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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第2章

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第44話『二日目』

朝、錬金術師ギルドへ向かう。


受付が奥に消えて、しばらくして戻ってくる。石臼、土鍋、計量皿が順に出てくる。


銀貨五枚を出す。受付が受け取って帳簿に記録する。


石臼を手に取る。重い。表面の目が細かく、均一に刻まれている。


調理場に戻って道具を並べる。石臼を定位置に置く。土鍋を火口の前に据える。計量皿を棚の端に置く。


借り物のときは常に「残り何日」という数字が頭の隅にあった。


今はない。


---


第四鐘過ぎ、看板を出す。


最初の客は第五鐘前に来る。装備を見れば冒険者と分かる。棚を一通り見て、初級ポーションの前で止まる。


「こっちはいくらだ」


「大銅貨八枚だ」


「三本」


財布から硬貨を出す。迷いがない。淡く濁った初級ポーションの瓶には目を向けない。


瓶を三本渡す。硬貨を受け取る。


男が出ていく。


次の客が来る。やはり棚を見て初級ポーションを指す。「二本」と言う。値段を聞かずに硬貨を出す。


その次も同じだ。


棚の初級ポーションが減っていく。淡く濁った初級ポーションは動かない。


---


第五鐘を少し過ぎた頃、昨日も来た顔が入ってくる。


棚を見る。淡く濁った初級ポーションを確認して、カウンターに来る。


「四本くれ」


「小銀貨二枚と大銅貨四枚だ」


硬貨を数えて出す。瓶を受け取って、確かめるように光にかざす。一本ずつ丁寧に袋に入れて出ていく。


しばらくして、別の顔が来る。


棚の淡く濁った初級ポーションを見る。残りは四本だ。


「全部もらう」


「小銀貨二枚と大銅貨四枚だ」


硬貨を出す。瓶を受け取る。


「また来る」と言って出ていく。


また別の顔が来る。


棚を見る。淡く濁った初級ポーションが空だ。少し間を置いてから初級ポーションを二本手に取る。


「これにする」


「小銀貨一枚と大銅貨六枚だ」


硬貨を受け取る。男が出ていく際に振り返る。


「淡く濁った初級ポーション、次はいつ入る」


「明日には作る」


頷いて出ていく。


棚を見る。淡く濁った初級ポーションが空だ。初級ポーションがまだ五本残っている。


---


昼前後、ガッシュが入ってくる。ミーナとテオも一緒だ。


ガッシュが棚を見る。「淡く濁った初級ポーション、切れてるな」


「さっき出た」


「じゃあ初級ポーションを一本」


硬貨を出す。瓶を受け取る。ガッシュが棚に寄りかかりながら言う。


「ダンジョン組で体の調子を崩してる奴が増えてるらしいな」


「どういう症状だ」


「だるいとか、疲れが抜けないとか。ポーション飲んでも治らないって言ってるらしい」


ミーナが「えっ、ポーションが効かないの」と顔を上げる。


「ポーションで治る症状じゃないんだろ」ガッシュが鼻を鳴らす。「保存食ばかり食ってるからだ。街の飯を食えば治る話だ」


テオが小さく頷く。


三人が出ていく。


カウンターの内側でその話を繰り返す。


(ポーションで治らない)


次の客が来る。


---


午後、一人で入ってくる。


装備は軽い。ダンジョン組だと分かる。棚を見て初級ポーションを一本手に取る。


「大銅貨八枚だ」


硬貨を出しながら言う。「最近だるくて」


「ポーションは飲んだか」


「飲みました。変わらないんですよね」


少し間を置く。


「いつからだ」


「ダンジョンに入り始めて五日くらいです。最初は疲れだと思ってたんですけど」


瓶を渡す。


「そうか」


男が出ていく。


(五日)


頭の中でその数字が止まる。ガッシュの話と並ぶ。ポーションが効かない。保存食。だるさ。五日。


次の客が来る。


---


夕方、在庫を数える。


淡く濁った初級ポーションが八本出た。初級ポーションが十本出た。合計十八本。


棚に残るのは初級ポーション三本、淡く濁った初級ポーション一本(既存分のみ)。今日仕込んだ淡く濁った初級ポーションは空だ。


今日の収入を計算する。淡く濁った初級ポーション八本で大銅貨四十八枚、初級ポーション十本で大銅貨八十枚。合わせて小銀貨十二枚と大銅貨八枚。


悪くない。


ただ明日の調合を考える。淡く濁った初級ポーションを優先する。素材の残りを確認する——シロクサ、ハコネソウ、イヤシゴケ、どれも残量が少ない。素材の購入が要る。保存瓶も要る。


数字を並べる。数字の隣に別の何かが並びかける。


まだそこまで考える段階ではない。


---


夜、食堂でリナを見つける。


隣に座る。しばらく黙って食う。


「ダンジョン組の体調不良、ギルドでも話題になってるらしい」とリナが言う。「ポーションが効かないって言ってる冒険者が何人もいるって」


「街に戻れば治るか」


リナが少し考える。「治るみたいね。食堂飯を食べてれば数日で楽になるって話は聞く。なんでかは誰も分からないみたいだけど」


「そうか」


リナが椀を置く。「何か気になることでも」


「いや」


リナがこちらを見る。少し間を置いてから椀に視線を落とす。それ以上は聞かない。


食堂の喧騒が続く。


頭の中で何かが静かに並んでいる。まだ形になっていない。ただ並んでいる。


---

【借金メモ・44話終了時点】

前話(43話)終了時:手元大銅貨二枚・残債大銀貨三枚と大銅貨二枚

44話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)8本(大銅貨六枚×8=大銅貨四十八枚)+初級ポーション(作澄:緑)10本(大銅貨八枚×10=大銅貨八十枚)=小銀貨十二枚と大銅貨八枚

44話支出:食事分(大銅貨一枚・宿代不要)

残債充当:小銀貨十二枚+大銅貨七枚→残債大銀貨三枚と大銅貨二枚から充当→大銀貨二枚と銀貨七枚と大銅貨五枚

ケイの手元:大銅貨一枚(残債充当後)

残債:大銀貨二枚と銀貨七枚と大銅貨五枚

---

【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作澄:緑) × 2本(店舗在庫)

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 1本(既存・棚端)

 初級ポーション(作澄:緑) × 1本(既存・棚端)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大瓶1本分(保管中・用途未定)


素材類

 シロクサ乾燥葉 × 10枚(残・補充要)

 ハコネソウ生葉 × 5枚(残・補充要)

 イヤシゴケ乾燥粉 × 12g(残・補充要)


道具類

 調合道具一式(購入済み) × 石臼・土鍋・計量皿一式

 保存瓶 × 0本(補充要)


店舗

 店舗兼住居「緑の雫」(南西区・薬屋通り手前)

  月賃料:銀貨一枚と小銀貨七枚(調理場使用料込み)

  開店二日目終了


登録済み

 商業ギルド「天秤座」露店区画(妨害により一時停止中)

読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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