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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第2章

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第50話『候補者探し』

朝、天秤座から使いが来る。


「販売員の募集について。本日時点で応募者はおりません」


それだけ伝えて帰っていく。


気にしない。販売員は急ぎではなく、今日の目的は別にある。


(店番は後でいい。問題は生産だ)


棚に淡く濁った初級ポーション五本と初級ポーション三本を並べて、店を出る。


---


錬金術師ギルドの扉を開けると、調合の匂いと煙の気配が混ざった空気が来る。


奥の作業場から中年の女が顔を出す。白い粉が爪の端についている、いつもの調合師だ。


受付に近い棚の前で、別の人間が道具を確かめている。見慣れない顔が一人だけではない。


「初級ポーションの生産補助を探している。工程の一部を任せられる者を紹介してほしい」


調合師が少し間を置いてから言う。


「最近、外から来た錬金術師が増えてる。腕はまちまちだけど、補助なら対応できる者はいる」


「紹介できるか」


「できる。ただ、契約の内容はあなたの責任で決めてください。ここは保証しない」


「分かった」


(腕より信用だ)


三人が順番に来る。


最初の一人は若い男だ。レオと名乗った。装備が軽く、動きが早い。


「どんな仕事ですか」


「調合補助だ。工程の一部を任せる」


「時間は何刻からですか」


「朝から昼まで」


「食事代は出ますか」


(悪くない。ただ軽い)


腕の問題ではなく、何を聞いてくるかの問題だ。仕事の中身より条件から入る人間は、条件が変わったときに離れる。


二人目はドレイクと名乗った。中年の男で、経験がありそうな手をしている。


「配合はどんな素材をお使いで。火加減は石臼使いですか、それとも乳鉢。前の店では初級と中級を両方やっていて、そこの配合比が——」


(無理だ)


男がまだ喋っている。止める必要もなく、答えを出すのに時間はかからなかった。


三人目はフィアと名乗った。三十代ほどの女で、薄茶の髪を後ろで束ねていて、こちらをまっすぐ見ている。中肉中背、指先に薬草のしみがある。灰がかった緑の瞳が静かで、余計な動きがない。


「工程は分業ですか」


「そうだ」


「品質基準はありますか」


「ある」


少し間がある。


「契約内容は後日で構いません」


(悪くない)


条件より仕事の中身を先に確かめようとしていて、答えが少ない。それが今は一番いい。


「今日の午後、店に来てほしい。棚と客の動きを見て、どう感じたか教えてほしい」


女が短く「分かりました」と言う。


(観察できるかどうかが一番大事だ)


---


店に戻ると、棚がすでに半分空になっている。


午前中だけで淡く濁った方が三本出た。残りは初級ポーション三本のみで、昼前には全部出る。


今日も品切れが確定だ。


一人で仕込める量には限界があり、需要は毎日それを超えている。感覚の話ではなく、棚の隙間が答えを出している。


(急がないと間に合わない)


---


午後、フィアが時間通りに来る。


「棚の横に立っていてくれ。何もしなくていい」


フィアが頷いて、棚の端に静かに立つ。


客が来る。


駆け出しの若い男が入ってきて、棚を一度見てから迷わず淡く濁った初級ポーションを一本取る。硬貨を置いて出ていく。


次の客は装備が整った中年の男だ。棚の前で少し止まる。


「二本もらえるか」


「一本です」


男の顔が少し動く。


「何でだ」


「在庫が少ない。今来る客に渡したい」


男が少し間を置いてから一本だけ取り、硬貨を出す。出ていく際に棚をもう一度見る。


客が途切れたところで、女の方を向く。


「どう見えた」


女がすぐに答える。


「駆け出しは迷いがなかった。どれを買うか最初から決めていた」


「二人目は」


「棚を見ていなかった。品物より、こちらの反応を見ていた。転売の可能性があると思います」


「制限については」


「不満はあったが、理由を聞いて納得していた。説明が短かった分、余計なことを言わなかったのがよかったと思います」


少し間を置く。


「在庫が少ないのは本当ですね。生産量が足りていない」


(見えている)


---


夜、食堂でリナと向かい合う。


「どうするの。契約する?」


「候補は一人に絞れそうだ」


「魔法契約を使うのね」


「そうだ。明日、連れていく」


リナが少し笑う。


「ケイにしては早い決断ね」


(時間がない)


返答はしない。


リナがそれ以上は言わず、椀を手に取る。


もう一人はまだ決まっていない。ただ今日絞れたのが一人でも、それで前に進める。


---


【借金メモ・50話終了時点】

前話(49話)終了時:手元銀貨2枚と小銀貨8枚と大銅貨4枚・残債大銀貨2枚と銀貨1枚と小銀貨9枚と大銅貨9枚

50話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)4本(大銅貨6枚×4=大銅貨24枚)+初級ポーション(作澄:緑)3本(大銅貨8枚×3=大銅貨24枚)=小銀貨4枚と大銅貨8枚

50話支出:食事分(大銅貨1枚)

残債充当:小銀貨3枚と大銅貨1枚→残債大銀貨2枚と銀貨1枚と小銀貨9枚と大銅貨9枚から充当→大銀貨2枚と銀貨1枚と小銀貨6枚と大銅貨8枚

ケイの手元:銀貨3枚

残債:大銀貨2枚と銀貨1枚と小銀貨6枚と大銅貨8枚(魔法契約費用・大工費用・リナへの借用が確定見込み)

---

【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 5本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作澄:緑) × 3本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大瓶2本(保管中・2本目使用中)


素材類

 シロクサ乾燥葉 × 28枚

 ハコネソウ生葉 × 18枚

 イヤシゴケ乾燥粉 × 31g


道具類

 調合道具一式(購入済み) × 石臼・土鍋・計量皿一式

 保存瓶 × 5本(残)

 大保存瓶 × 2本(保管中・2本目使用中)


天秤座

 注意処分(警告1回目):販売基準の明文化・掲示指示(対応済み)

 人材募集掲示中(販売員・日当大銅貨4枚・5日間・掲示2日目)


生産者候補

 候補者C:フィア(女・30代):観察力テスト通過・明日魔術師ギルドへ連れていく予定


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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!


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