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衝撃的な事実です

金曜日の夕方。私はまた、兄さんの家の前にいる。

今日は久しぶりに兄さんの家にお泊まりをするからだ。


インターホンを鳴らすと、はたして義姉さんが出てきた。



「いらっしゃい、いつきちゃん」


「お邪魔します」



義姉さんは笑顔で出迎えてくれて、私は中に入る。

普通なら荷物があるからそれを置きに行くのだろうけど、私の場合は着替えなどはもうこの家に置いてあるので、宿題とかある時にしか荷物はない。


今日は宿題は少ないので日曜日にまとめてやるつもりだから宿題の用意は持ってきていない。



「今日はお鍋にしようかと思っているの。いつきちゃんはお鍋で良いかな?」


「良いよ。お鍋が美味しい時期になってきたしね」


「ねぇ、結構寒くなってきたからね。朝はお布団から出るのが難しいよね」


「確かに」



他愛のない話をしながらリビングに着くと、義姉さんはお茶を出してくれた。



「多分、もう少ししたらかしわ君が帰って来ると思うけど……」


「今日は早いんだ、兄さん」


「丁度、出張から帰って来るからね」



私はそっかぁ、と呟いて今日泊まるのは悪かったかな、と思ったけど、でもどうせ響さんが来るのだから別に良いかな、と考える。



「響さんは何時ぐらいに来るの?」


「うーん。確か七時半頃だったと思うよ」


「そうなんだぁ。……でも、響さんって何の仕事してるの?」


「あれ?いつきちゃんは知らなかったの?」


「聞いた事なかったし、それに大体響さんは寝てるかゲームをしてるか漫画を読んでいる姿しか見てないような気がする。後はご飯を一緒に食べている時くらいかな。……それに余り話した事なかったし」



私は自分で言っていてあんまり響さんの事を知らない事に気づいて驚く。


確か響さんと知り合ったのは、兄さんに義姉さんが恋人だと紹介されて、暫くしてから義姉さんの家に上がらせて貰った時に同居人だと言われたから、三年くらい前だっけ。



いや、あの時は驚いた。何故だか響さんは裸で寝てたし、お酒の缶とか散らかってて、しかも響さんが起きたと思ったら絡まれたし……。


うん。あの時は大変だった。



「響は先生なのよ」


「…………え?先生?」


「そうよ。教師とも言うわね」



私は響さんが教師と言う事に驚き過ぎて少しばかり固まってしまった。


私はもう一度確認する為に義姉さんに聞く。



「あの、ぐうたらで起きている間はお酒を飲んでいるか、ごろごろしているか、さっき言ったような事しか見たことがないような人が!?」


「へぇー。いつきはあたしの事をそんな風に思っていたんだ」


「あら、響。いらっしゃい」


「芹、お邪魔してるよ。……で、いつき」


「はっ、はい!」



私は胡座だったけど、何故だか正座になって背筋を伸ばし、響さんの方を向く。



「あたしがそんなに教師なのがおかしいのかな?」


「いえ、そんな事はありませんっ」


「ふーん。でも、さっきはあり得なさげだったけどなあ」



響さんはにこにこと笑顔なのに、とても重い威圧感を私に向けていたので、私は冷や汗がだらだらと流れ、目も挙動不審にしていると、そこに天使が現れる。



「まぁまぁ、響。とりあえずこのお茶を飲んでみて。この前京都で老舗のお茶屋で買ってきたの。冷めても美味しいからいつきちゃんも飲んでみて」


響さんは義姉さんの言葉にしぶしぶながらお茶を手に取り、お茶を飲むと、私に向けていた威圧感が和らいだ。



「あっ美味しいねぇ。このお茶」


「でしょう。やっぱりお茶はお茶屋で買った方が良いかもねぇ。……いつきちゃんも飲もう。冷めても美味しいのよ」



私も義姉さんの言葉に従い、お茶を飲むとほのかな渋味と旨味があり、美味しかった。



「まぁ、確かに響はアレを付けた時の様子を見なければ教師だなんて思えないよねぇ」


「自分でも柄じゃない事は知ってるけどさあ」



私がお茶を飲んでほっとしていると、義姉さんはしみじみと言い、響さんは義姉さんの言葉に少し拗ねたように言う。


さっきまでの威圧感はなくなっていて私は安心する。


それにしてもアレって何だろう?



「それにしても今日は早いのね」


「んー、出来る子に任せてきた」


「大丈夫なの?」


「大丈夫大丈夫。その子、あたしよりもしっかりしてるし、今年の生徒会のメンバーは凄いからねぇ。色々と……」



それで良いのか教師。


でも少し引っ掛かる言葉があり、思わず聞いていた。



「生徒会?」


「そっ、あたし、生徒会の顧問を任されてるのよ」


「えっ!」


「もっと驚く事を教えてあげるとね、いつきちゃん。何と響は生徒会長でもあったのよ」


驚きすぎて言葉も出なかった。


いや、普段の響さんを見てれば誰だって驚くよ。本当に。



「そう言う芹は副会長だったじゃん。ていうか、ほとんど仕事してたの芹だったし。会長なのは名前だけだって」


「でも、ちゃんと仕事をしていた時もあったじゃない」



私は義姉さんも副会長と言う事にも驚いている。ていうかやっぱりほとんど押し付けてたんだ、仕事。


義姉さんも大変だったんだな。と思っていたら、響さんが話しかけてきた。



「いっつー。女の子にモテモテ何だってー?」


「うっ、確かに告白されたけど、今は保留中」


「でも、大変だねぇ。確かお昼は生徒会室で雛鳥のようにご飯を食べさせて貰って、この間の日曜日にその中の子とデートしたから、明後日の日曜日には違う女の子とデートするんでしょ?」


「んなっ!何でそんな事知ってるの!?」


「へぇ。そんな面白い事になってんのかぁ」



まだ、義姉さんや兄さんにも言った事がないのに?!と驚愕していると、横から本当に面白そうに言う声が聞こえてきて、そっちの方を見ると兄さんがいた。



「おっ帰りー、かっしー」


「おう、ただいまー響」


「あら、お帰りなさい。かしわ君も予定より少し早いのね」


「芹、ただいま。ああ、早めに終われたからな。……で、いつきは何か面白い事になってんな」


「にっ兄さん?!」


ニヤニヤと兄さんは言ってきて、私は焦る。



「ふふっ、話は後にしましょう。ちゃちゃっと夕飯の用意をしちゃうから。いつきちゃん手伝ってね」


「はい!」



やっぱり義姉さんは天使様、いや女神様です!


私は義姉さんと一緒にキッチンに向かい、夕飯をお手伝いする事に。でも私は料理が出来ないのでテーブルを拭いたり、食器の用意くらいしかしなかったけどね。




※※※

夕飯も食べ終わり、私はお茶を飲んで一息ついている。


夕飯のちゃんこ鍋は美味しかったけど、食事中は色々と恥ずかしかった。


何故だか響さんは薫さんや彩ちゃんとのやり取りや葵との事も知っているし、何で知っているのか聞いてもはぐらかして教えてくれなかったし。



「で、俺に聞きたい事って?」



兄さんもお茶を一口飲んだ後、早速私がこの家に来た第一目的を聞いてきたので聞きたい事を話す事にする。


「あのさ、兄さんは物覚えが良いから私が小さい時も覚えてるでしょ?」


「まぁな。と言うかお前が忘れやすいだけだと思うが?」


「うっ、確かにそうかも知れないけど……。それで、私が小さい時に薫さんに会ったような感じなんだけど、兄さんは何か覚えてる?」


「うーん、名前だけだと分からないな。写真とかないのか?」



写真か。……確かこの前写メを貰ったなぁ。

でも、あれを見せるの?



「ないのか?」


「いや、あるにはあるけど……」



言いきれない私を兄さんは不思議そうにしていて、とりあえず、私は携帯を取り出した。


携帯を操作してその写真を画面に出して、やっぱり見せるかどうか迷う。

だけど、後ろから響さんが私の頭の上に乗っかり携帯を取られる。



「うぐっ」


「へー、いっつーも満更じゃなさそうじゃん」



響さんは私から取った携帯を兄さんと義姉さんに見せる。



「あら、ほんと。自然に食べさせられているのね」


「ほー、この子が薫って子か。綺麗な子だな」



その写真はお弁当を食べさせられている写真で、彩ちゃんと葵の時のもある。


七海さんが勝手に撮ってメールで送ってきた物だ。


結構恥ずかしくてあんまり他人に見られたくない。



「んで兄さん、覚えない?……それで響さんはいつまで人に乗っかってるのさ」


「んー、まぁまぁ。良いじゃないの」


「良くない」



私はぶっきらぼうに言い、響さんは未だに私の頭の上に乗っている。

お酒臭いし、本当は重いと言いたいけど、言うと嫌な予感がするから言わないでいるけど……。



「うーーん。……あっ、思い出した」


「えっ、本当!?」



私はガバッと起き上がり、響さんを私の上から落とすと、恨めしそうに「痛いなぁ」と私を見て呟く。

落とされた響さんは義姉さんに宥めて貰っているけど、私は兄さんに詰め寄る。



「あぁ、確かその時の写真もあった筈だが、ちょっと待ってろよ」



兄さんはそう言ってその場を離れて数分後、兄さんはダンボールを抱えてやって来た。


ダンボールには「いつきアルバム」と書いてある。



「何でこっちに持ってきてるの!?」


「いやー、必要になるかも知れないと思ってな」


「兄さんのだけで良かったと思うけど……」


「今必要になったから良いだろう」



兄さんはそう言いながらダンボールの中を漁る。

暫くして目当ての物を発見したのか「これこれ!」と楽しそうに言って、一冊のアルバムを取り出した。



「確かお前が三、四歳くらいの時だなぁ」



アルバムのページを捲りながら兄さんは話し出す。



「その時だな。その頃のいつきはわんぱくで、いっつも俺の後ろをついてきていたんだが、偶々こっちの近くに遊びに来ていた時があってな。その時は珍しく俺の後ろにいなくて、代わりに自分で友達を連れてきて、その子がカオルって名前だったんだ。……おっ、あったあった。これこれ」



アルバムを開いて私達に見せると、そこには小さい頃の私と髪の長い可愛らしい女の子がいた。


まぁ、普通なら可愛らしい女の子とどっちかって言うと私は格好からして男の子っぽいから、はたから見たら男の子だなぁ。が、その写真に写っていた。


その写真を見て、私は固まる。


義姉さんと響さんは可愛いときゃっきゃ言っていたけど、当事者じゃなければ私も小さな子が可愛い、と言いたかった。



「いやー。いっつーは手が早かったんだねぇー」


「そうそう、おふくろは喜んでいたけど、親父は複雑そうだったんだよ」



その写真には男の子(つまり私)が、少し気弱そうな髪の長い可愛らしい女の子にキスをしている物だった。


…………しかも、口に。



今日、最大の驚きだった。




そう言えばこの作品の季節は秋でしたね。



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