表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

今度は友達から告白されました

日曜日、薫さんと映画を見に行き、お茶をして別れた次の日は普通に学校に行く日なので登校し、特に何事もなく無事に授業も終わり、寮に戻ろうかと思っていたら、葵に放課後は一緒についてきて、と言われたので、何だろうと思いながら葵について行くと、そこは屋上に続く階段でした。



「あれ、屋上に行くの?確か鍵が掛かってるんじゃなかったっけ?」


「うん」



葵は私の疑問に静かに頷くと黙って階段を上がっていくので、私は少しびっくりして、一瞬固まった後、慌てて葵の後を追っていく。



屋上の扉の前に着くと葵は鍵を取り出して、扉を開けた。


屋上の鍵を持っている事も驚きだったが、葵の様子がおかしい事に私は不安だった。


屋上に着くと葵は振り向き、私と顔を見合わせる。



「ありがとね、いつき。ここまで付き合わせちゃったりして」


「別にいいよ。一度屋上にきてみたかったし」



ここに来る間の数分は珍しくほとんど話さずに来たので、今話すのがとても久しぶりに思えた。



「初めて来たけど、ここから見える景色って綺麗だね」


「そうだね。あたしも初めて見るけど本当に綺麗だわ」


「え?葵も初めてなの?」



屋上の鍵を持っている葵が初めて来たと言うのに驚き、その事を言うと、葵はばつが悪そうに言う。



「えっと、ここの鍵は七海先輩に借りたんだ。いつきに謝りたい事と大事な話があるんだけど、どこで話したらいいか七海先輩にメールで聞いたら貸してくれてさ」


「謝りたい事と大事な話し?」



私は何だろうと思いながら首を傾げると、葵は深呼吸をして、勢いよくお辞儀をした。



「ごめん!!」


「ふぇっ?」



まさか謝って来るとは思わなくて、思わず変な声が出たが、葵はそれに構わず頭を下げたまま話しだす。



「昨日、会長とのデート、後を付けていたんだ。本当にごめんなさい」


「……それだけ?」


「……とりあえずは」


「まぁ、確かに尾行されてたのは気づかなかったけど、もういいから頭を上げて」



私は葵が尾行していた事に驚きはしたが、それに対して怒っていないのでそれを言うと、葵は頭を上げてくれた。



私は尾行していたのを謝るだけだったんだ、と少しほっとした。


だって、もっと凄い告白だと思っていたのだ。例えば寮の部屋を変えて欲しいとかかと思っていたから。深刻そうな顔で言うし。


ほんとによかった。葵に嫌われてなくて。



私はその不安から解放されたので、屋上から見える景色を楽しむ為、フェンスに近付いていく。



「まだ、あたしはいつきに言いたい事と言うか伝えたい事がある」


「……何?」



葵が真剣な声で話しかけてきて、私はフェンスに手をかけながら葵の方に振り返って見ると、葵が顔を赤く染めて恥ずかしそうに、そして苦しそうに眉を寄せ、俯きながら話し出す。



「あ、あたし、昨日いつき達をつけていて、気が付いたと言うか、わかったと言うか……。えっと、昨日、後をつけている間、いつきと会長が仲良くしている度に、何かモヤモヤしたりして嫌な感じだったんだ。……それで、いつき、最後に会長を家まで送って行ったよね」


「……うん、送ったよ」



私は初めて見る葵のおどおどした様子を見て、少しずつ扉の近くにいる葵の側によりながら出来るだけ優しい声で話の続きを促す。



「それで……いつきは昨日ほっぺたに会長からキスをされたって言っていたけど、あたしから見た所だと、く、口にされたんだと思ってね。そしたら、物凄く胸が苦しくなって……。それで、わかったの」



葵はそう言うと顔を上げて、私を真っ直ぐに見る。


その顔は、頬を赤く薄く染め、恥ずかしそうで、少しだけ不安そうだけど、でも清々しそうな、そして照れている表情で、私はとても綺麗だと思った。


葵は目を瞑り、一回深呼吸をした後、私と目を合わせて、はっきりと言う。



「あたし、いつきに恋をしている。いつきが好きなんだ……って」




◇◇◇

いつきに想いを伝えて、どれくらいの時間が経ったのか。


数秒?それとも数分?わからないけど、あたしにとっては長く感じた。



伝えている時のいつきの顔はいつもの無愛想な無表情で、でもよく見れば優しい眼差しをしているのだけど、今はきょとんと固まっている。


その表情が可愛いと思っていると、だんだん顔が赤くなっていくのを見て、少し面白いと思った。



「……えっ?」


「だから、あたしはいつきが好きなの!」



いつきは顔を赤くしながら首を傾げたのでもう一度言うと、いきなりしゃがみこみ、唸りだし、何か小声でブツブツ呟いている。



「う゛ーー。一体全体何があったんだ。おかしい。絶対におかしい。これがモテ期?いや、でも私は女子で相手も女子の場合もモテ期と言うのか?それよりも……」


あたしには何を言っているか聞こえなかったが、不安になり、いつきに声を掛けようとすると、突然いつきは立ち上がり、顔を真っ赤にしながら話し出し、



「葵!私はそういうの、よく分からないから保留でお願いしますっ」



勢いよくきれいにお辞儀をしたかと思うと、早足であたしから逃げようとしていたから、思わずいつきの腕を掴んで抱き締めていた。



「逃げないで。保留でもいいから、あたしから逃げないで。」



少しだけあたしよりも背の低いいつきは柔らかくて、いい匂いがした。


このままずっと抱き締めていたいと思いつつも、いつきと目をあわせる為に少し離して、いつきにはっきり言う。



「絶対にあたしを選んで貰うから、覚悟しといてよ」



あたしはいつきの頬に口づけをした後、走って屋上から出て行った。


本当なら口がよかったけど、今は無理だったけど、次は……。


会長や彩には絶対にいつきは渡さないから。ううん、誰にも渡さない。




◇◇◇

葵は逃げないでと言ったくせに自分が逃げてるじゃんか、と思いながら私は茫然としていた。



暫くして「どうしよ」と思わず呟いたら丁度、予鈴が鳴ったから教室に向かわないと、と思うけど、葵も教室にいるだろうから行きづらい。


また兄さん家に駆け込もうか、とも思うけどもうすぐテストでもあるから授業を受けないとヤバイし……。確か次は数学だったよね。……うん、テスト絶対にヤバイわ。



結局、教室に戻る事にする。


……あっ、屋上の鍵はどうしよう。まぁ、そのままでいいか。




※※※

少しゆっくり歩きながら教室に戻るとすでに先生がいたけど、いつもの数学の先生ではなくて一瞬固まってしまうが、自分の席に座る。


その時に葵と目が合い、どぎまぎしたけど、何とかいつも通りにできたと思う。


「はじめまして。長谷田です。今日は香川先生が急病によりお休みなので私が授業を教えます」



スーツを着こなしている綺麗で、大人で眼鏡の似合う女性だなと私は思い、長谷田先生はそう言うとプリントを回し始める。


授業は結構分かりやすく、長谷田先生の授業がいいなと思う。

おじさんよりも綺麗な女性の方が目の保養になるし……。



それにしても長谷田先生とは初対面の筈だけど、どっかで会ったように思えるのは何でだろう?


知り合いの誰かに似ているからかなあ?

その知り合いは全然思い出せなくて、消化不良気味で嫌な感じだ。


おかげでチラチラと長谷田先生を見ていたけど、不審に思われてないよね?




「いつきはああいう女性ひとが好みなんだ」


「へっ?」



机の上を片付けていると唐突にそう言われ、顔を上げてみると、不機嫌そうな顔をした葵が立っていた。



「長谷田先生が好きなの?」


「えっ、何で?」


「ずっと長谷田先生を見てたじゃん」


葵はどこか不安そうな感じで言い、私は慌てて言う。



「いや。ただ知り合いに似てるなあって思ってただけだから。好きとかそんなんじゃないよ」


「ほんとに?」



葵はぐいっと顔を近づけて聞いてきたので、私は慌てて首を縦に振る。


葵はそれに納得をしてくれたのか、離れて笑顔で言う。



「次は移動教室だから一緒に行こう」



私は頷き、ちょっと待って貰い、次の授業の教科書等を出して教室を出る。


時々しか一緒に葵と移動教室に向かわないけど、葵は大体いつも通りだった。


少し前に私に告白してきたとは思えなかったけど、よく見ると頬が赤くなっていたり、声が少し上擦っているのがわかって、やっぱり葵に告白されたんだなあ、と思った。




※※※

授業も終わり、帰ろうとしていると葵が声を掛けてきた。



「いつき、もう帰るの?」


「うん。あっでも、兄さんの家に行く約束してたから兄さん家によってくよ」


「ふーん」


「葵は部活だよね。頑張ってね」


「うんっ。あたし、いつも以上に頑張るよ!」



私がそう言うと、葵は嬉しそうな顔で、張り切ったように両手でぐっとガッツポーズをしながら返してきたので、私は少し張り切りすぎだと思い、苦笑しながら言う。



「怪我には気を付けてね」


「葵~。一緒に部活行こう!」


「ん、ちょっと待っててー!……いつき、ありがとう。怪我しないように気を付けるよ」



葵は本当に嬉しそうに笑いながら私に言って、葵は廊下で待っている部活仲間の所に行った。


私は不覚にも葵の笑顔にドキッとした。



私は深く溜め息を吐き、鞄を持って教室を出ると、誰かにぶつかった。



「ご、ごめん」


「こっちこそごめんなさい」



慌てて謝ると、相手の方も落ち着いた感じで謝ってくれて、相手を見ると、ついこの間知り合ったばかりの生徒会の一員の龍川さんだった。



「あっ、龍川さん」


「ん?いっちゃんじゃん」



……いっちゃん!?

なんか懐かしい呼び方だ。昔はよくそう呼ばれたな。母親とかに……。



「いっちゃんは帰るの?」


「えっと、兄さんの家に行く予定。……龍川さんは?」


「空かくうちゃんがいいな~。名字で呼ばれるの嫌いだから」


「あっうん、わかった。……空さんはこれから生徒会に?」


「さん、もいらないよー。そう生徒会の仕事だよ~」



私は「そうなんだ」と呟くと空は「じゃあ、またねー」とふにゃん、と笑いながら手を振って別れた。



何気に初めて話したよ。空と……。



私は軽く溜め息を吐き、兄さん家に向かう為にまずは学校を出る事にする。


兄さん、今日は家にいる筈だから早めに相談しよう。


確か元々は薫さんの事を聞く予定だったんだけどなあ。


私はもう一度溜め息を吐いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ