第十四話 疑問・そして追憶
そう、最初から解せないことがあった。いくつかあるが、まず一番引っかかるのが海堂成実の家にあった本。他にも、回りくどい方法や、抜け殻のこと、連れて行かれる前の進藤の腕の傷、乙葉や佐藤の不自然な死に方。数えきれないくらいある。ただ、手がかりはあの本の一ページにあると思う。
あの言葉が指しているのは、『生きていて、死んでいるもの』つまり、『体か心、どちらかが生きていて、もう片方は死んでいるもの』だ。心だけ生きている者には守護者いがい心当たりはないから、おそらく指しているのは校長達の抜け殻――思い出すのもおぞましいが。
そして、死ねないものへの鎮魂歌。
「あいつは、最初からこのつもりだった……?」
だとしたら、乙葉がなぜそれを知っていたのか。あれだけ止めようとしていたのは、それなりの理由があったはずだが……。理由に関わっているものについてはさっき挙げたものしか推測できなかった。
ただ、少なくともこの学校には不安定な要素がいろいろある。『守護者』が言っていたようなことも調べてみる必要があるかもしれない。いずれにせよ、やることは山ほどあって、海藤成実と対峙できるのは、ずっとずっと後のことになるだろう。誰もいない生徒会室で、ふっとため息をついた。するといきなり痛烈な眠気が襲ってきて、ボールペンを取り落とした。
その瞬間、一年位前にも同じようなことがあったことに気づいた。
――乙葉と出会った時のことだった。