第16話 知の絶傑
アタナスから王都までの道のりは、馬車でおおよそ1か月ほどかかる距離であった。
リッシーとその一味は、馬車に揺られながらも何とか脱走できないか企んでいた。
「ムムムム…。私があんなガキどもにやられるとは…。なぜあいつらは揃いも揃ってレアギフト持ちばかりなのだ!思い出すだけで腹が立つ!」
「リッシー様落ち着いてください!もう少しでそのカギが開きますので…。大きい声を出すと役人どもに気づかれてしまいます」
「ム…すまんな。馬車から抜け出してもゴルギロムへは戻れんな。ギロム様に処分されてしまう…」
「まずは、どこか隠れられる場所を探しましょう」
「そうだな…」
その後、しばらく大人しくしていたところ
カチャリッ
「開きました!」
一人の部下が小声で喜んだ。
「ムム!よくやった!すぐに逃げよう!」
その時の事だった。急に馬車の動きが止まったのだ。
「き、気付かれたか!?」
緊張のあまり全員身動きが取れなくなる。
「これはこれは、リッシー殿久しぶりですな」
「ムム!お主は……!」
顔が暗がりで見えないが、声と独特な空気で直ぐに相手が誰かは察することができた。
「ジョウト殿か…。助けに来てくれたのか…?」
相手は自分と同格…ギロムの部下の中でも極めて優秀な十人、十大絶傑の1人"知の絶傑ジョウト"であった。
「そこまで難しい任務では無かったと思いますが、何があったのか知りたくて来た訳ですな」
「ムハァ…。そうか。この件をギロム様は?」
「ギロム様は今回の失敗自体まだ知らないですな。ここに来たのは私の独断ですな」
「そ、そうか…」
それを聞いてもリッシーは安心できなかった。
(ム…。こいつは得体が知れない。何を考えているのかも今一掴めん)
このジョウトという男は同じ絶傑でも不気味な存在であった。一番の理由としては取得しているギフトの所為でもある。
「得体が知れないとは失礼ですな」
「ムムム!」
ジョウトのギフトは、【心理把握】というもので相手の考えている事が全て分かるという最強レベルのギフトであった。
「私の計算では、今回の任務の成功率は100%であったはずですな。ほう…その子供に阻止されたと?」
何も話していないのに、次々と考えを読まれてしまう。こういう事が拍車をかけて不気味に感じさせる。
「なんと!その子供のギフトが【心理把握】だというのですかな!?」
急にジョウトが興奮し始めた。
「ムム。そうとしか言えなかったのでな。それにその息子が集めていた孤児がレアギフト持ちばかりだった。そういうところはジョウト殿に似ているのかもしれん」
「それは僥倖ですな!プランを変えざるを得ないですな」
ここまで興奮しているジョウトを見た事がないため、少し引いてしまう。
「ムムム…プランとは何のことだ?」
「本来はリッシー殿をギロム様の元へお連れするつもりでしたな。しかし、そのラフィアットという子供に興味が湧いてしまったんですな。このままリッシー殿を連れていき、計画が失敗した事を知ると、ギロム様は暗殺という手段を取るでしょうな。そうなると勿体ないですな」
次々とジョウトから語られる言葉に寒気がした。ギロムへの忠誠も見られないし、その事を隠さずに話す事についても違和感を感じる。
「決めましたな。ギロム様への時間稼ぎのため。今回の失敗は隠す事にするんですな。その間にどのくらいアタナスがマシになるのか楽しみですな」
「ム!なんだと!?そんな事できるはずがない。それに役人はどうするのだ?私が王都に着かなかった場合、王側が気づき始めるのだぞ!」
「役人なんてここにはいないですな。王都に着かなかったとしても揉み消すのは簡単ですな」
馬車が止まってからすでに数分経過している。役人がいるのであれば真っ先に馬車の中を確認してくるだろう。しかし、一行に来る気配が無い。そもそも、人の気配を感じない。元々役人ではなくジョウトの部下だったという事なのか?それとも買収されたのか?あるいは……。
「ム…!私たちをどうするつもりなんだ!?」
リッシーは不安が込み上げてきたため、悲鳴に近い言葉を大声で発した。
「さぁ、どうしましょうかな…。ファファファ」
その状況を楽しむかのように、ジョウトは不敵に笑った。
その後、リッシー一行を乗せた馬車は忽然と姿を消した。そしてリッシー自身も表舞台から姿を消したのだった…。
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