表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/14

レベル8 ヒャッハー


 う、ううう……ゴン吉、スラ蔵……


「……は!」


 気づくと。


 俺は知らない天井を見上げていた。


 チュンチュン♪ チュンチュン♪


 障子しょうじからボンヤリとした日光がし、どこからか鳥のさえずる声がする。


 白くパリっとしたシーツの感触。


 それで俺は、自分が布団の上にプニっと横たわっていることを知った。


 そうだ。


 最長老の家に泊めてもらっていたのだっけ。


 ってことは、あれは……


「はぁ、夢か」


 そりゃそうだよな。


 ゴン吉やスラ蔵はとっくの昔に経験値になっていたはずなんだから、夢じゃなきゃ会えるはずもない。


 でも、たしかあのあと修行しに外へ出て行った気もするのだけど……


 ガラ……


 そんなふうに考えていたとき、障子しょうじが開いて、メスのスライムがこちらをのぞいた。


「スラさん。お目覚めですか?だいぶうなされていらしたけれど……」


 彼女は昨日お酒をかんしてくれたメス……


 たしか、最長老の息子さんのお嫁さんだっけ。


「ええと……こ、これはどうも……若奥さん……その、ええと」


 あいかわらずメスの前では緊張してしまう俺。


 若奥さんは『くすり』とひとつ笑って、大きなお尻の居ずまいを上品に正してから言った。


義父ちちはもうおつとめに出てしまいまして、ただいま不在でございます。『できればスラ様には今晩も泊まっていってほしい』と、義父ちちは申しておりました。今日もゆっくりと旅の疲れを癒してはいかがでしょう?」


 あの白ヒゲ。


 最長老というわりに働きに出てんのか。


 え、ってことは……


「じゃあ。今この家には」


「え?……あ、はい。今はスラさんとわたくしだけしかおりませんわ」


 ティーン!!☆☆


 なんと!


 俺の『同じ屋根の下理論』がここにきて実現するとは!


 昨日の姉妹のような10代のピチピチしたメス・スライムもいいけど、若奥さんみたいにうっすら脂肪がのったスライムもたまんないよね!


「お、奥さん……」


「はい?」


 こうして俺は、若奥さんの方へすり寄るために布団から起き上がろうとしたのだが、そのとき。


 そよ……


 にわかに縁側えんがわから風が吹き入り、かすかに線香の香りが鼻をくすぐった。


 近くに仏壇でもあるのだろうか。


「線香?これは……」


「夫のですの」


 そう聞くと、俺はもうシュンとなって、情熱が180度回転してしまった。


 そう。


 よく考えてみれば、若奥さんには経験値になってしまった旦那さんがいたはずなのだ。


 それによく考えたら、ここにもう一晩泊まるというのはちょっと遠慮ねがいたい。


 やっぱりこのスライ村にいると、ふいにゴン吉たちのことを思い出してしまう。


 それはちょっとツラいのだ。


「引きとどめてくださるのは嬉しいのですが……」


 俺はそう言いつつ、ようやく布団からはいい出たのだが、そのとき。


「きゃっ!」


「え?」


 若奥さんが綺麗なスカイブルーの顔を真っ赤にして目をそらした。


「どうしたんです?」


「いやっ!寄らないで」


 どうしたもんかなーと思ってふと横を見ると鏡があって、俺はビックリ仰天した。


 俺の頭のとんがりが……ツーンとって、これでもかってくらいムキムキっとしているではないか!


「ご、誤解です!これは朝だから仕方なくって……」


「そ、そんな野獣のような目で見つめないで!わたくしには経験値になった夫が……」


 と、若奥さんはダッっと縁側えんがわを走り去っていってしまった。


「はぁ……」


 あーあ、けっきょく嫌われちゃった。


 つーか今気づいたんだけど。


 ひょっとして俺ってモテないのかな?




 ◇




『おじゃましました』


 俺はそう書き置きを残して、最長老の家を出た。


 昨日は夜で暗かったからわからなかったけれど、明るくなってあらためて眺めてみると、村の風景は400年前とだいぶ違っている。


 家はじょうぶそうだし、道も整備されていた。


 400年もたっているのだから、当たり前と言えば当たり前か。


 いよいよ俺のいる場所はないな……


 そんなふうに思って村を歩いてゆくと、村の畑でスライムたちが働いているのが遠くに見えてきた。


 みんなで一生懸命働くのはイイことだよね……と思いながら眺めていたのだけれど、すぐにちょっと様子のおかしいことに気づく。


 というのは、どうやら畑にいるのはスライムだけではないのだ。


 いや。多くはスライムなのだけれど、何匹かやたらとデカいのがいる。


 スライムじゃない。


「なんだ?アイツら……」


 俺は、物質操作能力で自分の眼球の形を変え、遠くの畑に焦点が合うようにした。


 キュイーン……☆


 すると、スライムたちの畑の間に、デカいモンスターが威張いばった感じで立っているのが鮮明に見える。


 ずんどうな巨躯きょく


 醜い豚鼻。


 そう、あれは……オークだ!!


「なんでスライ村にオークが?」


 オークと言えば、完全に中級冒険者が相手にするモンスターじゃないか。


 俺はそぉーっと畑へ近寄り、さらに様子をうかがうことにする。


 すると……


「ひゃっはー! 働けスライムども」


「休んでんじゃねー!」


「ひー」


「ツラいよお」


 なんと!


 スライムたちがオークにむりやり働かされているではないか!!


「ひい、腰が……」


 そのなかには白ヒゲの姿もある。


「チッ、使えねえジイさんだ。どけどけ!」


 そう言って、一匹のオークが白ヒゲを掴み畑の外へ放り投げた。


 ポイッ! ぽよん、ぽよん、ペシャン……


「う、うう……」


 伏せてうめくジイさん。


 こ、こ、こ……


「こらー! スライムをイジめるなー!!」


 俺は、頭で考える以前にびよーんと身体が前へ出てゆくのを感じた。


【黒おーじからのお願い】


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!



・面白い!


・続きが読みたい!


・応援してる!




と、少しでも思ってくださった方は、



【広告下の☆☆☆☆☆をタップしてご評価いただけると嬉しいです!】



また画面上のブックマークを押して頂けると、次の話を追いやすくなります!


みなさまの『評価』&『ブックマーク』が、ダイレクトに創作エネルギーになってまいります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ