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第18話 異世界での株式情報

 それから3年の月日が経過し、12歳となった。


 バカーンの件については、無事王都で裁かれたという話を父から聞いていた。


 隣の領主ギロムの目的は結局不明のままだったが、あれ以降何も起こっていない。何かしら裁きが下ったのだろうか?


 前世と違い、通信手段が無いので他の領地の話などは普段耳にする事が殆ど無い。何にせよ平和な時間を過ごしていたのは間違いない。


 冒険者たちの迷宮攻略も上手くいき、他の領地からも投資が頻繁(ひんぱん)に行われるようになってきた。


 アタナスの迷宮の難易度は高いままであったが、冒険者のレベル自体が上がり、質の高い遺物を安定的に獲得できるようになったため、確実に利益を上げていた。





 最近ではギルドの掲示板に各クランの株式情報を記載するようにしている。


 具体的な株式情報は、株価、信用リスク、攻略回数、最深階層、そして配当である。


 前世と違い、リアルタイムでの更新は難しいので、株価については終値(おわりね)のみで表記を行う。


 信用リスクは、クランの強さを表している。攻略回数と最深階層については、その言葉の通りである。

 

 配当は株価に対しての報酬で%表記にしている。


 現在人気の4クランの株式情報は以下の通りとなっている。


 ①ライリー冒険団

 株価:210銅貨

 信用リスク:AA

 攻略回数:12回/年

 最深階層:11

 配当:1%



 ②ビーグ一派

 株価:155銅貨

 信用リスク:A

 攻略回数:15回/年

 最深階層:7

 配当:1%



 ③ザ・ガーデン

 株価:90銅貨

 信用リスク:BBB

 攻略回数:5回/年

 最深階層:8

 配当:1.5%


 ④Nマイスター

 株価:80銅貨

 信用リスク:BB

 攻略回数:4回/年

 最深階層:5

 配当:2%


 他にも様々なクランはあるが、信用リスクがB以下のクランは全滅の危険性も高くなるので、慎重に投資する商人が多い。


 また、投資する株主の特典として、迷宮で取得された遺物を優先的に購入権利が生まれるので、より深くまで攻略しているライリー冒険団の株価が値上がりし続けている状況である。


 ギルドへ株価だけを見に来る客も増えたため、冒険地区の治安も良くなってきていた。


 そして喜ぶべき事に、天晴箱の停止により日照りも収まったため無事に雨が降り始めた。そのため、農業も豊作続きとなっていた。


 【市場調査】


 Q:アタナスの街の住人について、自分が幸せだと思う割合は?

 A:約84%


 数年前までは、殆どの人がその日食べるものにも困っていた。そこからするとかなりの進歩だと思う。

 

 全てがうまくいき、この街の明るい未来しか見えていなかった。


 そんな中でも確実に悪の手が延びているのをこの時の私は知る由もなかった。



 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 



 「どうなっておるんだ!!」


 ガシャンッ!


 酒の入ったグラスが壁に叩きつけられ割れた。


 ゴルギロムの領主ギロムの怒りは限界に達していた。


 「申し訳ございません。ただいま火の絶傑リッシー様へ確認中なのですが、連絡がうまくとれておりません」


 秘書官は、顔面蒼白になりながら言い訳をする。


 「ふざけるな!あれから4年も経っているんだぞ!どうなっているんだジョウト!!お前の見立てだと後2,3年という話だったではないか!」


 そう言われると暗がりより、知の絶傑ジョウトが姿を現し返答した。


 「フム…。ワレの計算は完璧でした。とするとリッシー殿の報告自体が虚偽である可能性は高いですな」


 「グヌヌヌヌ」

 

 「ワレが現在の状況を調べたところ、アタナス領は今や活気に溢れ、迷宮攻略も順調とのことでした。報告とは全然違いますな」


 「なんだと!?迷宮が攻略されアタナシアが見つかってしまったら、長年の計画が全て無となるではないか!!!」


 「時間の問題かと。真に残念ですがこのままでは数年以内に見つかるでしょうな。リッシー殿は裏切ったんでしょうな。一言で済ませるならばただの人選ミスですな」


 「貴様…ワシを愚弄(ぐろう)しておるのか?」 


 「いいえ、ただ最初からワレに命ずればよかっただけの事ですな」


 「では、お主なら今からどう計画を変更するのだ。答えよ!」


 「もう正攻法は無理でしょうな。元々の別案を採用なされよ。私ならザツ殿に命じますな」


 「ちっ。やはり回りくどいやり方でなく最初からそうしておればよかったわ。その場合は王都側の対処が必要になる。ジョウトよ、全面的にそちらは任せるゆえ完璧に仕事をこなせ」


 「よろしいでしょう。王都の根回しはワレの方で済ませましょう。一人では手が足りぬので、人手をお貸し願いますな」


 「分かった好きにしろ。おいお前!暗の絶傑ザツをここに呼べ」

 

 「はっ、かしこまりました」


 そう言われて、秘書官は急いで部屋から出て行った。


 「クソ…何が起こっておるんだ。あちらの領主パトリックに能がないのは知っておる。大した人材がいない事も把握済みよ。だとするとリッシーが裏切ったのは明白か…。許せぬ…」


 「ギロム様…」


 急遽何もいないはずの天井から声がする。

   

 「ザツよ。来たか…。今から最重要命令を下す」





 部屋から出たジョウトは1人で廊下を歩いていた。


 (ファファファ…。ラフィアット本当に素晴らしい。ここまで領地が短期間で発展するとは…。では、私から1つ目の試練お手並み拝見ですな。これで死ねばそれまでの人間だったというだけの事)


 そう思いながらも、同じギフトの持ち主であれば、必ず生き残るとジョウトは確信を持っていた。


 暗い笑みを浮かべながら外へと歩みを進めるのであった。

本作をお読み頂きありがとうございます。


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