第2話 初めての調査とアルティア
「お父さん!しっかり!」
倒れた男は体格は屈強ながらも顔色が悪かった。そして、男の傍らで私と同い年くらいの赤毛のポニーテールの女の子が声を上げているのが目に入った。
「どうしたの?」
「お父さんが急に倒れたの!」
「ここからお家は近い?」
「うん、そこの角を曲がった先!」
「ジェイグ。手伝ってもらってもいいかな?」
私の力ではどうやっても大人を運ぶ事ができないので、ジェイグへお願いする。
そして、その女の子の家へ到着した。
「熱があるね…。でも汗が出ていない。この家に水はあるかな?」
「雨も降っていないし、最近暑いから井戸が干からびてしまったの…」
私の問いかけに対して、赤毛の少女は悲しそうに首を振った。
「そうか…。ジェイグ、川で水の調達をお願いできるかな?」
「しかし…。ラフィアット様の傍を離れる事はできません」
「頼む。私の事なら大丈夫だ。いざというときはこの家の井戸の中にでも隠れさせてもらうさ」
「……。かしこまりました。すぐに手に入れて戻ります」
そういいながら、ジェイグは慌てて出て行った。
待っている間、私は少女へ質問することにした。
「お父さんは何のお仕事をしているの?」
「少し離れたところで麦畑を耕してるの。それと輸送の仕事もやっているわ」
「お母さんは、どこにいるの?」
「お母さんは私が生まれた時に死んじゃったらしいからいないの」
「そっか……。私と同じだね」
少し気まずい空気になりかけたところで、ジェイグが水を持って戻ってきた。
「これをお父さんに飲ませてあげて」
「ありがとう!!お父さんきれいなお水だよ」
少女の父親は水を飲み、小一時間ほど待つと父親が意識を取り戻した。
「う…。ここは?」
「お父さんっ!大丈夫?ここはお家よ。この人たちに助けてもらったの」
「そうか…。すみません、お手を煩わせてしまって…。何かお礼を差し上げたいのですが、いかんせん何もございませんで…」
「気にしなくて大丈夫ですよ!今日みたいな暑い日はお水を忘れずに飲むようにしてくださいね!」
(単なる熱中症みたいでよかった…)
親子に感謝されながら、家の外に出たところで赤毛の少女から呼び止められる。
「待って!」
「本当にありがとう。私いっぱいいっぱいで自己紹介するの忘れていたの…ごめんなさい。私はアルティア。いつか必ず今回の事はお礼させてもらうわ!」
「うん、ありがとう。私はラフィアット。あそこに見える館に住んでいるから、何かあったらいつでも訪ねてきて欲しい」
「えー…!領主様だったの!?ごめんなさい。私失礼な言葉ばっかり言って…」
「ハハハ…。私はただの跡取りであって、領主ではないから、言葉使いなんて全然気にしなくて大丈夫だよ。これからもよろしくね!」
少女は驚いていたが、自分自身まだ何も成し遂げていないので、領主の跡取りと自分から名乗るのは少し恥ずかしい。
「うん!」
これが同い年の少女アルティアとの初対面の出来事であった。
居住区を後にしながらもう一度ギフトを使用する。
【市場調査】
Q:居住区に住んでいる領民の年収における平均税率は?
A:約80%
(やはり…。ひどいっていうレベルではない。日本では超過累進税率という課税方法を採用しているが、この国は元世界の中世と同様固定税率なのだろう…)
「ジェイグ…。商業地区の方にも案内して欲しい」
「かしこまりました」
ジェイグに連れられて、商業地区に足を踏み入れた。
商業地区という名前ではあるが、実際は商業以外にも商人などの一部な裕福な人間たちが住んでいる場所でもあるとの事だった。
もう一度ギフトを使用する。
【市場調査】
Q:商業地区に住んでいる人間の年収における平均税率は?
A:1%未満
先ほど思案した通り、固定税率による貧富の差が生まれている事が明確となった。
「この街で一番大きい商家は誰にあたるのかな?」
「あちらに屋敷を構えるパルポロムという商人が一番の実力者であり、一番の金持ちとなっております。この街の商人を束ねる存在でもあります」
「その人に今からお会いする事ってできると思う?」
「留守でなければ、会えるでしょう。ですが、かなりの曲者ですので、ラフィアット様を不快にさせるかもしれません」
「急に会いに行くんだし、こっちの方が失礼だと思う。だから何を言われても気にしないよ」
「分かりました。屋敷に向かいましょう」
そして、ジェイグに連れられレモス邸とおよそ同じ大きさのパルポロムという商人の家へ向かった。
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