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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第2章

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第34話『再現性』

朝、第三鐘が鳴る前に目が覚めた。


メモ帳を開く。手元の状況を記号で並べる。シロクサとイヤシゴケは余剰分ある。昨日買ったハコネソウも二束ある。保存瓶だけ残っていない。


手元の初級ポーションは今日、冒険者ギルドに納品する。


濁った初級ポーションはまだ動かせない。


法則は分かった。「澄んでいる=薄い、濁っている=濃い」。ただ分かっただけで、濁った方を売る手段がない。世間の目には失敗品だ。買い取る窓口があるとも思えない。


今日の結論は変わらない。初級ポーションを安定して量産する。資金を積む。その間に手を考える。


メモ帳を閉じる。


食堂に下りると、リナが先に座っている。パンをちぎりながらこちらを見る。


「また早いね」


「調合に行く前に聞きたいことがあった」


リナが少し眉を動かす。「何」


「ポーションを使う場面。戦闘以外でどういうときがある」


リナが考える。「怪我の手当て、訓練後の疲労回復、あとは冒険者以外だと鍛冶師とか職人が手の怪我に使うことがある。なんで」


「訓練後の疲労なら、怪我がなくても試せると思った」


「何を試したいの」


「ポーションの効き方を確かめたい。飲んで差が分かるか」


パンを口に運んでからリナが言う。「疲労は難しいよ。ポーションで回復する人もいれば、あまり変わらない人もいる。それに疲れてるかどうかって、自分じゃよく分からない。飲んだ後に『楽になった気がする』で終わる」


「効果の差が見えなければ検証にならない」


「そういうこと」


詰まった。軽傷があれば話は別だが、わざと傷をつけるのも意味が違う。解析で成分量の差は見える。ただ実際に効くかどうかは別の話だ。


「何かを試そうとしてるのは分かった」リナが静かに言う。「ただ焦らなくていいと思う」


「焦ってはいない。手順を考えてる」


リナが小さく息を吐く。それ以上は何も言わなかった。


錬金術師ギルドへ寄って保存瓶を三本買い足す。小銅貨六枚。そのまま作業場の扉を押す。


今日の先客は一人だけ、端で作業している知らない男だ。中年の女性はいない。


道具を並べて素材を確認する。シロクサ、ハコネソウ、イヤシゴケ。今日は全部揃っている。


石臼でシロクサを磨り潰す。腕の使い方は体に入ってきた。力ではなく体重を乗せる感覚だ。イヤシゴケの粉末を計量皿で量る。清水を土鍋に入れて火にかける。


手が迷わない。


一本目が仕上がる。初級ポーションだ。解析を展開する——こめかみに鈍い痛み。三回目だ。魔力反応、薄い。前回と同じ薄さで、ばらつきがない。


二本目。同じ手順。同じ結果。


三本目を仕上げたところで素材が尽きる。解析は使わない。どうせ同じだ。


三本を並べる。初級ポーションが三本、色が揃っている。


(薄いが、均一だ)


今の天井はここだ。この手順で出せる品質がこれだと分かった。次は本数を増やすか、別の条件を試すかだが——今日はここまでだ。


保存瓶に移して袋に入れる。一本はギルドへ。二本はガッシュたちへの分け前だ。


冒険者ギルドの受付に初級ポーションを一本出す。


受付の女が確認する。「初級ポーション、買取で。大銅貨七枚になります。スタンピード後は需要が増えてますので」


硬貨を受け取る。普通の取引だ。


ガッシュたちは食堂の奥にいる。


「できた」


「また作ってきたの」とミーナが顔を上げる。


「二本。前回と同じやつだ」


受け取って光にかざしながら「色が揃ってるな」とガッシュが言う。


「手順が安定してきた」


「腕が上がったってことか」


「そういうことだ」


テオが無言で一本を受け取り、懐にしまう。「私のは」とミーナが手を伸ばす。「テオに預けとけ」とガッシュが返す。「毎回それ」とミーナが唇を尖らせる。


宿への帰り道、メモ帳に今日の数字を書き留める。


初級ポーション三本、一本納品で大銅貨七枚。二本はガッシュたちへ。収入としては薄い。ただ手順は固まった。次は素材を揃えて本数を増やす。


濁った初級ポーションはまだ動かせない。検証手段もまだない。


ただ、いつか使える日が来る。そんな気がした。


---

【借金メモ・34話終了時点】

前話(33話)終了時:手元大銅貨9枚・小銅貨2枚・残債小銀貨9枚

34話収入:初級ポーション(作澄:緑)1本納品(大銅貨7枚・スタンピード高騰3割増)

34話支出:宿+食事1日分(大銅貨3枚)・保存瓶3本(小銅貨6枚)

残債充当:なし(手元から支出)

ケイの手元:大銅貨12枚・小銅貨6枚

残債:小銀貨9枚(変わらず)

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 1本(手元保留)


素材類

 シロクサ乾燥葉 × 18枚

 ハコネソウ生葉 × 16枚

 イヤシゴケ乾燥粉 × 12g


道具類

 調合道具一式(借り物) × 残7日

 保存瓶 × 3本

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 34話あとがき


澄んだポーションを三本、同じ手順で作る回です。


三本とも色が揃いました。手順が安定しています。ケイとしては「再現性が取れた」状態です。


リナとポーションの検証手段について話します。疲労では効果の差が見えないと言われて詰まります。手段はまだありません。


今話は一本納品・二本をガッシュたちへ渡して終わります。濁ったポーションは手元に保留中のままです。


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