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思い出したのかも知れません

衝撃的な写真を見て、何とか思い出そうとする。


兄さんや響さんはお酒を飲んでわいわいと騒いでいたが、私は必死に思い出そうとしていると、お酒を飲んでない義姉さんがアドバイスをくれる。



「いつきちゃん。とりあえず、かしわ君に少し聞いてみたらどうかな?何か思い出すかも知れないよ」


「……それも、そうだね。兄さん、その時の事を教えてくれない?」



私は義姉さんの言う通りに自分一人では無理だと思ったので兄さんに聞いてみる。


兄さんはお酒に酔ってきたのか顔が赤くなっている。ついでに響さんも。



「おお、良いぞ~!」


「いっつーの小さな頃か~。面白いと良いなぁ」



酔っ払い二人はテンションが高いけど、兄さんはお酒に強いから話す口調はしっかりとしていて、兄さんの目は優しく、とても懐かしそうにしていた。



「そうだな、あれはお前が小さい頃に親戚の家に行った時の事だ」




◇◇◇

その時のお前はいっつも俺の後についてきていてたんだ。


しかもいつきは自分の事を男の子だと勘違いしていた時期でもあって、確か男子トイレに入ってきてたりもしていたんだ。



えっ、そんな事は良いから薫さんの事を話せって?


いいじゃないか別に。響も知りたがってるんだから良いだろう?


で、だな。しかもいつきはデパートで…………


いっ!


おまっ、危なっ!


酒が溢れるところだっただろうがっ!


……はぁー、分かったよ。芹の言う通りにちゃんと話すって。



んで、親戚の家に行った時の事なんだが。親戚の子どもも一緒にいたんだよ。


他の子の親達と話し合いをしている時は俺ら子どもは別の部屋で遊んでいたんだが、つまらなくてな。外で遊ぶ事にしたんだ。ちゃんと親に伝えてな。

いやー、偉いよな俺、ちゃんと伝えてたんだから。


そんで近くの公園に行ったんだ。


そこの公園には富士山を型どった物があってだな。それにはロッククライミングみたいに岩が埋め込まれていて、その岩と上から下に鎖があって、それで上に上れるようになっていたんだ。


俺らはその岩と鎖を使わずに誰が一番早く上れるか競争していたんだが、いつきだけが上れなくて、いつきは拗ねて一人でブランコに乗っていたんだ。


まぁ、いつきは上れなくて当たり前だろう。筋力的にな。なんせ三、四歳だし。


俺らは富士山の上でトランプをやっていたんだ。何で公園にまできてトランプを?と思うけどな。



暫くトランプをしていて、ふとブランコを見るといつきがいなくなっていたんだ。


周りを見渡しても、いつきの姿が見えなくて俺は慌てたね。


親にもいつきを任されていたし、迷子にでもなっていたら大変だから。俺はすぐにいつきを探して、公園の周りを少し歩いてみたんだ。


まだ小さいし、そこまで遠くには行ってないと思ったからな。



で、公園の近くの周りにはいなかったもんだから俺は違う場所を探すことにした。


他の奴らも一緒に探そうか、と言ってきたが、俺のつまらないプライドみたいなのが動いてそれを断ったんだ。すぐに見つかると思ってたし。


だけど、暫く探しても見つからなくて、焦った。外も夕焼けで赤くなってたし。


これはヤバイと俺は走りながら探して、大きな屋敷の近くを走っていたら、遠くにいつきの後ろ姿が見えてほっと安心して、立ち止まっていつきの名前を呼ぶと、いつきは俺に向かって走り出したんだ。


いつきはにこにことしていて、俺は心配していたのにって理不尽に思えてイラついて、いつきに怒鳴ろうとしたんだが、いつきは俺の所に着くあとちょっとで転んでな。


転んだ後のいつきの情けない顔を見たら、拍子抜けして怒る気もなくしたんだ。



俺はいつきを立ち上がらせると、何とか泣かせずにすんだかと思えば、急に笑いながら「かわいい女の子の友達ができた!」って言ってきたんだ。



俺は驚いたね。いつきは人見知りするからあまり自分から友達を作る事がなくて、大体俺の友達繋がりで仲良くなるんだが、自分で女の子の友達を作ったって聞いて、それはもう感心したね。


それでいつきはまた明日も遊ぶ約束をしてきたらしくて、楽しそうに話してきたんだ。


俺もいつきの友達がどんな子なのか知りたくて、一緒に遊べないか聞いたら二つ返事で了承してくれてな。次の日に俺もいつきの友達と遊ぶ約束をしたんだ。


それを親戚の家に戻って母さんと父さんに話したら二人も嬉しそうにしていたよ。


二人もいつきの友達と会いたがっていたけど、まだ話し合いが残っていたらしくて母さんと父さんは一緒に行けなかったんだ。


そこで父さんはカメラを俺に渡してその友達といつきを撮れって言ってきてな。仕方なく俺はカメラマンになったんだ。



そして次の日になって、いつきについて行くと前の日にいつきを見つけた時の大きな屋敷に着いてな。その屋敷の壁に子どもがやっと通れるくらいの穴にいつきが入って行って、俺はそれを見て驚いた。


いつきは驚く俺を置いて先に進むから慌てて俺もいつきについて行ったんだ。



穴を潜った先はきれいな日本庭園でさ、少し見惚れてたら、いつきが俺を呼んだからそっちの方に行くといつきと一緒に女の子がいて、俺はこの子がいつきの友達だなって分かったから自己紹介したんだ。


女の子も名前を言ってくれて、その子は「かおる」と言う名前だった。




◇◇◇

「へぇー、それがかっしーと薫ちゃんとの出会いだったんだ。……でも、何でいっつーは覚えてないのさ。聞いてると初めての友達でしょう」


「うっ」



だらしなく寝転びながらツマミを食べている響さんにそう言われたけれど、私は言葉が詰まっただけで何も言えなかった。



「まぁ、仕方がないかもなぁ。何せその時以降は『かおるちゃん』と会っていなかったし」


「へっ?そうなの?」



響さんは兄さんのその言葉に驚き、あたりめを口にくわえながら聞いていて、私は落ち込み、俯いていたけど驚いて兄さんを見ると、兄さんは自分のグラスに酎ハイを注いでいた。ついでに義姉さんは無くなりかけのツマミを持ってきている。



「あぁ、俺らが帰る時間の少し前にその家のお婆さんが来てな。あちらさんも親戚の集まりで来ていたらしくて、その次の日に戻るって言っていたんだ」


「んじゃー、いっつーと薫ちゃんは二日間しか遊んでないんだ」


「ん、そう言う事だな」



兄さんは義姉さんが持ってきたビーフジャーキーを開けて、それを食べ始める。響さんは冷酒を開け、グラスに注いでる。義姉さんは棚の中から大きな瓶と氷と水差しを用意している。

…………毎度の事だけど、どれだけ飲むつもりなんだろう。ほんと。



「それでいつきちゃんは思い出してきたの?」



これまで喋っていなかった義姉さんにそう聞かれて、私は呻く。



「……ま、思い出そうとしてればきっといつか、多分どこかで思い出すだろうよ」



「…………そんな曖昧に言わなくても……」


「そんなものさ。人の記憶は」


「あはっ。かっしーの言う通りに人の記憶は物凄く曖昧だもんねー。……でも時々凄い人もいるよね」


「確かに。よく覚えてられるなって思う奴とかいるよな」



兄さんと響さんは上機嫌に談笑しながらお酒を飲む。


私は溜め息を吐きながら内心、その凄い人に兄さんも入っているよ。と言う。


何でそんなたった二日間の事を覚えているのだろう。当事者の私が覚えているのならまだ分かるけれど。



もう一度溜め息を吐くと義姉さんがお風呂を勧める。


時計を見ると、結構夜遅くになっていたので、義姉さんのお言葉に甘える事にする。




※※※

お風呂から上がれば、兄さんと響さんは仲良く二人して酔い潰れて眠っていた。


私は呆れながら毛布を二人に掛けて、キッチンにいるであろう義姉さんの所に行くと、もう片付け終わるところだった。



「義姉さん、二人とも寝ちゃったよ。一応、毛布を掛けたけど、どうする?」


「あら、そうなの?いつきちゃん、ありがとう。とりあえず、そのままにしておきましょうか。後でお水を飲ませなくちゃいけないしね」


「それじゃあ、響さんもいつもの和室に布団を敷いとけば良いよね」


「うん、お願いね。いつきちゃん」



私は義姉さんに返事をしてから和室へと向かい、私は押入れから布団を二組敷く。私の分と響さんの分だ。布団を敷き終わったら、居間に戻り、義姉さんのお手伝いをする。


お手伝いと言っても、ただ兄さんを寝室に一緒に運ぶだけなんだけど……。


その後は私一人で響さんを布団を敷いた和室に運べばお手伝いは終りだから、そのまま私は布団に転がって寝る。



私と響さんは兄さんの家に一緒に泊まる時は大体こんな感じで一日は終わるのだ。




※※※

私はいつの間にか視点が低くなっていた。


何でだろうと思い、周りを見ると、どこかの公園にいて、側に兄さんがいたけど、兄さんも小さくなっていた。


私は驚いていると、他の子どももいて、どっかで見た子だなって考えて思い出す。


確か、この子私の従兄弟だ。兄さんよりも少し歳上の……。


今は強面だけど、昔は可愛かったんだ、などと思っていると、何故だか視点が上がり元に戻っていた。


また、私は何でだろうと考えて、富士山を型どった物が見えて、何となくわかった。


これは夢で、兄さんが言っていた、薫さんと初めて会った時なんだと……。




……いや、まさか、本当に見れるとは思わなかった。


義姉さんと響さんが面白半分に言っていた、本を枕の下に入れとけば、その本の内容が夢で見れるって言う話を聞いて、冗談で写真数枚をを枕の下にやってみたら本当に見れたよ……。



とりあえず、自分を探すと簡単に見つけた。


ブランコに乗って膨れっ面で山の上にいる兄さん達を見ていて、ブランコから下りるとどこかに向かい始めた。


小さい頃の私に付いて行くと、キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていて、もしかして道に迷ったのかな?と不安になる。


小さい私はいつの間にか大きな屋敷の門の前まで来ていて、どこかで見た事があるような門だな、と思っていたら、小さい私は扉を開けようとしていた。だけどやっぱり扉はびくともしない。


小さい私はがっかりしていて、今度は屋敷の周りを回ろうとしていたのか、屋敷の塀の壁に手を当てながら歩いている。


……どうやら小さい私はこの屋敷の中に入りたいようだ。



小さい私は少し歩いて穴を見つけ、中を潜って行く。


大きさは兄さんが言っていたように小学生低学年がやっと通れるくらいの大きさで、私はどうやって中に入ればいいか悩み、とりあえず塀に手を当てると、すり抜けて私は凄いびっくりする。


…………うん。まぁ夢だから、すり抜けられるんだろうね。


……何か幽霊になった気分だよ。と思いながら小さい私を追って行く。



小さい私は物珍しげに周りをきょろきょろ見ていた。


大きい屋敷はやっぱり庭も大きく、綺麗で、小さい私はいつの間にかいた女の子の側に行く。


多分、あの女の子が薫さんの小さい頃なのだろう。



薫さんは小さい頃、髪が長かったんだ。……今は伸ばさないのかな?可愛いのに。



小さい薫さんは泣いていて、何とか小さい私は泣き止ませようとしている風だった。


それにしても何でこの夢は無音で匂いも無いのだろう。やっぱり夢だからかな。



小さい私はいろいろと小さい薫さんに身振り手振りしながら話し掛けていて、最初は小さい薫さんは何も反応していなかったけど、少ししたら顔を上げて思わず笑う。


小さい私はそれが嬉しかったのか小さい薫さんに抱きつく。……小さい頃の私はアクティブだったらしい。



暫くするとお婆さんがやって来て、お婆さんに言われたのか、小さい私は戻って行き、そしていつの間に次の日になったのか、小さい兄さんがカメラをぶら下げながら庭にいた。


小さい兄さんはカメラを持ち、庭を写す。すると小さい私が小さい薫さんを連れてきて、兄さんは薫さんに何かを話す。多分、兄さんは自己紹介をしたのだろう。



兄さんはカメラを持って、今度は庭ではなく、小さい私達を撮る。


小さい私達はカメラにピース等をしていて、微笑ましい光景で和んだ。



「いつきとかおるちゃんは仲が良いな。つい昨日会ったばっかなんだろ」


「うん、そうだよ!」



小さい兄さんは話しかけて、小さい私が返事をして驚く。いきなり音声が入ったから。



「だって、かおるちゃんはボクのお嫁さんだからね!」



得意気に小さい私が言い、小さい薫さんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。


…………え?




「はいぃぃーーっ!!?」


「いっつー、うるさい!」


「っ!?」



何かが顔に当たり、とても痛くて息苦しくて、目を開けると暗かったけど、手で退かせて見ると枕で、横を見れば布団にくるまる響さん。


私の頭の下には枕があり、響さんの布団には枕がない。

つまり今持っている枕は響さんの物。



「響さん。痛かったし、苦しかったんだけど……」


「……しらない。まだねる」



私の文句に響さんは知ったもんかと言うようにそのまま眠ったのか、寝息が聞こえる。


私は溜め息を吐き、今は何時か時計を見ると、八時になったばかりだった。もう一度溜め息を吐いてボーとする。



何か夢を見ていた気がする。何だったっけ?


…………あーー。小さい頃の夢だ。



段々と思い出してくる。


昔の私は確か、兄さんの真似をして自分の事をボクって言っていて、結構なやんちゃだったっけ。


それで、親戚の集まりで暇をしていて、公園に行って、つまらなくなったから散歩して、大きな屋敷があって、入れそうな穴があったから入って、その先に小さい頃の薫さんがいたんだ。


いろいろと私の事を話したりとかして、何故だか「かおるちゃんはボクのお嫁さん!」とか言い出して、キスをしたんだっけ。



…………何やってるの、小さい頃の私?!


小さい頃は仕方がないとは思うけど、後の事を考えてよっ!!


今、ものすんごく恥ずかしいんだよ!!?



私は呻きながら布団の中で左右、行ったり来たりとゴロゴロしていると、響さんが起きてきて、思わずゴロゴロするのを止める。



「いつき、さっきあたしはうるさいって言ったよね?」


「は、はい」



響さんは小声だけどはっきりと聞こえ、底冷えするような空気になり、私は固まる。



「いつきもあたしと一緒に寝れば、静かになる、よね?」


「い、いえ!私はもう起きるので大丈夫ですっ!」



私は文字通りに飛び起き、「響さん、お休みなさい!」と言って部屋を出て行く。




部屋を出て、溜め息を吐いてから洗面所に向かい、顔を洗ってふと気づく。



そう言えば、着替えは部屋に置いたまんまだ。


どうしようと思い、寝巻きのままはダメだから、意を決して響さんがまだ眠っている部屋の前に立ち、恐る恐る部屋に入る。


響さんがスヤスヤ眠っているのを見ると、私はほっとして着替えを持って行き、どうしよう、と項垂れる。



今度、というか月曜日に薫さんに会った時、どんな風に接すればいいんだろう。いや、普通でいいんだろうけど……出来るかなぁ?



そして私は本日早々の四回目の溜め息を吐いた。




何か無駄に長い気がする。


おかしい部分がありましたら教えて下さい。



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