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第20話 暗の絶傑

 暗の絶傑ザツは今回も簡単な仕事だと天井に潜みながら油断していた。


 過去に一度も暗殺を失敗したことがなかったのも理由の1つであった。


 ザツはギフトに恵まれており、珍しく2つのギフトを持って生まれた。


 1つは、【完全透明(インビジブル)】、もう1つは【心臓停止(ハートブレイク)】である。


 【完全透明】の方は、姿はもちろん、足音や吐息なども消音でき、完全に人の知覚から気配を遮断できるものであり、


 もう1つの【心臓停止】は、心臓に近い場所に手のひらで衝撃を与える事で相手の心臓止めるという即死系ギフトであった。


 なので、人に気づかれずにほとんど外傷も残すことも無く暗殺が可能であった。

 

 この日は、2人のターゲットの内1人を既に暗殺済みであった。


 いつもならもっと安全を期して、深夜に仕事をするのだが、今回はターゲットの守りが手薄な事と早急に終わらせるよう指示されていたため、単純に急いでいた。


 後は、このまま天井に潜み、ラフィアットというガキが1人になったところを仕留めるだけであった。

  

 ターゲットが何やら紙に書いたものを、領兵の男に見せている。


 こちらからだと、角度的に手に隠れ見えない。


 別に見る必要は無かったのだが、そうやってコソコソ隠れてやり取りされるとどうしても気になってしまう。


 もう少し見えやすい角度へ、ゆっくりと移動した。


 その瞬間、領兵の男がすさまじい速度でこちらを目掛けて切りかかってきた。






 「グアッ!!!!」


 何もなかった天井の空間から、急に人が現れて地面に叩きつけられる。


 「仕留めたつもりだったが…。ラフィアット様気を付けてください。こいつは思った以上に手練れのようです」


 敵は致命傷こそ免れていたが、かなりダメージを与えているように見えた。

 

 「ちっ。仕方あるまい…」


 そういいながら、敵は片刃のナイフを2本両の手に構えた。

 

 いわゆる小太刀二刀流というやつに見える。


 「ラフィアット様!私の後ろへ!」


 「う…うん」


 後ろへ移動しようとした矢先に


 ビュンッ!


 キンッ!


 敵が投げたナイフをジェイグがはじく


 「貴様…何者だ…」


 投げナイフがはじかれたのが意外だったのか、敵は驚いていた。


 その隙をついて、ジェイグが切りかかるが、小太刀で器用に受け流される。


 しばらく、打ちあっていたが中々決め手に欠ける状況が続いていた。


 しかし、徐々にジェイグの動きが素早くなり、初撃のダメージもあって敵は押され始めていた。


 「ク…もう一度聞く…貴様何奴だ…このザツをここまで追いつめるとは…」


 「私はアタナス領のジェイグ。ただの領兵だ」


 話をしながらも、鋭い連撃をジェイグは放ち続けていた。


 (すごい…。速すぎて見えない!)

  

 今までジェイグの本気を見た事がなかったが、ここまで強いとは思ってもみなかった。


 クランの冒険者たちが模擬戦をしているのを初めて見た時、人間離れしていると素直に感動したが、今のジェイグの動きは、それらとは比べものにならないくらい凄かった。


 敵も押され始めてはいたが、器用に2本の小太刀で剣戟(けんげき)を受けとめ、体術で攻撃したり、ナイフや何かしらの粉(毒だろうか?)を投擲(とうてき)してくる。


 対してジェイグは、体術は回避し、ナイフは剣で(はじ)き、粉は剣の風圧で吹き飛ばす。


 1秒1秒の攻防だが、ジェイグの判断は全て正しい対処を行っているように見えた。


 流石の敵も焦りが生じ始める。そして、ふと気づいたかのように言葉を放った。

 

 「貴様の顔どこかで見覚えが…!そうか、死んでいなかったのか、王国最強の騎士団長ジェイガン・マーシャル!!」


 「知らないな。私はただのアタナス領兵ジェイグだ」


 ズンッ!


 今までで一番鋭い突きが敵を貫く。怯んだ瞬間をジェイグは見逃さなかった。





 ジェイグが言うには、強敵との事だったが、結果的にはノーダメージで倒していた。


 「グ…。こんなはずでは…。最後に聞かせてくれ…。なぜ私の居場所が分かったのだ…」


 「詳しくは言えないが、お前が居たと分かった瞬間。部屋の(ほこり)の流れに異変を感じたからだ」


 「そうか…。完全に油断していた…。しかし、私も絶傑の一人…。このままでは終わらんっ…!」


 ピーーーーーーーッ!


 そう言いながら、侵入者は笛のような物を吹き倒れた。


 「ジェイグありがとう。それにしても今の笛の音は…?」


 「ラフィアット様こそ冷静な判断お見事でした。先手を打つ事で倒せましたが、かなりの手練れでした。先ほどの笛の音は、他の侵入者に知らせるものだと思われます。恐れ入りますが、侵入者の存在を調べて頂けないでしょうか?」


 無言で(うなず)き、すぐにギフトを発動させる。


 【市場調査】

 Q:レモス邸屋敷にゴルギロムからの刺客は他に何人いる?

 A:1人


 Q:レモス邸敷地内にゴルギロムからの刺客は他に何人いる?

 A:6人


 Q:アタナス領内にゴルギロムからの刺客は他に何人いる?

 A:6人


 ジェイグの予想通り他にも侵入者が居る事が分かった。幸い敷地内にしか敵はいないようだ。


 すぐに、シュウへ連絡を試みる


 『シュウ…!聞こえる?』


 『ええ、聞こえるわ…どうしたの?』


 『落ち着いて聞いてほしい。先ほどまで執務室に暗殺者が隠れていたんだ。こちらはジェイグが撃退したから無傷だし大丈夫。シホと連携して刺客が近くにいないか調べて欲しい。敷地内には後6人潜んでいることは分かった。屋敷の外には居ない』


 『……。分かったわ。外には居ないなら、弟たちを連れてアルティアさんのところに(かくま)ってもらいにいくわ』


 『話が早くて助かる。ちなみに先ほどの刺客は姿が見えなかった。さすがに全員見えない事は無いだろうけど、注意してほしい』


 『ええ…ありがとう。ラフィアット君も気を付けて』


 シュウとの【意識念話】を通した会話を済ませてからジェイグに【市場調査】の結果を話す。


 「とりあえず、敷地内に残り6人の刺客が潜んでいる事が分かった。先ほどの笛の音で敵がここへ集まってくるかもしれない。一度外に出よう」


 いくらジェイグが強いとはいえ、6人の刺客が同時に攻めてきた場合、私を守るのは難しいだろう。そう思っての提案だった。

 

 「かしこまりました。それでは裏口から出てゲンたちと合流しましょう」

本作をお読み頂きありがとうございます。


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