1 プロローグ
木漏れ日降り注ぐ、林床のなか。
今日、私は、夢を見る。
可愛らしいイタリアンガーデンのある家。桜咲き乱れる川。どこまでも続く青い海。どれも美しくて、素晴らしい。
けれども、私が好きなのは、人のいない奥まった森林の中に、ひっそりと咲く小さな花。白い花。か弱く見える一方で、生命力の強いもの。
小さいころの私は、こういった花を見つけると、寂しくないの?お母さんはどこにいるの?なんて考えていたっけ。
森を訪れているアドリアナは、その光景にただただ言葉を失ってぼんやり眺めた。いつかの自分が見た花を思わせる、その白いキンポウゲの花は、わずかな日の光を浴びて神聖な力を持っているように見えた。
アドリアナは雲を見ると、いつも人ではない何か妖精じみたものがそこにいるのではないかと、よく考える癖があった。
この花にも、小さな妖精が後ろに隠れているように見えた。彼女と彼は遊んでいる。そして、キンポウゲ―改め、リリアン(※アドリアナがお花につけた名前)と、ジュスト(森の妖精)のやりとりを、彼女は目撃するのだ。
以下、妖精とアドリアナによるおはなし。
次話から本編になります。