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友達とのお出掛けで気づきました

日曜日の午前中の駅前は人通りが多いと思いながら私は人を待つ。


何で約束の一時間半前に待ち合わせの場所にいるんだろうと思いながら昨日の夜の事を思い出す。




※※※

「えぇー!デートなのにおめかししないの!?」



土曜日の夕飯時に明日のデートは何を着ていくのか聞いてきた響さんに言われて私は普段着だと答えたら、信じられないっ!と言った感じに返された。


私は戸惑いながら響さんに言う。



「えっ、デートって訳じゃないし……。ただ出掛けようって言われただけだし……」


「でも、その子にこの前告白されたんでしょっ!」


響さんに詰め寄られ、私はたじろぎながらも頷く。



「あおっちーはきっと勇気を出して誘ったんだよ!それにあおっちーはデートのつもりなのに、それはないよー。……ね、せっちゃん」


「そうね。葵ちゃんはお洒落してくるだろうから、いつきちゃんもお洒落をしないといけないわね」



……そこまで言われると私は何も言い返せなくて、でも私はお洒落とかよく分からないし、服もあまり持っていない事を話す。



「それなら大丈夫!服なら持ってきたから!!」



響さんはそう言ってどこから取り出してきたのか服を私に見せてきた。私は響さんの持ってきた服を見て、驚きすぎて固まる。


何故なら……



「何で執事服なのさ!?」


「あら?お気に召さなかった?」


「お気に召さないとかじゃなくて、普通はデートにそんな服装はしないって事は私でも分かるよ!!」


「じゃあ、これなんかどう?」



そう言って響さんが今度取り出したのは、白くて可愛らしいエプロンがついたミニスカでふりふりの……



「何で今度はメイド服なのさ!?響さんは私に恨みでもあるのですか?!」


「あるけど?」


「えっ、あるの?何やったの私?」



響さんの思わぬ発言に私は先程までの勢いをなくしておろおろと響さんに聞く。だけど響さんは俯いて何も言わない。


私は何も言わない響さんを見て、更に困惑する。


そして私は響さんが何故私を恨んでいるのか理由も分からないのに、響さんに謝る。けれど、響さんは何も言わない。



「響。いつきちゃんで遊ぶのはやめなさい」



義姉さんは私が泣きそうになっているのを見て、響さんを叱るように、でも少し呆れた感じで言う。


言われた響さんは少し震えていて、私はどうしたんだろう、と思うと同時に響さんに抱きつかれた。



「うっふふふ。嘘だよ~。いっつーを恨む何てそんな事ないに決まってるじゃん!かわいいなあ!!」



私は響さんに抱き締められながらその言葉にほっとして、だけど丁度響さんの胸に顔が挟まる形だったから息苦しくなる。


私は何とか離れようとするけど無理で、義姉さんにはがして貰い、私は初めて胸が物理的にも凶器になる事を知った。



「響さん、洒落にならないような冗談はやめて下さいよ。ほんと」


「えーー。でも、あたしがいっつーの事が大好きじゃなきゃ、こんな冗談言えないよー」


「……はぁ。ならいいですけど」



大好きと言われて嬉しかったけど、これからも弄られると思うと何か複雑な気持ちになる。まぁこの酔っ払いには今更だけど……。



「それよりも私はそれらの服は着て行きませんから」



とりあえず執事服とメイド服を着ない事をはっきりと言うと、響さんはふて腐れて言う。



「むー。仕方ないなあ。今度でもいいから着てみてよ」


「嫌です。……義姉さん、やっぱり普段着で行きます」



私はきっぱりと響さんに言い、義姉さんに明日の服の事を言うと、義姉さんは小さく溜め息を吐いてから微笑んで言う。



「まぁ、服がないんじゃ仕方がないけど、今度一緒に服を買いに行きましょうか」


「はい!」


「その時はあたしも呼んでー」


「酔っ払いは呼びません」



えぇーー!と響さんは不満げに言い、私はそれを無視してお風呂に入りに行こうとするが、その時に義姉さんが声を掛けてきた。



「明日は早めに待ち合わせ場所に行かないとね」


「……そうですね。でも、何時くらいがいいんだろ?」


「とある情報によると、先週のかおちゃんは一時間前に来ていたっぽいよ」


「えっ、そんな早くから来てたの!?」


「らしいね。だからいっつーは一時間半前から待たなくちゃあ」



私はまぁ、いいかと思いながら頷いてから兄さんと入れ代わりにお風呂へ入って行った。




※※※

回想も終わり、時計を見るとまだ五分も経ってなかった。


まぁ回想だからなあ、と思いながら鞄から本を取り出して読む事にする。



暫く本を読んでいると声を掛けられて、顔を上げると葵がいた。


私は本を終い、すぐ近くにある時計を見ると、まだ三十分くらいしか経っていなくて驚く。



「葵、早いね。まだ約束の一時間前だよ?」


「いや、それはあたしの科白だよ。まさかいつきがもういるとは思わなかったよ」



私は確かに、と言いながら頷いて、そういえばまだ挨拶してないと気がつく。



「おはよう、葵」


「えっ、あ、うん。おはよう、いつき」


何故だか葵は顔をそらしながら言う。


私はその事に少し疑問に思ったけど、とりあえず立ち上がって、どうしようかと葵に聞く。


葵から誘われた時はどこに行くかは聞かされていなかったから。



「水族館に行こうと思って……」


「へぇー、いいね。水族館か、久しぶりだなぁ」



何時以来かな?と考えていると、葵から少し甘い匂いがするのに気がつき、葵に顔を近づけて確かめる。



「……香水?」


「うん、貰い物だけど」



私はふ~ん、と言いながら葵の顔を見て、薄く化粧をしているのにも気がついた。


服装はいつも通りだけど、ちゃんとお洒落はしているんだ、と私は感心する。



「……いつき、近い」



葵は顔を赤くしながら言うので、熱でもあるのかな?と思いながら私のおでこと葵のおでこを合わせる。


少し熱いかな?くらいにしか思わなかったけど、熱があるのかは分からなかった。


やっぱりこれだけで体温が分かるお母さんは凄い、と思っていると、突然葵が勢いよく離れて驚く。



「だから、いつき。顔が近いって」


「いや、熱があるか確かめていたから当たり前だと思うけど……」



私が言うと、葵がまだ顔を赤くしながら呆れたように、そして何か諦めたように言う。



「いつき。そりゃあ、いきなり好きな人の顔が近くにあれば顔も赤くなるよ」



私は葵の言葉で、確かに、と思いながら頷き、少し顔が熱くなるのを感じた。


その様子を見た葵は少し笑い、私の手を引いて「早く水族館に行くよ」と言いながら歩いて行く。


私はそれに少し慌てながらも着いて行き、隣に並んで私は葵が化粧している事を言うと、葵は少し驚く。



「まさか、いつきが気がつくとは思わなかった」


「……失礼な。それぐらいは私でも分かるよ」



私は心外だ、と思いながら言うと、葵は「だっていつきだもん」と言ってきて、葵は溜め息を吐いた。



「化粧までしているのに、何で服はいつものなの?そのスカートはこの前も着ていたよね?」


「……服がない」



私はあぁ、と思いながら頷く。


確か葵は部活の剣道ばっかりで、服とかは私と一緒であまりお洒落とかに気を使ってなかったなと思い出す。その上寮暮らしだからまだ荷物は少ないだろうしね。


あれ?でも化粧と香水はどうしたんだろうと葵に聞けば、化粧と香水は自分の母親に入学祝いで貰い、化粧の仕方が分からなかったけど、一ノ瀬さんに化粧をして貰ったらしい。


私はなるほど、と思い、ふと思いつく。



「今度、義姉さんと一緒に買い物に出掛けるけど、一緒に行く?」


「えっ、いいの?」


「別にいいと思うよ。義姉さんも賑やかなのは好きだし。あっ、でも義姉さんの友達も一緒かも知れないけど」


「それでもいいよ、あたしも行く!」


「うん、わかった。伝えとくね」



葵はとても嬉しそうで誘って良かったと思った。




◇◇◇

やった!いつきから誘われるのは初めてであたしは少し浮かれる。


大体いつもあたしからいつきに遊びを誘う。だからあたしはいつきのお姉さんと一緒でもいいし、挨拶も出来るから一石二鳥だ!と思ったけど、よく聞けば本当のお姉さんじゃなくて、お兄さんのお嫁さんらしい。


まぁ、それでもいいけどね。


とりあえずは今のいつきとのデートを楽しもう。

水族館の入館料はあたしが誘ったからあたし持ちだけど、いつきはそれに渋っていた。だけどあたしは断り、お昼はいつきがあたしの分を払う事でいつきは落ち着いた。




水族館の中を少し見て、丁度お昼くらいになったのでレストランに入る。

休日だからか人が多かったけど、何とか直ぐ席に座れた。



「いつきは何食べる?」


「んー、オムライスかな。葵は?」


「あたしは明太子のパスタ。それじゃあ頼むね」



いつきが頷いたのを確認してから店員を呼ぶボタンを押すと店員が来たので頼み、料理が来るまでの暫くの間はついさっきまで見ていた魚や蟹の事とかを話す。

いつきと話をしていて思ったけどお腹が空いていたせいか、焼き魚か刺し身か、蟹はどうすれば上手く身が取れるのか、などほとんど食べ物の話しかしていなかった。……いつきもあたしも似た者同士で「花より団子」らしい。



「それ、美味しい?」


「普通に美味しいよ。……食べてみる?」



いつきはそう言って、何も疑問を持たずにスプーンでオムライスを一口程取り、あたしの口元に持ってくる。


いや、いつきさん。確かに学校ではいつもの様にやっていますけどね。流石に事情も知る人もいない、大勢の人がいる公共の場では恥ずかしいんですけど……。

とあたしは思いながら少し固まっていると、いつきは首を傾げて「どうかした?」と聞く。


あたしは少し顔が火照っているなと思いながらいつきのオムライスを食べる。



「普通に美味しいでしょ?」



あたしは味がよく分からなかったけれど頷き、いつきは「そっちもちょうだい」と言うので、あたしはパスタをフォークに絡めていつきの口に運んでいく。


あたしは少し周りを気にしたけど、他の人はこっちにはあまり興味がないみたいで、ほっとする。



ご飯も食べ終わり、会計も済まして店を出てからパンフレットを開き、どこに行こうかと思いながらいつきを見ると、いつきも一緒にパンフレットを除き込んでいるから顔が近い。


いつきの匂いが直ぐ傍からしてきて、また心臓の脈が早くなり、顔が赤くなっていくのが分かる。



いつきは何でも無いように「どうする?」とあたしに聞く。


それを見て、あたしは悔しく思ったからいつきと手を繋ぐ。俗に言う恋人繋ぎで……。


そしていつきを引っ張ってペンギンがいる場所へと向かうと、いつきは慌ててあたしの後ろを着いてくるのが分かる。



いつきは絶対にあたしの事は親友としてしか見ていないのは分かる。だけど、あたしはそれ以上の関係になりたいから……。


このデートでは攻めて攻めて攻めまくって、いつきに何とかあたしを意識して貰うようにするんだ!!




◇◇◇

「どうだった?」



夕方になり、寮へと帰る途中に葵が聞く。



「久しぶりに水族館に来たけど、面白かったよ。……今度は皆で行ってみようか?」



私がそう言うと、葵は少し寂しそうに笑い頷く。


私は何で寂しそうなんだろうと思いながら葵と手を繋いだまま歩いて行くと、葵はぎゅっと少し強めに握ってきたので、私もつられて軽く握りしめる。すると先程よりも葵は強く握りしめ、私も負けじと握りしめる。


そんな風に握りしめ合いをして痛くなった手を離し、葵と顔を見合わせて笑い出す。



「流石剣道部。力強いね」


「いやいやなんの。帰宅部でもなかなかの力でしたよ」


「そうでしたか。そう言っていただけるとありがたい。……ところで今日のご飯は何か聞いてる?」


「んーと、たしか酢豚だって」


「へぇ。パイナップル入ってないといいなあ」


「おや、いつきは酢豚にパイナップル入れちゃダメ派なんだ。美味しいのに」


「どうしても無理なんだよね。もしあったら葵、食べてよ」


「ふむ。まぁ、貸し一つということで」


「うん。ありがとう」



まぁ、一つならいいか。そう思いながらまた葵と手を繋ぎ、寮へと向かう。




※※※

結局、夕飯の酢豚にパイナップルが入っていて、パイナップルを葵のお皿に入れていくと「じゃあ、五つ貸しね」と言われて私は驚き、話を聞くとパイナップル一個につき貸しも一つ何だとか……。


……うん、別に大丈夫だよね?葵は無理難題とか言わないだろうし……。



夕飯も食べ終わり、お風呂から上がって、葵にお風呂が空いた事を伝えると、葵が私と入れ違いにお風呂に入ろうとして、私は思い出した事があり、葵を引き止める。


私は鞄から小さい袋を取り出して葵に渡す。



「はい、これプレゼント。開けて見てよ」



水族館の売店で買った物で、入館料を払って貰ったお礼や今までのお礼も込めて何かプレゼントしたいと思ったんだ。



葵は着替えを置くと袋を開けて、中にあるものを取り出してまじまじとそれを見つめる。


私は葵が何も反応しないのに不安になり、聞かれてもいないのに話し出す。



「あのね、何かお礼をしたくてね。しかも葵の誕生日に祝ってあげられなかったし。えっと安物で、その上どこにでもあるような物で申し訳ないんだけど……」


「……ううん、ありがとう。…………かなわないなあ、いつきには」



葵がお礼を言ってくれて、そして呟くようによく分からない事を言うので、私は俯いていた顔を上げると、葵が泣いていて、私はぎょっとする。



「ごめん、違うんだ。プレゼント、うれしいんだけど……ごめん。直ぐに止めるから心配しないで」



そう言いながら葵は目を手でゴシゴシと涙を拭うけれど、涙は止まらず流れ落ちていく。



「どうしたの?そうやったら目に悪いよ」



私は葵が拭っている手を掴み、葵の手を掴んでいる逆の手で葵の頭を撫でる。すると葵は俯き、話し出す。



「いつき、ごめん。何で、あたしはいつきにこんな、感情持ったんだろう。そのまま友達や親友だったなら、こんなに悩んだり、辛い思いとかしなくてすんだのに……」


「……うん」



私は出来るだけ優しい声で先を促すように頷くと、葵は私が渡したプレゼントを両手で胸に抱き締めるようにぎゅっと持って言う。


「だって、最初はあたしだって会長や彩に負けないようにって思ってたけど、全然いつきはそういう風に意識してくれなくて、あたしだけドキドキしてるだけで、諦めようと思ったけど、全然ダメで……」



私は葵の言葉を聞いて、これ程までに葵は追い詰められていたのか、と愕然として、その間にも葵は今まで思っていた事を告白していく。



「あたしはこんな感情、初めてで、幼稚園の時の初恋とは全然違うし、まさかこんなに幸せやら辛いやら、こうもぐしゃぐしゃしたものだとは思わなかったんだ」



葵はそう言い終わると、顔を上げて泣きながら私に笑い掛けてきた。


私はその葵の顔を見て、思わず葵を抱き締める。……だって辛そうな笑顔だったから。


私に抱き締められた葵は少しだけびくりとしただけで抵抗はしなかったから、そのまま私は葵に話しかける。



「ごめんなさい、葵。私は逃げないとか言っていて、本当は逃げてたんだ。だって葵は私に告白してきたのに私はずっと親友だと思い込んでいたんだ。それに今、気がついた。ほんとごめん」



そう言いながら私も泣きそうになるけど、それを我慢しながら話し続ける。



「それにね、葵。葵だけじゃないよ、ドキドキしていたの」


「ふぇ?」



葵が少し間が抜けるような声を出すから私はくすりと笑った。

それに葵は恥ずかしく思ったのか、私の背中を軽く叩き、そのまま腕を回して私に抱きつく。



「タイツ越しだけど葵の足は綺麗で見ていてドキドキするし、前々から思っていたけど、お尻もいい形してるよね」



私はそう言って、軽く葵のお尻を撫でると、葵はバッと凄い早さで離れていき、両手でお尻を庇う様に押さえると、今日で一番の顔の赤さでわなわなと身体が震えている。顔だけではなく、他も赤いけど。



「いつき!それはセクハラだし、チカンだよ!?」


「……ふっ、ふふ、あはははは」



私は葵の初めて見る姿に思わず笑いだして、葵は目を点としていた。



「な、何さ!いつき!!?」



葵は涙目で睨むが迫力はなくて、怖くない。


私は笑うのを我慢しながら言う。


「いやいや、葵が可愛くてさ」

「んなっ!?」



全身を赤くしながら葵は固まるが、私は何とか笑いを堪えながらも話し出す。



「それに葵といると楽しいし。でもさ、多分私は無意識に恋とかそう言うのから逃げるんだと思う。だからさ、葵が私に意識しなくちゃいけないように頑張ってよ。私も逃げないように頑張ってみるから」


「……何さ、そのムチャクチャ」



葵の呆れたような返しに私は最もだと思いながら呻く。


確かに自分も言っていて無茶苦茶だと思うし、他人任せにもしていると思うけど……。



「……はぁ。……とりあえず、あたしはいつきを諦めるのは無理だとわかったし、いつきは物凄く恋愛に臆病だとはわかった」


「すみません」



葵は盛大な溜め息を吐くと、私に近づきながら話しかけてきて、私は何か申し訳なくて謝る。


まさか無意識に恋愛を避けていたとは私もびっくりだ。

原因は何となくあの時のせいかな?とは思うんだけど、どうなんだろ?兄さんに相談しようかな?いや、でもここのところ兄さんにばっかり相談しているから、ここは自分で何とかしないと……でも自分だけで出来るかな?いや、弱気になったらダメだ……



「き……いつき……いつき!!」


「うぇい!?」



思考の渦の中にいたら葵が呼んでいる事に気がつかなくて、葵が目の前で私を呼んで漸く私は我に返って変な返事をする。



「な、なんでしょうか」


「いつきは、さ」



葵は文字通り目の前にいて、後数センチで顔と顔がくっつきそうな感じで私はどぎまぎしたけど、葵は何だか決心したように頷いたかと思えば目を閉じて、近づいて、私の唇に何か当たった。


その何かはまぁ、少し考えれば簡単に分かる。葵の唇だよね。しかも近づき過ぎて葵の顔が見えないし。


私はそんな呑気な事を考えながらいると葵が離れていき、頬を染めながら聞いてくる。



「いつきは、キスは初めて?」



そう言う葵は目も潤み、とても色っぽくて、こういうのが妖艶って言うのかな?と何故だか冷静に考えていて、絶対に自分の顔が沸騰しているなぁ、とも思いながら葵の言葉に応える。



「ええっと。……も、申し訳ないですが、四、五回目。くらいですかね?」



葵は私が言った言葉にちょっと驚いた様子になった後、悲しそうに俯いて「そうなんだ」と呟く。


それを見て私は慌てて言い訳を言う様に話し出す。



「いや、でも小さい頃の事だし、他は酔っ払い達にやられただけだよ!」



葵はまだ俯いていて、何故だか僅かに震えていて、よく聞けば笑っている。



「ぷっ、くくくっ!……あたし、初めてそんな風な、いつきを見たよ」


葵は笑いを堪えながら言い、私はからかわれたんだと分かって少しむっとした後、何だか疲れて溜め息を吐き、聞く。



「そう言う葵は何回目なのさ」


「あたしも小さい頃に一回しただけだからこれで二回目。……まさかいつきがそんなにちゅーをしてるとは思わなかったけどね」


「もし、これが初めてだ。って言ったら葵はどうしてたのさ?」


「ん?どうもしないけど、ラッキーだとは思うね。意識もいっぱいして貰えそうだし」


「はぁ、そうですか。……ところで葵。お風呂には入らないの?結構時間過ぎてるけど」



ニヤニヤしている葵に、私は軽く溜め息を吐き、部屋にある時計を見ながら言う。


時計の時刻はもうすぐ夜の十一時になりそうだった。結構時間が経っているのに驚く。


明日は平日で学校もある。その上、葵は部活の朝練もあるから早めに出ていかなくては行けないので葵は少し慌てながら浴室に向かい、その途中に葵は思い出したように私に微笑みながら言う。



「いつき。ネックレスありがとね。大事にするよ!」


「……うん。どういたしまして」



私も微笑み返しながら言うと葵は浴室がある洗面所へと入って行く。


私はベッドに倒れ込み、頭を抱えて唸り呟く。



「…………どうしよう」



ほんとにどうしようだよ。


葵は自分だけドキドキする、とか言っていたけど、さっきも言った通り私もしてるんだよ。あんまり顔には出ないみたいだけど。


あの笑顔でまたドキドキしているし。


卑怯だよ。葵だけじゃなくて、薫さんや彩ちゃんも卑怯だ。何だかきらきらしてて可愛くて、綺麗で……。その上、三人のあの表情や仕草は私だけに見せていると思うと心拍数は更に上昇だよ。


でも、このドキドキは恋ではないんだろうな。嫉妬とかもしないし。



「……本当に恋愛は難しいし、怖い」



思わず呟いた言葉に私は疑問に思う。


…………怖い?


あぁ、うん。確かに怖い。


直接は関係していなかったけど、あの時の事が脳裏に過り、恋愛が本当に怖いと思う。



やっぱり無意識に逃げてるなあ、私。


このままじゃダメだからどうにかしないと……。


そう思いながら眠気はやってきて、私はこれからの事を考える暇もなく寝ていた。




文とかが安定しない。どうしたら安定するのだろうか。



誤字脱字、意味の分からない部分がありましたら教えて下さい。読んで頂きありがとうございました。




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