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鬼人の恋  作者: 渡邉 幻月
人ノ部 其之弐 最初の聖女は二周目で復讐を遂げる
50/72

一. ホデリとホオリ

 王国歴千年に差し掛かる頃、アマハラ王国には二人の王子がいた。名を兄はホデリと弟はホオリと言う。


 兄ホデリは武勇に優れていたが粗暴な性格であった。対して弟ホオリは体が弱いこともあったが学問を好み温和な性格に育った。本来であれば第一子のホデリが次期国王となるのであるが、その性格から将来を危ぶむ者も一定数おり立太子は見送られていた。


 ホオリは野望を持たない男であったので、いずれは兄ホデリを補佐する立場になるのだろうと漠然と考えていた。どちらかと言えば、学者か研究者になりたいところであるが、立場上難しいと理解していたので多くは望まないようにしていた、と言う方が正解かもしれない。


 王位継承問題は水面下で、小さな諍い等を繰り返し不穏な空気を城内に滲ませていった。本人たちの思惑を無視して。些細な問題も、重なれば取り返しがつかないほど重大な争いを生み出すのは世の常で、それはいつ破裂してもおかしくないほど膨れ上がってしまったのだと、気付いた時には手遅れだった。


 ホオリには幼い頃から仲睦まじいと皆が認める許嫁がいた。名をトヨタマと言う。伯爵家の令嬢であるが、古くから続く名家の姫であるので特に問題も無く婚約まで進んだ過去がある。長く美しい黒髪、黒曜石のような瞳、深窓の令嬢らしい白い肌、当代一の美姫と名高いトヨタマとホオリは子供らしくも穏やかに愛情を育んでいた。周囲の大人たちも、その様子を微笑ましく思い、見守っていた。

 ただ一人を除いて。


「なんと仰いましたか、兄上。」

ある日の昼下がり。その日の鍛錬を終え、次はここ最近任されることになった公務を処理しようと執務室内に向かっている所だった。これから鍛錬の時間なのだろうか、とやってくるホデリに挨拶をしたところで彼にかけられた言葉にホオリは耳を疑った。

「耳が遠くなったか? 魔王討伐に向かえと言ったのだ。」

彼以上に傲岸不遜という言葉が似合う者はいないだろうと噂されるだけあるホデリは、弟であるホデリに対しても変わらず横柄に話しかける。

「魔王、ですか?」

ホオリは首を傾げる。魔王の存在を知らない訳ではない。討伐の必要について考えていた。


このアマハラ王国から遥か西、世界の果てと呼ばれる場所に魔王が居るのだと言われている。魔王の城の周囲は深い深い森が取り囲んでいることもあり、今までまともに近付けたものはいない。時折、獲物を深追いしたり世捨て人が迷い込んだりして魔王の城に辿り着くことがあったのでその存在が知られているだけだった。百年に一度もあるか分からない迷い人の話で、ほとんどの人は迷信だと思っている。

魔王の存在から何らかの危害を受けた訳ではないからだ。魔王の城の周辺の森に、魔獣が多く生息していることから、勝手に魔王と呼んでいるだけでそもそも王なのかどうかも分からない。そんな存在を、討伐とは。


「そうだ。このところ、魔獣が増えてきただろう?」

ホデリはにやにやとホオリを見下すような笑みを浮かべている。

「はい、その報告は受けております。西側の領地外ですね。木こりや猟師が見かけたとのことですが。」

「被害人数も少ないし、まだ怪我くらいで済んではいるがな。放っておいて死人が出たり、村や町が襲われたりしてからでは遅いからな!」

至極真っ当な意見である。ホデリにしては。反論するようなことも無く、ホオリは素直に頷いた。

「それで魔王討伐ですか。」

「そうだ。ここにきて魔獣が増える理由が分からん。魔獣は魔王城の方から湧いて出てくるんだ。魔王の仕業に違いない。」

それはいささか乱暴な結論ではないか、とホオリは思うが、西で何か起こっているのかもしれないのは否定できない。魔王討伐でなく異変の調査であれば兄のホデリより自分の方が向いているだろう。

「そうですね。陛下の御許可をいただいて、準備出来次第出発しましょう。」

「準備くらいなら俺も手伝ってやろう。」

相変わらずにやにやしているホデリに、ホオリは感謝の言葉を。


 何の疑問も抱かなかったのは、不遜で横柄なのも、見下すようににやにや笑うのも、面倒な任務を押し付けてくるのもいつものことだったからだ。

許嫁の名前を間違えていました。

修正しました(✕タマヨリ→〇トヨタマ)4/30

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