episode2:戦士、幼女とじじいの家に居候する
俺は今までの状況を鑑みて、必死に頭の中を整理しようとした。
まず、俺は敵に光の魔法を当てられて死んだ。そして、気がついたらこの世界にいて、この幼女と老人に出会った。あかりという幼女と健二という老人は、この世界をあの世ではなく日本のクスノキ村だと言う。そこから導き出される結論は……あの光魔法は転移魔法であったということ。つまり俺は…………
「異世界転移させられたのか……」
俺はガックリと四つん這いになった。
「大丈夫かおっちゃん? あかりがチューしてやろうか?」
「やめなさい。あかり」
俺の顔を覗き込もうとしたあかりのことを、健二が腕を引っ張って引き寄せた。
「それで……ライルは何者なんだ?」
「……俺は別の世界からやってきた。詳しいことを話すつもりはない。だが、行く宛もない。そこで、どうかここに住まわせてわもらえないだろうか」
俺は健二に向かって頭を下げた。俺が身をここに置こうと思った理由は大きく二つ。
一つは追っ手がこちらまでやって来るかもしれないからだ。俺は彼らに問い詰めねばならない。何故俺をこんなところに送り込んだのかと。そのためにも、動き回るのはあまり得策ではない。
もう一つは、単純に怖いからだ。全く知らない土地に投げ出され、知らないもの、ことで溢れている。こんな世界で一人で生きていける気は正直しない! しかし運のいいことに、この幼女と老人は俺の面倒を見てくれている。もう少し、世話になってやっても……
「そりゃダメだ」
健二は一つ返事で俺のお願いを拒んだ。
「何故だ!」
「いや、身元不明の奴を家に置くのは流石にちょっとなぁ。わし、ちょっと怖いし」
「ええー! あかりはおっちゃんと一緒に遊びたい! おっちゃんを家に置いてもいいでしょ! ねえ!」
あかりは俺の援護をしてくれるようだ。いいぞ、もっとやれ!
「そんな、拾ってきた犬を飼いたいみたいに言われても……あかりはなんでこの男のことをそんなに気に入ったんだ?」
「だってこのおっちゃん、面白いんだもん」
あかりが目をキラキラと輝かせながら言う。
「あかりがそこまで言うなら仕方ないな……ちゃんとあかりも世話をするんだぞぉ。ちゃんと世話できなかったらわし、ライルのこと捨ててきちゃうからな」
「やったー! じっちゃん大好き!」
何かひどく侮辱されたような気もするが、ともあれここに住み込む許可が出たようだ。
ここから俺の、宮森家での新たな生活が幕をあげる。