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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第2章

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第55話『混同』

朝、天秤座に寄る。


採取クエストの進捗確認だ。掲示板の前に立つと、受付が先に声をかけてくる。


「緑の雫の方ですね。昨日から三件、素材の納品がありました」


受付窓口で受け取り、シロクサ・ハコネソウ・イヤシゴケを束ごと確認する。量は合っていて質もいい。


「追加発注を出したい。同じ条件で、同じ量をもう一件立てる」


「掲示料は大銅貨五枚になります」


払う。


店に戻る途中で計算する。今日の納品分で三日分は賄えるが、フィアが毎日仕込むようになれば追いつかなくなる——クエストは常に出し続ける必要がある。


---


第三鐘、ガッシュたちが来た。


三人とも採取帰りの格好だ。ガッシュが袋をカウンターに置く。


「シロクサ四十枚、ハコネソウ二十五枚、イヤシゴケ三十グラム。確認してくれ」


受け取ると量は合っていて、ハコネソウが特に厚い。


「質がいい」


「ミーナが張り切ってる」とガッシュが短く言う。ミーナが「当たり前でしょ」と返す。


帳簿に記録して素材代を払う。


ガッシュがカウンターに手を置いたまま、少し間を置く。


「一つ話がある」


「聞く」


「ギルドで噂になってる。淡く濁ったポーションを買ったのに全然効かなかった、って言ってる冒険者が何人かいる。お前のところのポーションがそうかは分からないが、名前が出ていた」


「緑の雫という名前が」


「それははっきりしない。ただ淡く濁ったという特徴だけで、お前のところのものと思っている奴がいる」


(来た)


「分かった。助かる」


「気をつけろよ」とガッシュが言う。テオが頷く。三人が出ていく。


---


その後、調合室に入って仕込みの様子を確認する。


フィアが石臼を動かしていてリズムが安定し、ソルが濾過室で布を扱う音からして速度も落ち着いてきた。充填作業員の二人が充填室で瓶を並べている。


(動いている)


ただ、棚を見ると昼前の時点でまだ余っている。先週の同じ時間には半分以上出ていた。


客足が落ちている。原因は分かる——噂だ。


---


午後、天秤座から使いが来た。


「至急、担当者とお話ししたいとのことです」


受付に向かうと、担当者が別室に案内する。


「お呼びしたのは、当ギルドに苦情が複数入っているためです」


「内容は」


「購入したポーションが全く効果を示さなかった、という申告です。今のところ四件。いずれも淡く濁ったポーションという特徴が一致しています」


担当者が帳簿を開く。


「販売者の申告に、緑の雫で製造されたものと聞いていたという証言が含まれています。当ギルドとしては事実確認の義務があります。現在、貴店で製造・販売した品に問題があると断定しているわけではありません」


「どこで買ったと言っていたか」


「それについては、申告者によって異なります。一件は南東区の店舗名、二件は路上での買い取り、一件は出所不明です」


「うちの店はまだ他店での販売はやっていない」


「それは承知しています。ただ証言の中で貴店の名前が出ている以上、確認しないわけにはいきません。品質管理の方針や製造記録があれば確認させていただけますか」


「帳簿はある。製造日と本数の記録はすべて残っている」


「確認させていただきます」


担当者が記録を取る。帳簿を持参する約束をして、席を立つ。


---


帰りの通りで頭を整理する。


南東区の店舗で出回っている、色だけ似せた粗悪品。


(うちの名前を使って売っている)


本物と偽物を混同させて評判を落とす——そういうやり方だ。


ただ証拠がない。天秤座への説明には帳簿だけでは足りないかもしれない。


---


夕方、店に駆け出しの若い男が入ってきた。革の装備が新しく、冒険者登録から間がない。


男が棚を一度見てから、カウンターに近づく。


「聞いてもいいですか」


「どうぞ」


「南東区の店で淡く濁ったポーションを買ったんですが、全然効かなかったんです。そこの店員に緑の雫で作ったものだって言われたので来たんですが」


「うちで作ったものではない」


男が少し黙る。


「本当に……違うんですか」


「確かだ。うちの製品は名前と販売場所を変えて売ることを許可していない。南東区の店とは取引関係がない」


男がもう一度棚を見る。


「これが本物ですか」


「そうだ。一本買って飲み比べてみてもいい」


男が少し考えて、淡く濁った初級ポーションを一本取る。硬貨を出す。


「飲んで違いが分かったら、天秤座に申告してほしい。品質の苦情として記録に残る」


男が頷いて出ていく。


(一件でも積み上がれば、記録になる)


---


夜、帳簿を確認する。


来店数が先日より減っている。数字がそれを示していて、問題が広がる前に手を打つ必要がある。


ただ今はリナがいない。天秤座への説明文書を作るには代筆が要る。


(リナが戻ったら、すぐに動く)


仕込みの音が続く。


---


【借金メモ・55話終了時点】

前話(54話)終了時:手元大銅貨五枚・残債大銀貨二枚と銀貨九枚と小銀貨五枚と大銅貨二枚

55話収入:初級ポーション(作澄:緑)フィア作20本(大銅貨八枚×二十=小銀貨十六枚)+初級ポーション(作淡濁:緑)ケイ作14本(大銅貨六枚×十四=小銀貨八枚と大銅貨四枚)=銀貨二枚と小銀貨四枚と大銅貨四枚

55話支出:天秤座掲示料(大銅貨五枚)+採取素材代(シロクサ40枚・ハコネソウ25枚・イヤシゴケ30g分)+従業員給与ミレイ・フィア・ソル・充填×2(小銀貨二枚)+食事分(大銅貨一枚)

残債充当:なし(手元銀貨二枚と小銀貨二枚と大銅貨八枚<返済条件の銀貨三枚)

ケイの手元:銀貨二枚と小銀貨二枚と大銅貨八枚(素材代・掲示料支払後)

残債:大銀貨二枚と銀貨九枚と小銀貨五枚と大銅貨二枚

---

【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 8本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作澄:緑) × 5本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大瓶3本(保管中)


素材類

 シロクサ乾燥葉 × 約140枚

 ハコネソウ生葉 × 約90枚

 イヤシゴケ乾燥粉 × 約100g


道具類

 調合道具一式(購入済み) × 石臼・土鍋・計量皿一式×2組

 保存瓶 × 約10本(残)

 大保存瓶 × 3本(保管中)


採用・勤務中

 販売員:ミレイ(女・20代前半)

 生産者A(加熱担当):フィア

 生産者B(濾過担当):ソル

 充填作業員×2


天秤座

 採取クエスト発行中×2(同条件)

 聴取済み(粗悪品の証言で緑の雫名義が含まれるため)


不在

 リナ:境界の森ダンジョン(数日・魔物よけキャンプ装備持参)


懸案

 南東区の店舗:模倣粗悪品が市場に流通中・天秤座への説明文書作成が必要(リナ帰還後)


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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!


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