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鬼人の恋  作者: 渡邉 幻月
人ノ部 其之参 頽れる虚飾の王国と神々の復活
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四. 鬼族との邂逅

 誰も居なかったはずだ、と探索隊全員が肝の冷える思いをしつつ、声のした方に視線を向ける。見知らぬ姿が二つ確認できた。額の角に気付いて、彼らが鬼族であることに公爵たちは気付く。

「これは失礼した。私はアマハラ王国の公爵である。こちらが我が国の王太子殿下である。…して、あなた方は。」

公爵は彼らに答えた。公爵の隣で、王太子は不機嫌そうに立っている。

魔王城に居る鬼、それも人語を解する鬼だというのなら魔王の軍勢の中でも幹部クラスの実力があるに違いない、と公爵は考え、さてこの状況をどう切り抜けるかと思案する。

「そうですか。私たちは鬼族のミサキとイブキです。ここは魔王の城ですが、どのようなご用件でしたか?」

「む、あなた方は魔王軍の幹部の方でいらっしゃるか? 実は異変を感じ、ここに参った次第なのであるが。」

「いえ、しがない鬼の集落の者ですよ。私たちも異変を感じたので様子を見に来ただけです。…きっと、似たようなことを探りに来たのでしょう、お互いに。」

と、ミサキは薄い笑顔で公爵に答えた。

 互いに名乗りあった後、情報を交換する。と言っても、公爵たちが得ている情報はたかが知れているのだが。


「ミサキ殿、その話が真実であるなら、どうか我々にも協力させて貰えないだろうか。」

神に祈りを捧げるというミサキの説明を受けた公爵はそう言って頭を下げた。他に残された手段は無いように思える。そもそも手掛かりの一切が見当たらないのだ。正直途方に暮れていた公爵は、渡りに船とはこのことかと思ったのだ。

「くれぐれも邪魔はしないでいただきたい。それであれば、同行しても良いですよ。」

少し考えてミサキが頷くと、

「かたじけない。」

そう公爵は頭を下げた。神に祈ってどうにかなれば御の字であるが、そうは成らなかったとしても何か見つかるかもしれない。藁にも縋る気持ちとはこういうことか、と公爵は溜息をそっと吐いた。


「おそらくですが、神々はここから北東の樹海の中、フシノヤマにお隠れになっているはずです。」

ミサキはそう説明する。その言葉に、ざわり、と公爵や探索隊一同に動揺が走る。

「そこは禁足地だ。」

相変わらずの不機嫌な様子で王太子が言った。

「なるほど。神々の眠る神聖な場所、と言うことでしょうかね。」

そう返したミサキの言葉に、何人かが納得したような顔になる。公爵も難しい顔をして何やら思い悩んでいたが、ミサキの言葉で決心したのか同行することに変更はない、と再び口にした。

「そうですか。では、問題ないようでしたら日が暮れる前に出発しましょう。」

意味深な笑みを浮かべたまま、ミサキは次の行動へと促した。


 アマハラ王国で禁足地とされているフシノヤマ。遷都前の旧王国領の北部に位置する森の奥、連なる山々の内の一つで最も標高が高く美しい山がフシノヤマと呼ばれている。ハヅキとミナヅキが居を構えた魔王城を出て、二代目魔王の城を通り、さらに北東へ進むと見えてくる。廃墟になった旧王国の城壁を超え、樹海と呼ばれる森を抜け、漸くその場所へ辿り着くことができる。


 フシノヤマ一帯が禁足地となった理由について、王太子も公爵も、探索隊の誰も知らなかった。ただ、足を踏み入れてはならないとだけ伝わっている。口伝はもとより、歴史書などにも残っていない。今まで不自由も無かったこともあり、特に気にすることも無くいたと、公爵は反省した。もし、禁足地について調べる機会があったら、せめて気にかけていたら、鬼族と合流せず自分たちで探索に来ていたことだろう。

 鬼族を出し抜けるとも思えず、それならばせめて同行して監視と、瘴気の対策方法を見付けるしかない。そう考えている。


「遷都の際に紛失してしまったのだろう。」

と、公爵は禁則地を目の前にミサキに説明した。監視も兼ねているとは気付かれないようにしなければならない。王太子の失言も無いように注意しなければ。それは王太子の側近もいるから多少は任せても良いかもしれない。

 野営の際にさらに情報を交換し合う。魔王と瘴気について鬼族の見解を聞いた公爵は軽く絶望した。そこに関連が無いのだとしたら、魔王討伐など無意味なことだった。その無意味な行為の果てに、聖女が失われるとは。


「なんと頭の痛いことだ。」

公爵は力なく呟いた。


 翌日。

まるで海のように見えるその森を抜け、一行はフシノヤマの麓まで来ていた。主に王太子の我儘のせいで思うように進行できずミサキとイブキは苛ついていた。二人だけならもっと早く到着していただろう。彼らの苛立ちに気付いていないのは、何と王太子だけで、公爵はじめ側近や捜索隊の面々は何とか二人についていけるよう腐心していた。それに気付いていたからこそ、二人は仕方なく人族の同行を許し続けていた。

 神々の御座おわしますフシノヤマ。最も神聖で穢れを嫌う唯一絶対の神域である。


「では、登りましょうか。神々がお隠れになったアメノイワヤトは中腹にあるはずです。」

山道の入り口を目の前にして、ミサキは一行に声をかけた。

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