っ気なく「開けても良い?」と聞けば、苦笑しながら頷いたので、丁寧に開ける。


中身は可愛らしい、星形のネックレスで、自然と頬が緩んだ。



「ありがとう」


「……気に入って貰えて何より」


「ちょっと待ってて」



わたしは彼に少しだけ待って貰い、自分の部屋から今日の為に頑張った物を急いで持ってくる。



「これ、あんたに。……始めて妹に教わりながら作ったから、少し不恰好だけど」



彼に渡したのは、器用な美由に教わりながら作ったマフラーだった。


彼は早速マフラーを付けて、嬉しそうにわたしにお礼を言い、彼の笑顔を見て、わたしは顔を逸らしながら「どういたしまして」とぶっきらぼうに言う事しか出来なかった。



「もう遅いから、またな」



にこにこと笑いながら彼はそう言い、帰ろうとしたので、わたしは慌てて引き止めて、マフラーを掴み、顔を近づける。そして、キスをした。



「じゃあね、お休み!」



それだけを言うと、わたしは家の中に入る。


最後に見たあいつの顔は真っ赤に染まっていて、びっくりしたような表情だった。



自分の部屋に着くと、ベッドへと飛び込んで、枕に顔を埋め込む。今の顔はさっきのあいつよりも赤いだろう。



でも良いよね、付き合っているんだし。今日はクリスマスなんだから。


それに妹の美由が先にキスをして、姉のわたしがまだ何てかっこ悪いしさ。……でも、それ以上は早いと思うので無理です。わたしたちは清いお付き合いをしているので……。





時期がもう終わっていますがクリスマスの話しでした。


それに久々の更新が百合じゃないしね。何でこうなった。



ついでに言うと、真依の一人称は普段、「わたし」だけど、慌てたり、ふとした時に「うち」になる裏設定。



おかしい部分がありましたら、教えて下さい。



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