episode4:ライルと炭酸水
「おっちゃん、サイダー飲むか?」
「むっ? サイダーとはなんだ?」
あかりにそう問いかけると、大きな箱からあかりは一つのボトルと取り出した。その大きな箱は“冷蔵庫”と言い、食料を保存したり、冷やしたりできる便利な道具だそうだ。
あかりはボトルから透明なグラスに、シュワシュワと泡を発生させる液体を注ぎ入れる。
「サイダーって言うのは……うーん……炭酸水てやつだよ。甘くて、シュワシュワで、美味しい」
そう言うあかりから、俺は得体の知れない液体が入ったグラスを受け取った。
毒でも入っているんじゃないだろうな。
俺はあかりのことを観察する。すると、あかりは同じボトルから注ぎ入れた液体をごくごくと飲み始めた。
「ぷはー。やっぱり、真夏の炭酸は最高ですなー」
なんて美味そうに飲むんだ。そんなものを見せられたら俺も飲んでみたくなってしまうではないか。
俺はグラスに入った液体を一口飲んだ。
……! 舌が痺れるように痛い。やはり、毒! 子供だからといってこいつのことを侮っていた。もっと警戒するべきだった。
「お、あかり。サイダー開けたのか。それじゃ、わしももらおうかの」
俺がグラスに入った液体を見つめ、驚いていると、部屋に入ってきた健二が、徐にボトルの注ぎ口に口をつけた。そして、直接炭酸水を飲み始め……おい、健二何やってんだ。その大きなボトル、全部一人で飲むつもりか? それ、毒だぞ? おい? じじいぃーーーーーーーー!!!!!!
「ぷはー。夏のサイダーは最高じゃわい」
「じっちゃん! 全部飲んじまったのか? あかりももっと飲みたかった!」
驚愕する俺をよそに、あかりはもっと飲みたかったなどと言う始末。なんだ? 俺はこいつらに試されているのか?
「すまんすまん。また買ってきてやるから……うっ」
健二が軽くえずいたような反応を見せる。次の瞬間……
「げえええぇえぇえぇぇぇ!!!!」
それは、俺が今までに聞いたこともないような、人間の咆哮だった。いや、これは彼の断末魔の叫びなのだ。せめて俺が思い思いに弔ってやらなければ。
「ぎゃはははははははは!!」
俺はあかりの狂ったような笑い声が聞こえる中、そっと手を合わせた。
とても短い間だったが、世話になった。
「ライル……何わしに向かって、目を瞑りながら両手を合わせてるんだ?」
「じっちゃん、ゲップして死んだと思われたんじゃない?」