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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第2章

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第46話『一本まで』

朝、扉を開ける前に棚を見る。


淡く濁った初級ポーション五本。初級ポーション四本。


瓶と瓶の間に隙間がある。棚が埋まっていたときに聞こえた、瓶同士が触れる小さな音がない。静かだ。


今日の分では足りないかもしれない。


扉を開ける。朝の冷えた空気が入ってくる。


---


第四鐘を過ぎた頃から客が来る。


駆け出しが一人入ってくる。棚を見て、眉がわずかに動く。言葉はない。淡く濁った初級ポーションを一本買って出ていく。


次の客も同じだ。棚の隙間を見て、必要な分だけ取っていく。


三人目が「在庫少ないな」と言う。


「今日は少ない」


男が頷いて二本買う。


四人目が入ってくる。棚の前で少し止まって、振り返る。「もう終わり?」


「まだある。ただ今日は少ない」


男が一本だけ買って出ていく。


---


第五鐘頃、扉が開く。


男が一人入ってくる。装備がしっかりしている。革鎧に剣帯。ただ剣帯の留め具が緩い。腰に荷袋を下げている。荷袋の膨らみ方が採取道具のそれではない。


男がカウンターに来る。棚を見る時間が短い。値段の板を見る時間も短い。


財布を出す動きが早い。迷いがない。


腰の荷袋の形が採取道具のそれではない。装備は冒険者だが、動きが行商に近い。


判断は固まる。


「全部もらいたい」


棚を確認する。淡く濁った初級ポーション三本、初級ポーション三本。六本。


男の視線は棚ではなく、こちらに向いている。買えるかどうかだけを確かめている目に見える。


「一本までです」


男の表情が止まる。「なぜだ」


「在庫が少ない。今来る客に渡したい」


「金は払う。全額出す」


「分かっています。それでも一本までです」


男の声が低くなる。「商売人だろ。買う客を断るのか」


「一本は売ります。それ以上は売りません」


「ふざけるな」


「……一本までです」


男が少し前に出る。カウンターに手をつく。「商業ギルドに報告するぞ」


「……どうぞ」


声の高さも、間も変えない。


男がこちらを見る。目が細くなる。何かを測っている。


しばらくして、息を一度吐く。


財布から硬貨を六枚出す。淡く濁った初級ポーションを一本受け取る。鞄に入れる。出ていく。


振り返らない。


扉が閉まる。


---


昼を少し過ぎた頃、足音が複数近づいてくる。


扉が開く。ガッシュが先に入る。ミーナとテオが続く。三人とも採取帰りの格好だ。ガッシュが肩から袋を下ろしてカウンターに置く。重い音がする。


「シロクサ五十枚、ハコネソウ三十枚、イヤシゴケ五十グラム。ギルドに納品してきた。確認だけしてくれ」


受け取って確認する。量は合っている。ハコネソウの葉が厚い。質がいい。


「質がいい」


ガッシュが鼻を鳴らす。「ミーナが予想より多く取れたと言い張るから確認してくれ」


ミーナが「言い張ってない、本当に多かったの」と言う。テオが小さく頷く。


袋の中を再度確認する。ハコネソウが依頼量より七枚多い。シロクサも四枚超えている。


「多い。余分の分はギルドに回しておく」


「任せる」ガッシュが短く言う。「次の依頼を出してくれ」


「また出す」


「分かった」ガッシュが袋を肩に掛け直す。「また来る」とだけ言って出ていく。ミーナが「頑張ってね」と言う。テオが頷く。


扉が閉まる。


素材を調理場に運ぶ。シロクサ、ハコネソウ、イヤシゴケを棚に並べる。


今夜仕込めば明日の棚が埋まる。数字はそう動く。


---


午後、店の外を一度確認する。


通りの向こうに人影がある。三十歩ほど先だ。商人の格好をしている。開店初日に店の前に立っていた男の一人だ。


近づいてこない。ただ立っている。


こちらも何もしない。


視線が合う。男が少し動く。それだけだ。


---


夜、調理場に入る。


石臼を出す。ハコネソウを取る。刃を入れると青い匂いが立つ。今日のハコネソウは葉が厚い。少ない量でも成分が濃そうだ。


仕込みながら今日のことを頭の中で整理する。


朝から九人来た。そのうち一人が転売目的と見た。一本に絞って断った。


あれは正しかったか。


財布を早く出す。棚より値段を先に見る。荷袋が運搬用。行動が行商に近い。装備は冒険者だが目的が違う。計算はそうなる。


転売屋に渡せば届かない。駆け出しが使って噂が広がる。今の客層がいる理由はそこだ。在庫が少ない間は特に、届けるべき相手を絞る必要がある。


(届けるべき相手)


感情ではない。計算だ。


駆け出しには渡す。転売目的は一本に絞る。リピーターは判断して渡す。装備、動き、財布の出し方、目線。全部合わせて判断する。


液体を布で濾す。瓶に移す。淡い濁りが落ち着いていく。


ルールは固まった。


明日から適用する。


ガッシュたちが今日届けた素材で、また仕込める。次のクエストも明日の朝一番で出す。


---

【借金メモ・46話終了時点】

前話(45話)終了時:手元大銅貨一枚・残債大銀貨一枚と銀貨八枚と大銅貨一枚

46話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)7本(大銅貨六枚×7=大銅貨四十二枚)+初級ポーション(作澄:緑)2本(大銅貨八枚×2=大銅貨十六枚)=小銀貨五枚と大銅貨八枚

46話支出:食事分(大銅貨一枚)※クエスト手数料は翌朝発注時に支払い

残債充当:小銀貨五枚→残債大銀貨一枚と銀貨八枚と大銅貨一枚から充当→大銀貨一枚と銀貨三枚と大銅貨一枚

ケイの手元:大銅貨八枚程度

残債:大銀貨一枚と銀貨三枚と大銅貨一枚

---

【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 6本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作澄:緑) × 2本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 1本(棚在庫・残)

 初級ポーション(作澄:緑) × 1本(棚在庫・残)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大瓶1本分(保管中・用途未定)


素材類

 シロクサ乾燥葉 × 54枚(納品分+既存残)

 ハコネソウ生葉 × 37枚(納品分+既存残)

 イヤシゴケ乾燥粉 × 55g(納品分+既存残)


道具類

 調合道具一式(購入済み) × 石臼・土鍋・計量皿一式

 保存瓶 × 7本(15本から8本使用)


採取クエスト

 次回依頼:翌朝発注予定(手数料小銅貨三枚・発注時支払い)


店舗

 店舗兼住居「緑の雫」(南西区・薬屋通り手前)

  月賃料:銀貨一枚と小銀貨七枚(調理場使用料込み)

  開店四日目終了


読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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