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透明の心臓  作者: 水瀬 悠里
Ⅲ 風の共鳴
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第4章 灰色の波動

轟音。

空が裂け、灰の大地が震えた。

エコーズがわらわらと集まってきていた。


「チッ、こいつに反応してやがる」

ジャックは何発目かの発射で、尽きた弾丸を充填させながら、言う。

腰のβが、やたらと熱い。


慧吾は青ざめた顔で、それでもエコーズを斬り伏せていた。だがその消耗は激しかった。


最後の一匹を倒したその時、慧吾の胸の光が爆ぜる。光とも闇ともつかない波動が、周囲を飲み込んでいく。地面の亀裂が広がり、黒い影がそこから噴き上がる。


「……慧吾!」


ジャックの叫びも届かない。慧吾の瞳は焦点を失い、足元が崩れる。


「……抑えきれない」


慧吾が呻く。

膝をつき、地に手をつく。掌の下から、まるで血のように黒い光が滲み出す。


「おい、聞こえてんだろ!」

ジャックが駆け寄る。


慧吾は歯を食いしばり、顔を上げた。

「……来るな……っ!」


「知ってるよ」

ジャックが吐き捨てるように言った。

そのまま慧吾の肩を掴み、無理やり引き寄せた。


「てめぇの“ひとりで大丈夫”なんて言葉、

 もう聞き飽きたんだよ」


慧吾の体が震える。胸の奥で光が暴れ、ジャックの腕にも焼けるような痛みが走る。


それでも、離さなかった。


「離せ……お前を巻き込む」


「巻き込まれてやるって言ってんだ!」

ジャックが怒鳴る。

「……誰もいねぇ場所で、また消えさせるもんか」


風が吠える。灰が舞う。


慧吾の手が、わずかにジャックの腕を掴む。

それは拒絶ではなく、支えを求める“人間の手”だった。


「……また、失うのが怖いのか」

慧吾がかすかに問う。


ジャックは笑った。

「怖ぇよ。

 お前の、自分ひとり消えるならって顔が、いちばん怖ぇ」


風が強く吹いた。とたん、光が収まり、静寂が戻った。


慧吾の肩が落ちる。ジャックはまだ腕を離さない。


「……バカが」

慧吾の声が微かに震えた。


「お前が言うな」

ジャックが笑った。


風が通り抜け、空の隙間から一筋の光が差した。

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