第二十一話 その背に背負うモノ 前編
聖教イタリア宗主国。
ヨーロピアン連合、EUにおける主要国の一角で、『ヴァチカン』と呼ばれる『世界最小の宗教国家』を有する宗教国家だ。『聖教』と呼ばれる、世界で最も知られ、信仰される宗教の総本山でもある国である。
国の政務を取り仕切るのは、『教皇』と呼ばれる『十二使徒』から選出された『聖教』最大指導者と、その下に位置する教皇を除いた十一人の『十二使徒』。そしてイタリアの上級貴族による会合だ。
かつては十二使徒と貴族は対等な関係にあったが、時を追うごとに貴族たちの力は弱体化し、人々の信仰を集める教皇の方が力を持つようになる。結果、政はそのほとんどを『聖教』をまとめる『教会』が行っていた。
しかし、貴族が潰えたわけではなく、また、その歴史的な背景からもEUにおいては最も身分差別――特に、出自がその生活に深く影響する国となっていた。
イタリア人の人生とは、その出生に左右される。
他の国が皮肉を込めて口にしたその言葉が、そのままイタリアという国の形を示していた。
その中心にある都市、『ヴァチカン』。『聖教』の総本山であるその都市――否、国にある『大聖堂』に、二つの足音が響いていた。
「……大佐、何で俺まで付いていかにゃならんのです?」
呟くように言ったのは、青のかかった黒髪の青年だった。ソラ・ヤナギ。一部では『天才』と謳われ、しかし、その実力には見合わない位置にいる人物だ。
「ドクターが向こうにいる以上、お前しか例の計画について上へは伝えられないだろう」
それに不機嫌そうな表情で応じたのは、紅蓮の長髪を持つ男――朱里・アスリエル。《赤獅子》と謳われ、聖教イタリア宗主国最強の奏者と謳われる人物だ。
その二人は大聖堂の中を歩きながら、どこかつまらなさそうに会話をしている。
「そうは言っても、報告書はすでに送ってますし。今更、こっちから伝えることなんてないですよ」
「……俺たちがこっちへ戻された件と、レオーネ部隊の件。伝える事は山とあると思うが?」
「あー、そういえばそうでしたねー」
「相変わらず、やる気の見えん男だな。……それと、二人しかいないんだ。敬語は必要ない。元々お前は俺の上官だろう」
「いやいや、人目はなくても機械の目はあるんですよこれが」
苦笑しながら、ソラはチラリと周囲へ視線を送った。無駄だと思えるくらいに広い廊下――そこに飾られる絵画や陶器の中に、キラリと光るものがある。
監視カメラ――音声も拾えるものであるはずだ。ここは聖教イタリア宗主国の実質的な王がいる場所であり、世界最大宗派である『聖教』のトップがいる場所だ。警備は厳重である。
――しかも、EU首脳会議も近いしな……。
ヨーロピアン連合、EU。そこに加盟する国々の代表、もしくはその権限を預かる者によって行われる会議だ。今回の主題は毎度のことである貿易の条約についてと、おそらく――叛乱軍のこと。
シベリア連邦から得られる資源は、EUにしてみれば相当な利益になるものだ。それを手放すわけにはいかないし、また、叛乱軍を長く放置すると他国の介入を許すことになる。中華帝国や、合衆国アメリカ。ガリア連合に、EUとシベリアの間にある永世中立国、エトルリア公国。挙げればキリがない。
人と人――個人の争いであるならば、どちらかが諦めればそれで決着が着く。集団でもそうだ。
しかし、国同士ではそうもいかない。
どちらかが滅びるまで、それこそさまざまな手を使って潰し合う。最近になってようやく、両方が勝利する――『WIN―WIN』の概念が誕生してきたが、浸透するには時間がかかるだろう。
だって。
互いが互いを思いやることができるなら……二年前の大戦が、起こることさえなかったはずなのだから。
「……ま、いいか。中尉のこともあるし」
「アリス・クラフトマンか。確か、お前たちのところに泊めているんだったな?……シベリア人を招き入れたこと、どう説明するつもりだ?」
「メリットの説明をするしかないでしょうね。ま、どうにかできますよ。……あー、面倒くさい」
「平然と『どうにかできる』と言い切れるお前が凄いと俺は思うがな」
「誰にだってできますよ、こんなこと」
欠伸を噛み殺しつつ、ソラは言う。そう、誰にでもできることだ。それを自分は多少応用して、確実性を上げているに過ぎない。
天才と人は自分のことをそう呼ぶが、本当に自分が天才ならばこんな場所にはいない。
守りたかったものを全て守り切り、笑っていたはずなのだから。
「さて、それじゃあ一つ、やってみましょう――って、あれ?」
「どうした?」
「あそこにいるのって、スーさん?」
「スーさん……?」
朱里が首を傾げ、ソラと同じ方向へと視線を向ける。そこには、銀髪の青年が腕を組んで壁に寄りかかっていた。
目を閉じ、何かを考え込むように腕を組んでいる青年。不意に、その目が開いた。
「ん……? お前たちは」
「スーさん久々~」
「……貴様、その呼び方はリィラの真似か? やめろと言ったはずだが」
「スーさんとは、スヴェンのことか。成程、確かに久し振りだな」
「お前も元気そうだな、朱里」
歩み出てきた朱里に対し、青年――スヴェン・ランペルージは手を差し出した。朱里もそれに応じ、二人は軽い笑みを交わす。
「ここへは久し振りに来たが、相変わらず落ち着かない場所だ」
「それは仕方ないだろうな。そもそも、お前はドイツの人間だろう? 何故ここにいる?」
「首脳会議のためだ。護衛だよ」
「……ってことは、マユマユが来てんのか?」
首を傾げつつ、ソラが問いかける。スヴェンが半目で口を開いた。
「人の妹を妙な名で呼ぶな」
「まま、それはともかく」
「有耶無耶にするな」
「いーからいーから」
「良くない」
「……二人共、話が進まんぞ」
「ふん」
「で、ドイツの代表ってマユマユだけか?」
「だからその呼び方を止めろ。……マユだけじゃない。他にも三人、ドイツからは貴族が来ている。その護衛がそれぞれ一小隊ずつで四小隊がヴァチカンへ入っていることになるな」
「ふーん」
特に感情も込めず、ソラは頷く。首脳会議は三日後だ。ドイツからは四人の代表。おそらく、他の国の者たちも集まってきているのだろう。
だがまあ、首脳会議などソラにしてみればどうでもいいことだ。遠すぎて、想像もできない。
「……で、そのスーさんは護衛もせずにどうしてこんなとこに?」
「スーさんというのをやめろ」
「じゃあ、スーちゃん?」
「……鉛玉をぶち込まれたいようだな」
「冗談が通じないねー。そう思いません、大佐?」
「俺に振るな」
「どうしてこう、俺の周囲には無愛想なのしかいないんだか」
肩を竦める。そのまま、それで、とソラはスヴェンへと視線を向けた。
「それで、どうしてこんなとこに?」
「言ったはずだ。護衛だよ、マユのな」
「……ああ、成程」
呟く。そして。
「――相変わらず、妹バカだなおい」
言い切った。スヴェンが鼻を鳴らす。
「妹を守るのは兄の役目だ」
「その通りだな」
「……そういや大佐も妹バカだったな」
ため息。その横で、スヴェンが第一、と呟くように言った。
「こっちにはそれなりの事情がある。自分たちのことは自分で守るしかない」
「……相変わらず、親父さんとは疎遠みたいだねー」
「あんな男、父などと思ったことはない」
「左様で」
吐き捨てるようなスヴェンの言葉に、ソラは肩を竦める。そうしてから、それでも、と呟いた。
「クズみたいな男でも親がいるのと、そもそもから親がいないのなら……どっちがマシなんだろうな?」
「どうした?」
「何でも~。……で、マユちゃんはやっぱりあれか?」
「もう貴様の呼び方に反応するのは疲れた。……そうだ、マユは個人的な交渉を行っている。こういう機会は中々ないからな。各国の首脳が集まるようなことは」
「相変わらずのようだな、お前の妹も」
「ああ。……未だに、変わらずにいる」
どこか寂しげに言うスヴェン。ソラは、ふーん、と呟きに似た吐息を零した。
「でもあれだな。スーちゃんの様子からすりゃ、上手くいってはないみたいだけど?」
「いきなり好転するようなことでもないからな。……地道にやるしかない」
「上手くいくと思ってる? あんなのが?」
「俺が信じてやらず、誰が信じてやるんだ?」
ソラの言葉に対し、睨み付けるようにしながらスヴェンが言った。その様子を見て、やれやれとソラがため息を吐く。
「ま、いいけどねー。どうでも。……んじゃ、また。機会があれば」
「そうだな。また会おう、スヴェン」
「ああ。……シベリアのことは聞いている。無理をするなよ」
「忠告どーも」
「肝に銘じておく」
頷き、二人はスヴェンに背を向けて歩いていく。しばらくしてから、ソラが朱里へと声をかけた。
「平和ねぇ……そんなことされちゃ、こっちは商売あがったりなんですけどねー」
「スヴェンの妹、名前は確かマユ……だったか?」
「世界平和を謳ってる甘ちゃんですよ~、っと。あんなもん、幻想だっていうのに」
「幻想か」
「幻想であり、理想。誰もが仲良く手を取り合って、争わないで済むなんて……できるはずがない」
どこか吐き捨てるように、ソラは言う。
世界平和。平穏。そんなものは幻想だ。人類が生まれてから、どれだけの月日が経った? その歴史において平和などという戯言が達成できたことなど、一度もない。
「争わなくなるのは結構ですけどね。それだと人類は滅びます。それはそれで最悪だ」
「争いでも滅びるだろう?」
「いやいや、そんなことはありませんよ。争いで人類が滅びることなど、まずあり得ない」
肩を竦める。争いで滅びるほど、人類というのは弱くない。争いの歴史がそれを証明している。世界中を巻き込んだ大戦でさえ、人類は滅びなかったのだ。今更滅びることなどないだろう。
それに、だ。
人類が万物の霊長などと思い上がる理由となった『文明』という力は、その争いの中で培われたものである。
「争わなければ、強くなれない。競わなければ、高められない。誰だって知ってますよ、そんなこと」
「その争いで、人を殺すことになるのにか?」
「殺さなければいいんですか?」
立ち止まり、ソラは朱里へと視線を向けた。その瞳は、異様なくらいに冷え切っている。
「スポーツで負けた相手はどうなります? 下手をすれば、その先の人生を勝者に奪われます。敗者という惨めな人生を享受しろと?」
「だが、スポーツは必ず一番にならなければならないわけでもないだろう?」
「俺が言ってるのは、もっと下ですよ。頂点に挑めた人間は幸福です。しかし、一生を懸ける気持ちで努力して、それでも底辺にいる人間は? 日の目を見ることもなく、頂点の人間に見向きもせずに踏み躙られた人間は、殺されたと言っても差し支えはないのでは?」
人生を奪うという点において、殺すこともその者が一生を懸けてやってきたことを踏み躙るのも同義だ。更に言えば、殺すという行為の方がその場で終わらせてやれる分、救いがあるとさえ思う。
全てを懸けたものを奪われ、それでも生きていかなければならない者は――本当に、地獄だろう。
「くだらねぇ。何が平和だ。そんなもんで誰が守れんだよ」
「……まあ、平和がどうというのはともかく、争いがなければ俺たちは飯さえ食えなくなるというのは事実だな。特に俺はこれしか能がない」
「大佐なら他の仕事もアリだと思いますけどねー」
「それを言うなら、お前もだろう。お前こそ軍人以外に職を見つけるのは容易かったはずだ」
「いやー、あはは。……俺、親なしの孤児ですから」
苦笑を零し、ソラは言う。
「この国で親なしのスラム生まれのクソガキが生き残るには、軍人くらいしかないんですよ。……争いがなければ、こっちは商売あがったりだ」
大聖堂の最奥。イタリアの頂点、そして『聖教』のトップが待つ部屋の前で。
呟くように、ソラは言う。
「……上から見下して謳う平和や救いなんざ、願い下げなんだよ」
扉を開ける。
その瞳は、冷え切ったままだった。
◇ ◇ ◇
「え、えっと、あ、アリスです。よろしくお願いします」
第一声は、そんな挨拶だった。頭を下げ、反応を待つ。
……静かだ。不気味なくらい。
失敗したのだろうか、と不安に思う。隣にいるリィラに助けを求めたくなる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう――そんな単語だけが脳裏を駆け巡る。
――その時。
「よろしく」
声が聞こえた。顔を上げる。するとそこに見えたのは、子供たちの笑顔。
「よろしく!」
「よろしくー!」
「アリスお姉ちゃんって呼んでいい!?」
年の頃は、五歳から十歳ぐらいか。世間一般における子供と呼ばれる者たちが、一斉にこちらへと群がってくる。
「え、えっと、あの……」
「わ、アリスお姉ちゃん凄く綺麗な髪の毛!」
「いい匂いする~!」
「ホラホラ、皆落ち着かなアカンよ?」
もみくちゃにされたアリスを助けるため、手を叩いてリィラがそれを制した。子供たちが、えーっ、と声を上げる。
「いいでしょリィラおば――」
「あァ?」
「――お姉ちゃん」
一瞬、リィラの背後に鬼が見えた気がしたが……アリスは気にしないことにした。多分、知らない方がいいことというのは山とある。
「中尉……っと、ええと、アリスって呼んでもええですか?」
「うん。敬語もいらないよ?」
「ん、わかった。ホラ、皆。アリスお姉ちゃんは疲れとるんや。休ませたげなアカン――って、ロイとベルはどこにおるん? ここにはいーひんみたいやけど――」
「リィラお姉ちゃん! ロイくんとベルちゃんが喧嘩してる!」
「ああもう! 久し振りやゆーのに成長してへんなあのアホ!」
声を上げた女の子の言葉に応じるように、リィラが全力で走り出す。それを呆然と見送っていると、アリスに纏わりついていた子供のうちの一人が、こちらの手を引いた。
手を引かれるままに建物の中へと入り、リィラが入っていった部屋へと入る。そこでは、リィラが一人の男の子を叱り飛ばしていた。
「コラ、ロイ! 何度もゆーとるやろ! 自分はお兄ちゃんなんやから、ベルのこと守ったらなアカンよ!」
「…………」
「聞いとるんか!?」
怒声に、ビクッ、とアリスは思わず体を震わせた。視線の先、散らかった部屋ではブスッとした表情の男の子と、嗚咽を漏らす女の子がいる。どうやら、男の子の方がロイ。女の子の方がベルというらしい。
「で、今回は何が原因なんや?」
「…………」
「黙ってたらわからへんやろ?」
リィラが問いかけるが、ロイは黙り込んでいるだけだ。アリスの側にいる子供たちは、不安そうに黙り込んでいる。
その様子を見て、不意にアリスは疑問を感じた。
……あの子。
パッと見ただけでは、ただふてくされているだけのように見える。しかし、あれはそうじゃない。
「エレンさんにも迷惑かけてるみたいやんか。ホンマにもー……。ロイはお兄ちゃんなんやから――」
「…………ッ!!」
リィラの言葉に、拳を強く握り締めるロイ。その姿を見て。
「待って!」
思わず、アリスは叫んでいた。全員の視線がこちらを向く。一瞬、そのせいか心臓が高鳴ったが……それを無視して、アリスは歩き出す。
ロイという少年が、こちらを見ていた。アリスは膝を折り、目線を合わせると、小さく微笑む。
「……寂しかったんだよね?」
「…………ッ!?」
ロイが目を見開いた。構わず、アリスは続ける。
「お兄ちゃんだから、って見てもらえなくて。寂しかったんだよね?」
大丈夫だよ、とアリスは言った。
「私が見てるよ」
そう言って、抱き締める。抵抗されると思ったが――ロイは、抵抗することなくされるがままになっていた。
小さな、体だ。
「…………ッ」
抱き締めた小さな体。その体を震わせ、少年は涙を零す。
声を出さないのは、男の子としての抵抗か。
アリスは、ただ優しくその小さな体を抱き締めていた。
◇ ◇ ◇
夜。夕食の準備をしながら、リィラはアリスに謝っていた。
「本当にごめんな~。見苦しいとこ、見せてしもて」
「ううん。私も、勝手にやっちゃったし」
今日はアリスがいるということで、外気の寒さも考えたシベリア料理だ。ボルシチという、シベリアではメジャーな料理である。リィラも向こうで食べたことがあった。
一応、ソラが夜には帰ってくるという話なのだが……まあ、食欲旺盛な子供たちの事を考えれば、早めに夕食を作っておくべきだろう。
「……少し、気持ちがわかったから」
「気持ち?」
アリスの言葉に、リィラは首を傾げる。アリスは頷いた。
「統治軍で、私、独りだったから。……最初の頃はね、憎悪とか嫌悪とか、そんな感情さえも向けてもらえなかった」
ドクン、とリィラの心臓が高鳴った。好きという感情の逆は嫌いではない。無関心だ。
人は、嫌われるよりも――見てもらえない方が、ずっと辛い。
「だから、かな。少しだけ、わかったんだと思う」
呟くような言葉。苦笑するアリス。
何を言うべきなのか、リィラは迷い。
そして――言った。
「……あの子ら、な。戦災孤児なんよ」
「えっ?」
「アリスも知ってるやろ? 二年前、シベリアで起こった『アルツフェムの虐殺』……あれで親を亡くした子らなんよ、ここにいるんは」
シベリア連邦最大の敗北――いや、大戦における最悪の戦い。大日本帝国軍の神将騎によって、万を数える者たちが殺されたその戦いの、戦災孤児。
「ここにいるんは、当時隊長が――ソラが預かってた部隊の人たちの子供なんよ。朱里――ちゃうな、アスリエル大佐とソラしか、あの戦いから生き残ることはできひんかった」
「リィラさんは……」
「ウチは、当時はフランスの外人部隊におったから。ウチ、ガリア連合の出身なんよ。色んな国の血を引いてて、自分でも何人なんかはよーわからへん。居場所なんてあらへんかったし、できるとも思えへんかった。どこの国の人間でもない、ごった煮ハーフ……人は、寄りついてこんかった」
世間において、ハーフというのは未だに広く受け入れられていない。国を渡るということ自体が自然ではないと思われているからだ。更に、ガリア連合の出身となればより一層、風当たりは強くなる。
ガリア連合――アフリカとも呼ばれるその地域は、古くからヨーロピアンの地域や、様々な国から侵略を受けてきた歴史がある。『蛮族』とも呼ばれ、全体的に高い身体能力を持つ黒き肌の住民たちは、長く『奴隷』という不当な扱いを受けてきた。
そんな歴史を持つガリア地域は元々、多くの小国が勢力争いをしていた地域であったが、外の脅威に対抗するために『ガリア連合』という形で手を組んだ地域である。奇しくも、シベリア連邦の脅威に対抗するために生まれたEUのように。
そのガリア連合の出身、正直風当たりは厳しかった。だからこそ、アリス・クラフトマンという女性に対して近付こうとも思ったのだ。
似ていると、思ったから。
「それでもまぁ、生きていくことはできたから。どうにでもなるやろー、って思ってた。でも、あの日、ソラに救われて、救ってもらって。……あの人が背負おうとしたものを、一緒に背負えたらって」
思い出すのは、僅かに残った百人の兵士の最後尾で無茶苦茶に壊されたアルツフェムを見つめていたその背中。
あの日の敗戦について、彼は明確に何かを言ったことはない。弱かったから、凡人だったから守れなかった――そう口にするだけで、それ以上は口にしない。
ソラ・ヤナギはあの日失った人たちだけを見ている。
彼が救い、そして守り続けている者たちのことを見ていない。
まるで――幸福になることを拒否するように、彼は前を見ようとしない。
「この孤児院もな、アルツフェムの虐殺の後に建てたんよ。……ソラの部下の人たち、凄いいい人たちだったらしくて。救えなかった償いをしたいって、施設に入れられるはずやったんを全部預かって……ウチも、手伝って」
「…………」
「あの子らな、最初の頃、ずっと泣いてたんよ。当たり前や。親を失ったんやしな。……助けたいって、ウチ、そう思って……」
スープを煮込むため、蓋をする。そのまま、リィラは椅子に座った。ここからは待つ時間だ。アリスも椅子に座る。
「……アカンなぁ、ウチ」
くしゃりと、髪を掻き揚げる。俯き、唇を噛む。
自分は――何をしているのだろうか。
「しっかり育てなアカンって、そう思って。……あの子の気持ち、考えてへんかった。あはは、やっぱりアカンわ。育てられたこともないくせに、どうやって育てるつもりやったんやろ、ウチ……」
育てようと思った。ソラが背負ったものを一緒に背負うために、押しかけるようにしてここへ来て、そして、あの子たちに接してきて。
甘やかしてはいけない。そう思って……。
「……思い上がってた、なぁ」
どうして、できると思ったのか。
育てられた記憶さえもない――孤児のくせに。
涙が、溢れ――
「そんなことない」
零れ落ちそうになった涙。それを、その言葉が押し留めた。
「ほら、リィラ。あそこ」
視線で示された方を見る。そこには。
「ロイ……? ベルも……?」
二人の兄妹がいた。兄であるロイが、妹であるベルの手を引いている。
「……ごめんなさい」
ロイが、こちらへと頭を下げた。リィラは驚きで目を見開き、そちらを見る。
「ごめんなさい、リィラお姉ちゃん」
「ごめんなさい」
二人が、こちらへと頭を下げてくる。リィラは立ち上がると、二人を思い切り抱きしめた。
「ウチこそ、ごめんな。……ありがとうな」
母親、というものがどんなものか、リィラにはわからない。
リィラが物心ついた時には、ガリア連合の森の中にいた。その中で、生きることだけを考え続けていて、そうして――ここへ辿り着いた。
まだまだ、足りない部分も多いと思う。それでも。
いつか、きっと。
――あの人と、共に。
◇ ◇ ◇
大聖堂の最奥、謁見の間。そこで、ソラ・ヤナギと朱里・アスリエルは十二人の老人と向かい合っていた。
聖教イタリア宗主国を実質的に支配する、聖教最大指導者――教皇。
その下に付き、十二の聖人の名を冠する十一人の老人――十二使徒。
囲まれるようなその状況では、大抵の者は圧迫感のようなものを覚える。しかし、ソラ・ヤナギという青年はつまらなさそうにぼんやりと中空を見ているだけだ。
隣の朱里は言葉を発する気はないらしく、目を閉じてまでいる。完全に報告をこちらへと押し付ける気だろう。
ふう、とソラは息を吐いた。それを合図としたように、十二使徒から声が挙がる。
「まずは、弁明を聞こう」
「弁明?」
「とぼけるな。我らがイタリア軍、最強のレオーネ部隊……それを招集していながら何の結果も残さず、それどころかおめおめと敗走してくるとは」
言われながら、ああ、とソラは思った。この老人たちにはそこから説明しなければならないらしい。
さて、とソラは内心で言葉を作った。必要なのは状況の整理だ。
……敗北を正当化すんのか。面倒だねぇ。
この老人たちが気にしているのは、要するに面子だ。朱里・アスリエル率いるレオーネ隊は前大戦において名を馳せた部隊である。それが破られた事実についての釈明を要求しているのだ。
本当に厄介な話だ。昔に通用したからといって、今も通用するとは限らない。それぐらい普通だ。
まあ、確かにああもあっさりやられたのは予定外だったが、それはあくまで『予定外』に過ぎない。『予想外』ではないのだ。
チラリと視線を朱里へと送る。……変わらず、無言で目を閉じていた。
助ける気なしかよ、と思ったが仕方ない。朱里は昔からこういったことが苦手だ。無理強いさせてふざけた結果になったらどうしようもない。
「まず、敗北の件ですが。……あれは想定内の出来事でした」
――ざわっ。
ざわめきが広がった。朱里も自分の物言いに興味を抱いたのか、こちらへと視線を向けている。
「どういうことだ? 敗北が予測通りだったということか?」
問いかけ。それに対し、ソラは首を左右に振る。
「いいえ。最良の結果は、レオーネ部隊が叛乱軍へ打撃を与えることでした。しかし、自分は端くれとはいえ指揮官です。故に、常に最悪のケースは想定しています」
「ほう。ならば、この結果は最悪のケースとやらか?」
「違います。最悪からは程遠いものです」
言ってのける。
「最悪の状況は、ここにいる大佐が戦死し、同時に№Ⅵ――ヒスイが戦死し、統治軍における発言権と我々の『計画』における成果が失われることです」
「だが、敗北したのは事実だ。違うか?」
「敗北の事実は変わりません。しかし、これを好機と捉えることは可能です」
「……何だと?」
十二使徒の一人が眉をひそめた。ソラは両手を広げ、身振りを大げさにしながら言葉を紡ぐ。
「我々の敗北により、統治軍においてイタリア軍は『弱い』という印象が生まれました。それを利用するにあたって、方法が二つあると私は思います」
「申してみろ」
「はい。まず、一つ目ですが。これは我が軍の兵力を温存する方法です。『弱い』という印象を利用し、イタリア兵を下げさせます。この先、統治軍は叛乱軍との衝突によって少なくない損害を被るでしょう。アスリエル大佐が率いる部隊が撃退された程です。その実力は侮っていいものではありません。
その戦いにおいて我が国を疲弊させないために、『弱い』という理由を隠れ蓑に後方支援に徹するのです。そうすれば、損害は抑えられます」
「ほう、成程」
「それは、確かに手であるな」
老人たちが口々に言う。ソラは、よし、と内心で呟いた。
教皇がこちらを見る。こちらの内心を見透かすような目。それを受けながら、ソラはもう一つ、と言葉を紡いだ。
「二つ目は、数を補強するという方法です。統治軍はイギリス・ドイツの兵が七割近くを占めています。今回の敗北を理由に増援を施せば、統治軍における勢力争いに食い込むことができます」
「成程、増援か。しかし、大尉。増援に利益は見れるか?」
「見れます」
即座に頷く。ここで言い淀めば、相手に不信を与えてしまう。ここは自身を持って押さなければならない。
「統治軍の資金は、EUの――引いては、EU各国から集められた税金です。それを使って装備が整えられます。今までは、目立った作戦も少なく、資金が大きく動くようなこともありませんでしたが……叛乱軍が出てきた以上、大きく資金が動きます」
「どういうことだ?」
「兵器にかかる資金のインフレ具合は異常です。統治軍はイギリス・ドイツの兵が七割を超える……つまり、軍備のために使われる資金の七割はその二国へ消えるのです。……ここまで言えば、わかるはず」
「――――!!」
場の空気がざわめく。まさか、とか、そんなことが、といった声が聞こえるが……正直、何を今更とソラは思う。
戦争特需、という言葉がある。大戦の前も、中東や東南アジア地域の紛争に物資を回すことで金を得ていたわけだし、それをシベリアでやるというだけだ。
「我が国の軍事力の維持のためならば前者。我が国の経済のためならば後者。以上が、私から申すことのできる提案です」
頭を下げる。そうすると、ゴホン、という声が響いてきた。教皇だ。
「成程。それについては検討しておく。……お前たちに下す処分については、今回は無しだ」
「ありがとうございます」
ソラは頭を下げる。その隣では、朱里も頭を下げていた。
顔を上げる。すると、それでは、と教皇が言葉を紡いだ。
「もう一つの件だ。……何故、シベリア人の奏者を我が国へ招き入れた」
――来た。
ソラは内心で呟いた。アリス・クラフトマン――ソラと朱里は、彼女をイタリアへと呼ぶことをほとんど独断で決定した。理由は様々だが、一番大きな理由は彼女を一人で残すのはマズいというのが大きい。
今まではソラという存在が防波堤になっていたし、多くの要因が彼女の立場はともかく身を守ってはいた。しかし、一人になればどんな目に遭うことになるかわからない。
だが、それを説明しても通じないだろう。
となると――
「例の『計画』のためです」
ソラは、言葉を紡いだ。
「『計画』だと?」
「はい。アリス・クラフトマン中尉は例の強化法を実践している人物です。その経過観察を行うことは、『計画』においては重要事項かと」
「ほう」
「中尉はあくまでシベリア人です。……我が国の奏者を使えない以上、モルモットとしては丁度いいと判断しています」
心にもないことを口にする。冷静な判断ならば、アリス・クラフトマンという存在を使った実験には意味がある。意味があるが……感情がそれを認めない。
もっとも、ソラ・ヤナギという青年は感情を理性で押さえつけてしまうのだが。
「……わかった。下がれ」
「はい」
教皇の言葉に応じ、跪く。少々強引な話の進め方だったが、まあいいだろう。
とりあえず、これでお咎めは無しだ。後は向こうに戻るまでの間、やるべきことをやっておくだけ。
「大尉の言については、検討しておく。……アスリエル大佐。貴様には首脳会議で護衛任務に就いてもらう。待機していろ」
「はっ」
朱里が敬礼を返す。それを認めながら、ソラも敬礼をした。
「全ては、神の御心のままに」
『――全ては、神の御心のままに』
教皇と十二使徒が唱和する。この言葉が出るということは、閉幕ということだ。彼らも忙しい身である。おそらく、この場で処断を下すつもりはなかったのだろう。下すなら下すで、後日というところか。
だが、そんなことはどうでもいい。ソラにとっては、それよりも。
神などという偶像を崇める事実こそが。
「…………くだらねぇ」
吐息のような呟きは。
彼の耳にさえ、届かない。
◇ ◇ ◇
「ただいま~」
「おかえり~」
「おかえりなさい」
自身が建てた孤児院のドアを開けると、そんな声が届いた。見れば、台所にある机にリィラとアリスが座っている。ソラはその二人を確認すると、周囲を見回し、首を傾げた。
「あれ? ガキ共は?」
「もう寝とるよ。……何時やと思うてるん?」
「23時」
「わかっとるんやんか」
半目で言うアリスに、ひらひらと手を振って応じる。思ったよりも戻ってくるのに時間がかかった。まあ、『ヴァチカン』はここからは距離があるし、当然なのだが。
「で、俺の飯は?」
「あらへんよ」
「ハァ!? 何でねぇんだ――」
「あァ?」
「――ないんでしょうか?」
一瞬で敬語に切り替える。この孤児院――最早ソラにとっては『家』と呼んで差支えない場所なのだが、ここにおけるソラの立場はリィラより下だ。
……尻に敷かれているとか言わないでもらおうか。
「あの、その、す、すみません」
こちらが下手に出ていると、不意にアリスが頭を下げてきた。ソラは再び首を傾げることになる。
「何でアリスが謝るんだ?」
「その、今日、料理を作ったのは私で……、どれぐらい作ればいいかわからなくて……」
「あー、ちゃうちゃう。アリスのせいやないよ。ウチの欠食児童のせい」
「……何か仲良くなってないか?」
「うふふ~♪ 仲良くなっちゃいましたっ♪」
「ひゃうっ!? り、リィラ!?」
「アリス驚いてんじゃねーか。……で、ウチの欠食児童共がどうした?」
「ああ、アリスの作ったご飯が美味し過ぎて、全部食べてしもたんよ」
「……なーる」
納得する。ここにいるのは育ち盛りの子供ばかりだ。アリスが作ったということは、おそらくシベリアの家庭料理か何かだろう。物珍しい上に美味いとくれば、子供たちは喜んで食べるはずだ。
「というわけで、何もなしやね」
「す、すみません……」
「いや、アリスが謝ることでもないだろーよ」
「あれ? ウチにはコメントなし?」
当然だ。言うと調子に乗る。
「にしても、今日何も食ってないから腹減ってんだよなー……」
椅子にもたれかかりながら、小さくぼやく。結構朝早くからリィラとアリスの二人と別れてヴァチカンに入り、その後も朱里と共に多くの手続きを済ませてきたのだ。飯を食う暇はなかった。
特に、こちらへ戻っている間は休みを――少なくともリィラとアリスには――とるつもりだったので、その申請も手間取った。担当のオッサンが知り合いだったおかげで上手く二人の分は取れたが、自分は何日か顔を出すことになってしまったのだが……まあ、それはいい。サボるのはどうとでもなる。
第一、今の問題は腹だ。あまりに減り過ぎて鳴ることさえもしない。
ふう、というため息が聞こえた。リィラが立ち上がり、エプロンを着ける。
「ホンマに、戦場ではあんなに恰好ええくせに手間かかる人やなぁ」
「お、作ってくれんの?」
「喚かれても嫌やし」
「サンキュ」
「どういたしまして」
軽い言葉の応酬。それを黙って見ていたアリスが、あのっ、と声を上げた。
「私も、何か作りましょうか……?」
「ああ、ええよアリス。こんな、美人二人を放っといて夜遊びしとる阿呆にそこまでする必要はあらへん」
「は? 美人二人? アリス以外の美人がどこにいる?」
「……目ん玉くり抜いて洗わなわからんか?」
「リィラ。今日も綺麗だぞ」
「ややなぁ、そんなわかり切ったこと♪」
「…………何かムカつく」
「何か言った?」
「別に~」
「な、仲良いですね……」
二人の軽口の応酬についていけず、アリスが苦笑している。ソラは、んー、と首を捻った。
「『アルツフェムの虐殺』の後、俺は何でか後方に……ってか、本国に戻されてな。大戦の末期は前線に出ることもなかったんだよ。まあ、負けたわけだし、当然なのかもしんねーけど」
「そう、なんですか?」
「おう。ま、その時にここをおっ建てて、リィラが転がり込んできて……まあ、色々あって統治軍に配属された。それなりに満足した生活はしてるよ」
「こんな美人と一つ屋根の下で、不満なんてあらへんやろ?」
「だから美人なんてどこに――」
「頭蓋に穴開けて脳みそに叩き込んだろか?」
「……ごめんなさい」
目が笑ってない。怖すぎる。
「ま、まあとにかく、リィラとはあのガキ共の世話で色々と苦労してるしな。息も合うんだよ」
「こんなこと言うてるけど、この人なんも手伝ってくれへんのやで? 酷い人やろ?」
「遊んでやってっし金も稼いでんだろーが」
「あはは……お父さんみたいですね」
アリスが苦笑する。その言葉を受け、ソラは一瞬、ほんの一瞬だけ笑顔を消した。
しかし、すぐさま苦笑を浮かべると、どうかね、と呟く。
「あいつらさ、両親がいないんだよ。……俺は、アイツらの親に生かされた。アルツフェムで死ぬはずだった俺を、命懸けで生かしてくれた人たちだ。俺みたいなぽっと出の若造の下で笑ってくれた、本当に尊敬できる人たちだった。だから、少しでも恩返しがしたくてな」
「……リィラに聞きました。生き残ったのは、隊長と……大佐だけだったって」
「大佐……朱里でいいか。軍じゃねーし。何気にアイツ同期だし。……アイツはアイツで、俺とは別の場所で戦ってたんだがな。『金色の神将騎』――知ってるか?」
「噂くらいは……。確か、大日本帝国の《七神将》の一人、ですよね?」
「《女帝》とか呼ばれとる奴やね。確か……い、い……」
「出木天音だ」
「それや!」
リィラが声を上げる。ソラはため息を零しながら呟いた。
「アルビナさんの情報にあっただろうが」
「アルビナ……?」
「ん? ああ、アリスは知らなかったな。馴染みの情報屋だ。その情報屋によると、出木天音っていう二年前に《七神将》として暴れ回った女が叛乱軍にいるんだと」
「……叛乱軍に?」
アリスが眉をひそめる。その様子にはどこか違和感があったが、まあ気にしないことにした。したところでどうにもならない。
「そんな人が……」
「まあ、気にすんな。どの道俺たちは二週間、こっちで過ごす。そのうち相対することもあるだろうが、それだって《女帝》が出てくるかってーとそうでもなさそうだし。〈毘沙門天〉……あの神将騎の乗り手は、護・アストラーデとかいう男だ。どちらかといえば――」
「――――ッ!?」
ガタッ、という音が響き、椅子が倒れた。アリスが立ち上がった時の勢いで椅子が押されたのだ。
「アリス?」
リィラがこちらを振り返る。アリスはその言葉を聞くと、思い出したように首を振った。
「す、すみません! 何でもないんです、いきなりその、すみません!」
「いや、別にいいけど。……あれだ。疲れたんじゃないか?」
「アリス、ウチの子らとずっと遊んでくれてたしな」
「マジか? それは疲れただろ。もう休んどけ」
ひらひらと手を振り、寝るように促す。アリスは申し訳なさそうに頭を下げた。
「す、すみません……お先に失礼します」
「うん。ゆっくり休んどき」
「お疲れさん」
「はい」
頭を下げ、アリスが部屋を出ていく。それを見送ってから、ふん、とソラが鼻を鳴らした。
「前途多難だねぇ……。中尉の奴、何か言えない理由でも抱えてんのか?」
「どうしてそう思うん?」
「何かを隠してる。あの男……護・アストラーデ。レオーネ隊が負けた時、アリスは〈毘沙門天〉とやり合ってるはずだ。その時に何かあったのかもな」
かもしれない、ではない。確実に何かがあったはずだ。
もっとも、それでもアリスが裏切ることはないだろうという確信はある。あの日、ボロボロの体で帰還し、涙を流した彼女には覚悟があった。あの覚悟は嘘ではない。
「ま、大丈夫だろ。……つかな、リィラ?」
「ん、何?」
「…………メチャメチャ焦げてんだけど」
「…………よそ見してたから」
久々の『我が家』で食べた夕食は、ビックリするくらいに苦かった。
というわけで、ソラとリィラの二人が背負うものです。次回は朱里が背負うモノが出てくる予定です。
どんな人間にも、良くも悪くも戦うだけの理由があります。子供たちの笑顔を守るため――育てられたことのない彼らが育てるそれは、きっと温かなものでしょう。
今回登場しましたスヴェン・ランペルージとマユ・ランペルージは、勠b先生に考えて頂きました。
ありがとうございます!!
というわけで、次回は後編。朱里・アスリエルの『理由』とアリスには『出会い』が待っています。
ここを越えると、シベリア編はクライマックスが近付いてきます。楽しみにして頂けると幸いです。
感想、ご意見お待ちしております。
ありがとうございました!!