第十一話 意志・そしてその瞳
「どうしたんだね? 君には今日は休んでいいと言ったはずだが」
職員室に入ると、学年主任の先生が厳しい顔をして達也に静かに聞いた。
「用があるんです」
達也は静かに言い返した。職員室全体の視線が達也に集まっていたが、達也は気にならない。
それよりも焦っていたのだ。誰にもわからなかったかもしれないが、今すぐ何か対策をうたないとこの学校はすぐに海藤成実によって壊される。しかし、そんなことを教師に訴えるわけにもいかず、達也はこうして職員室で海藤成実についての情報をもらえないかと思って来たのだった。
「言っておくが、これ以上訳の分からない事にうちの生徒を巻き込まないでくれたまえ」
先生の声は冷ややかで尖っていた。
確かに、その言い分は正しいだろう。訳のわからない理由で死んでしまった生徒。家族への詫びも一言では足りない。その上、二人とも生徒会の人物だったとくれば、もう何となく察しはつく――……
「お願いします、海藤成実という女子について教えてください!」
生徒会長として、一人の人間として、自分の評価が下がっていくのを達也は知っている。
けれど、そんな微々たる事で諦めているようなときではないのだ。譲ってはいけない。誰にも、これは邪魔させてはいけない……ゲームや遊びとは訳が違うのだ。
先生達も海藤成実が関与していることは知っているようで、目をそらしたり俯いたりする先生が多数だったが、達也は目をそらさず、ずっと状況を見ていた。
「……どうします?」
「仕方ない。やはり、最後は生徒会長として片をつけてもらわなくてはな」
「しかし、もうこれ以上は……」
先生がひそひそと言い合ううちに、だんだん学校の風が強くなってきたような気がした。
「…………」
気のせいなのか? いや、それにしてはまるで誘われているような感じがする。
「遠藤君、じゃあわかった。海藤についての書類を渡すからその代わり、もうこれ以上他の犠牲は出さないでくれ。約束してくれるな?」
「はい。わかりました」
達也は書類を受け取ってから、生徒会室へ急いだ。