第三話 後悔・そして現実
「それじゃ、僕帰りますね」
佐藤が生徒会室のドアを少し開けて達也の方に振り返った。
「ああ。遅くなって悪かった」
「いやいや、もういいんですよ。我慢しなくても」
そして、一人残された達也は、生徒会室の奥にある書庫に向かう。
そこには、歴代生徒会長や校長のいろいろな機密書類があった。乙葉に関しての書類も多数あるはずだから、それを読んでみようと思ったのだった。
すると、床に一枚の書類が落ちていた。仮にも生徒会室なので、一般の生徒が入ってきてもおかしくない。機密書類の管理は生徒会長の責任としてあるので、一般の生徒に見られるのはまずい。
「……っ」
拾おうとするといきなり風が吹いて、書類が指をかすった。鮮やかな赤色の血が書類ににじむ。
微かな痛みも感じたが、その書類の内容を見て、痛みも何もかもが頭から消えた。
『守護者受け入れについての意見』
受け入れ、ということはやはり……学校側もこの事実を知っていたということなのだろうか。
それは、学校の最大の秘密……代々の生徒会長や校長しか知らない、ということになる。つまりは、事実を知っていたのは――……
乙葉、だ。
じゃああの『守護者』が言っていた妖怪の話も、海藤成実の一件と関連があるのだろうか。そうだとしたら、それは学校全体の危険ということになる。
海藤成実の目的が、仮に父母を生き返らせることだとしても、おかしいことがいくつか出てくる。
まず、そしたらなぜ乙葉を犠牲にしなければならなかったのか。
これに関してはあまり深く知りたくもないし思い出したくもないのだが、乙葉はこの学校の生徒会長だった。そうすると、何か情報を知っていてもおかしくない。海藤成実のことも以前から知っていたようだし――……
『っやめろ! 海藤成実の件は危険だ。今すぐ手を引いた方がいい』
まさかこんなことになろうとは達也も考えていなかったので、今は自分を責める事しかできなかった。どうしてあの時、自分は乙葉の元へ行かなかったのだろう。どうして……乙葉を助けられなかったのだろう。
今更だけど、乙葉に謝りたい。
遅いだろうけれど。