第3話 商人パルポロム
「ハァ…。干ばつに強い小麦畑の開拓が思った通り進んでおらんな…。 最近ゴルギロム領との交易も山賊の被害により赤字が続いておる。倒れるものも増えて人手も不足。食糧、水も当然不足しておる。他の商人たちも毎日この問題について相談をしてくる始末…」
腹の出た商人パルポロムは、事業が上手くいっていない事に頭を悩ませていた。
パルポロムは、このアタナスの街で何代も続く商家の生まれではあったが、そこまで大きい商家ではなかった。しかし、持ち前の才能により飛ぶ鳥を落とす勢いで事業を拡大し、今では街一番の商人となっていた。それが、急な人手不足や治安の悪化により失敗しはじめたのだ。何者かの暗躍かと思い、調べていたが証拠も何も出て来ず。更に頭を悩ます事態となっていた。
「パルポロム様!レモス伯爵の跡取り様が面会したいとこちらに参っていますが、いかが致しましょうか?」
秘書がそう伝えてきた。
(パトリック様の跡取り?確か、まだ幼子だったと思うが、何用か?)
「ふむ…。お会いするから、客間へ通しなさい」
「ハッ!承知しました」
(この忙しい時に、子守とは…。これ以上悩みの種を増やしてくれるなよ…?)
パルポロムは、深く息を吐き、気持ちを切り替えてから自分も客間へと向かった。
「ラフィアット様 パルポロムと面会が可能との事です」
「ありがとう、ジェイグ」
子供の我儘を何一つ嫌な顔せず聞いてくれるジェイグへ感謝しつつ、パルポロム家の客間へと向かった。
客間へ着くなり、すぐに調べる事があった。
【市場調査】を連続で使用する。
Q:パルポロムのレモス家に対する忠誠心はある?
A:YES
Q:パルポロムの家族構成は?
A:独身(直系尊属無し、兄弟姉妹無し)
Q:パルポロムの収入源 TOP5は?
A:【1位】輸送業【2位】加工業【3位】木材販売【4位】穀物販売【5位】開発業
Q:パルポロムの悩み TOP3は?
A:【1位】働き手の減少 【2位】働き手の能力低下 【3位】各事業の赤字
Q:パルポロムのここ数年の収入はそれぞれいくら?ここ数年の支出はそれぞれいくら?
…etc
(なるほど…。ジェイグは曲者って言ってたけど、意外とまともな人なのかも?)
まだまだ調べたい事はあったが、扉がノックされ途中で太った男が部屋に入ってきた。
「これはこれは、初めまして!パルポロムと申します。ジェイグ殿ご無沙汰してますな」
「こちらこそ、初めましてラフィアットです。急に押しかけてすみません。どうしても話したい事がありまして」
「ほほう、ラフィアット様はまだ6歳とお聞きしておりましたが、しっかりしておられる。話したい事とは何でしょうか?」
「単刀直入に言います。税金を上げさせてください」
「ハッ!? ハハハハ。急に何の話でしょうか?ラフィアット様は街の現状をご理解されているのでしょうか?
子供のお遊びでは、すまない話ですぞ?」
「パルポロム殿失礼だぞ!」 ジェイグが語気を強めて抗議する。
「ジェイグ 大丈夫だから。パルポロムさん言葉足らずですみません。私が伝えたいのは、税制を変えたいという事です。
固定税ではなく、超過累進税率制へ変更したいという事です」
「へ?チョウカ?なんですって?」
「超過累進税率です。住民全員が同じ額を払う税制とは違い、収入の大きさによって税を変えるという手法です」
「そんな制度聞いたこともない。なんでそんな話を?」
なかなか伝わらないので、具体的な数字例を用いて説明する。
「ふむ…。その制度自体は分かりましたが、それでは私の税金が急に数百倍になります。そんな話聞けるわけがない」
「はい。今年はそうですね。ただ私の計算では5年後にはパルポロムさんは得をすることになりますよ」
「何をバカなことをおっしゃいますか…。金勘定は子供のままごとではないのですぞ?」
適当な事を言っていると思ったのか、パルポロムは呆れた顔で答えた。たかが6歳の子供が急にお金の話をしてくるのだ、当然信用できないし、もし同じ立場であっても同様の反応をしただろう。私は理解してもらえるよう根気よく説明することにした。
こうなったら、前世の知識をフル活用する事にしよう。
「もう少し分かりやすく説明したいので、紙とペンを貸して頂けますか?」
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