表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

第7話 誤解

 ジェイグの後を小走りで追う。


 「犯人がどこに向かったか分かるの?」


 「はい、おおよそは分かります」


 「それってギフトの力?」


 「いえ、これは単に足跡を見ているだけです。私のギフトは戦闘や追跡などには全く向かないものですので…」


 と苦笑いしながらジェイグは返答した。足跡と言われたので、目を凝らして見たが私には全く見つける事ができなかった。


 10分ほど移動したところで目的地が近づいてきた。


 「あの突き当りの廃墟に向かったようです」


 それを聞いて、すぐに【市場調査】により、内情を調べ、その結果を伝える。


 「中に子供が6人いるみたい」

 

ついでに年齢を調べたところ12歳が二人、7歳が二人、5歳が二人とのことだった。


 「なるほど…。子供の仕業でしたか。ただこの地区に居るからには普通の子供ではないと思われます。あまり私から離れないようお願いします」


 「うん。分かった」


 そう話していると、廃墟から少年と少女が出てくる。背丈と先ほどのギフトの情報から推測するに、恐らく12歳の二人であろう。





 「ここは私たちの家なんだけど、何かようかしら?」


 「……。こちらのお方の財布を盗んだものが、ここへ足を運んだと思うのだが、何か知らないか?」


 「ええ、ごめんなさい。私たちの弟分が拾ったみたいなの。こちらでよろしいかしら?お返しするわ」


 拾ったという嘘はついていたが、驚いた事に少女は素直に財布を差し出した。


 「それでは、要件は済んだようだから、お暇させて頂くわね」


 「待って!」


 二人が帰ろうとしたタイミングで、私は声をあげていた。


 「ここには子供だけで住んでいるの?どうして?」


 転生前は孤児院出身だった事もあり、こんな廃墟に子供が6人も集まっている事に興味が湧いたため、私はそう質問した。


 「何のことか分からねえが、俺たちは子供だけじゃない」


 「じゃあ6人以外にも人がいるの?その割には狭い場所に見えるけど」


 「おい!どうして6人って知ってやがる!お前たちまさかこの前の奴らの仲間か」


 私の発言に対して、急に少年の方が怒り始めた。


 「ゲン 落ち着きなさい」


 「落ち着けるわけねえだろ。クソッ。シュウすまねぇ。俺はもう我慢できねえ」


 そういいながら、ゲンと呼ばれた少年は背負っていた大き目の剣を取り出し両手で構えた。


 (しまった…。自分のせいで何か勘違いさせてしまったようだ)


 空気が張り詰めるのが理解できた。


 「ラフィアット様少しお下がりください。懲らしめて頭を冷やさせた方がよさそうです」


 無言で頷き、言われた通り少し下がった。   


 「ハァ…。こうなってしまったら仕方ないわね…」


 そういいながら、シュウと呼ばれた少女は自分の背丈ほどの槍を手に構えた。


 しばらくの沈黙の後、ジェイグが飛び出した。


 



 日々領兵の訓練を見ている限り、ジェイグは圧倒的な強さだった。


 だから、二人組とは言え12歳の少年、少女に対して苦戦もせず、すぐに戦闘は終わると思っていた。


 しかし、予想に反して二人の連携はすさまじく、少しジェイグが攻めあぐねているように感じた。 


 キンッ!


 ジェイグが攻め、ゲンという少年が大剣で受け止める。そのすきに死角からシュウという少女が槍で中距離の攻撃をする。槍の攻撃をジャンプで避け距離を取る。


 そういう攻防が何度か続いていた。 

 

 戦闘中ゲンとシュウの二人は一言も発していないにも関わらず、常にお互いのスキをカバーできていた。かつてアニメで見たような、人間離れした戦闘に見え、私は少し感動していた。




 

 戦闘が始まり5分が経過していた。


 相手の予想外の強さにゲンは焦っていた。


 『このおっさん異常な強さだ。シュウ 次はどうする?』


 『私に考えがあるわ。何度かスキをついてみて癖が見えてきたの。私が足元へ攻撃した際にジャンプで回避する傾向がある。その際に、ゲン あなたのギフトをお願い』


 『わかった』


 二人の連携は、シュウのギフト【意識念話(テレパシー)】による効果であった。


 このギフトにより、一定範囲内の指定した人間と文字通り念話をする事が可能となっていた。

  

 確かにシュウの言う通りの展開には何度か成っていたが、打ち合っているうちに、相手の男が手加減をしているように感じていた。


 そのため、不穏な空気が漂っていた。


 その嫌な予感を払しょくできないまま、先ほどシュウが話していた通りの展開が訪れる。


 ゲンが剣戟を受け止め、そのスキをシュウが足元を薙ぎ払う形で槍による攻撃を行う。


 予想通り騎士風の男はジャンプで回避する。


 そこに


 「ウォォォォォォ!!!!」


 ゲンのひときわ大きい声が響き渡る。

 

 これはただの雄たけびではなく、ゲンのギフト【麻痺一喝(パラライズシャウト)】であった。


 効果としては、この声を聞いた対象の中で自分が意識した"一人"に対して一定時間の麻痺効果を付与するものである。


   

 騎士風の男が、ジャンプ中という無防備なタイミングで【麻痺一喝】を受け、硬直したように見えた。


 『勝った…!』『決まったわね』


 二人が勝利を確信した瞬間であった。

  




 ラフィアットの目の前で攻防はさらに続いていた。


 何度目かの攻防の後、急にゲンという少年が雄叫び(おたけび)を挙げた。


 「ウォォォォォォ!!!!」

 

 風と同時にビリビリという威圧のようなものを感じる。


 「ッ!!」


 それを間近で受けたジェイグの表情が驚いているようにみえた。


 そこに、態勢を整えたゲン、シュウ二人の攻撃が襲い掛かった。


 (危ないっ!)

 

 私がそう思った瞬間、ジェイグの体が消えたように見えた。


 そして、ゲンという少年が吹き飛び、後ろへ回り込んだジェイグがシュウという少女の首筋に剣を添えていた。


 一瞬にしての勝負ありであった。


本作をお読み頂きありがとうございます。


少しでも面白いと思って頂けましたら、

ブックマークの追加とページ下部にある評価をお願いいたします。


特に評価ポイントは、作者のやる気に直結します!


宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ