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元サラリーマン、フランス空母を検討する(1)

 私の名は市ヶ谷岩雄、かつてはただのしがないアラフォーサラリーマンをしていたが、今は違う。

 今はその生涯に幕を閉じ、転生後の新たな人生を歩むための一歩を踏み出している。


 その一歩とはつまり、転生後の異世界に連れて行く現代空母を選ぶ事だ。


 とはいえ考慮の末にアメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦がベストではないか? との結論にいたったが、まだ結論を早急に出す時ではない。


 アメリカ以外の国の空母も検討すべきであろう。


 そんなわけで今回はフランス空母を検討してみようと思う。

 しかし、フランス空母もまた検討すべき対象がほとんどない……


 というよりも、フランスはそもそも歴代の空母をすべてあげても指で数えられるほどしか空母を建造していないのだ。


 フランスは第1次大戦前に世界で初となる水上機母艦フードルを完成させた国であるが、第1次大戦後、最初に完成させた空母ベアルンは最初から空母として建造されたものではなく建造途中で中断していた弩級戦艦を空母に艦種変更して改装したものであった。


 そのため低速であり、黎明期の航空機を運用するには問題なかったが驚くべき早さで技術革新する航空機の進化についていけず、すぐに旧式の航空機しか運用できない代物になってしまった。


 そして、そんな空母ベアルン1隻だけでフランスは第2次大戦を戦い抜いたのだ。


 とはいえ当然、低速で最新の航空機を運用できないベアルンに前線での活躍の舞台はない。

 なのでベアルンはアメリカで優秀な航空機輸送艦に改装され、航空機を各地に届ける役目に集中した。

 空母としてではなく航空機輸送艦としてである。


 フランス空母の第2次大戦における戦果はこれだけだ。

 しかし、これは仕方のない事だろう……


 一様フランスもドイツのグラーフ・ツェッペリン級空母建造に対抗するため、ジョッフル級空母を大戦前に建造していたが、様々な理由で完成は遅れ、2番艦パンルヴェに関しては起工すらされなかった。

 結果、第2次大戦に間に合わなかったのだ。


 フランスはドイツの電撃戦を前に第2次大戦が始まってすぐに敗戦、占領されてしまう。

 フランス軍は国土を捨て、アメリカなどに亡命するが、その際ドイツの手に渡るのを阻止するため、海軍の多くの艦船は自沈処分となり、建造途中の空母はドッグ内で解体となった。


 だからこそ、フランスは大戦中に自前の空母を手にできなかった。

 亡命した自由フランス軍にはイギリスやアメリカから武器が供与されたが、自分達で新たな武器は当然開発できない。


 ドイツに占領されナチスの傀儡政権となったヴィシー政権もドイツの兵器の生産は任されるが、フランスの新兵器開発など許されるわけがなかった。

 だからこそ空母に限らず、第2次大戦を通してフランスの新兵器というものは登場していないのだ。


 そんなフランスは国土を取り戻した戦後、ようやく兵器開発を再開するが、空母の開発には時間がかかった。


 とはいえ、空母が開発、建造されるまでの間にもフランス海軍に空母は存在したのだが、それは戦後にアメリカ、イギリスから供与された空母であった。


 一様はPA28計画という国産空母建造計画は生まれはしたが、これは財政面や戦略上の理由でキャンセルされる事になる。

 次なる国産空母PA54計画を結実させるため、フランスはアメリカからの供与空母で運用能力を確実に学んでいき1955年、ようやくPA54計画は承認され起工となる。


 こうして1961年、フランス念願の国産空母クレマンソー級航空母艦が就役した。


 クレマンソー級空母は1番艦クレマンソーと2番艦フォッシュの2隻が建造されるが、これらは長くフランス海軍の顔として40年近く現役に留まった。


 そして老朽化に伴い1番艦クレマンソーは1997年に退役するが、2番艦フォッシュは2000年に退役後ブラジル海軍に売却され、ブラジル海軍の空母サン・パウロとなる。


 ちなみに、このブラジルに売却された空母サン・パウロに関してだが、イギリス空母を検討した際にも少し触れた通り、ブラジル海軍でもすでに退役している。


 これは仕方がない事で、空母サン・パウロというか空母フォッシュはフランスで40年近く活動して老朽化していたのだ。

 特に蒸気式カタパルトの不具合、能力不足は深刻であった。


 そんな艦艇、いくらブラジル海軍が再就役させるにあたりアップグレードしようが限界があるというものである。

 現に空母サン・パウロがまともに活動できたのは再就役した2001年から2004年までの3年間のみで、それ以降は港から出る事はそう多くはなかった。


 そんな中2012年に発生した火災事故がトドメとなったのは間違いないだろう。

 ブラジル海軍としても今後も空母を運用していきたいため、火災事故の修理復旧も含めた老朽化した艦の延命処置およびアップグレードをこころみたが費用が莫大すぎるどころか、一様はアップグレード後2039年まで現役に留まれる予定であったが、多額の費用を注ぎ込んでも精々数年しか延命できないとわかったのだ。


 40年近い艦齢の旧式空母にそこまでする意味はない……

 そんなわけでブラジルは空母サン・パウロを2017年に退役させスクラップに出したのだが、紆余曲折を経てこれを落札したトルコがなんと、スクラップにする前にトルコ初の国産空母開発のために、一度改修して練習空母として再就役させる計画を打ち出したのだ。


 ようは国産空母建造のためのノウハウや技術を学ぼうというらしい……

 ブラジル海軍が古すぎて放棄した艦艇から一体何を学ぼうかという話だが、実際似た事例で中国が空母を就役させている。バカにはできない話だろう。


 しかし、この話の実現性は薄く、当のトルコ国内からも否定的な意見が多くでている。

 曰く、空母建造のノウハウをサン・パウロの解体作業によって得られるかもしれないが、空母運用のノウハウを学ぶ練習プラットフォームとして使用するため改修するにはその費用がもったいない。

 そんなものに金を回すなら空母開発に必要なシステムの構築や研究に費用を回すべきだ。というわけである。


 これは最もな意見だろう。

 そしてサン・パウロはそのままスクラップとなるはずだ。

 しかし、トルコの国産空母を巡る事情を鑑みれば今後どうなるかはまだわからない……


 ちなみに、スクラップにするサン・パウロを落札したのはトルコだが、実は韓国もこの落札競争には加わろうとしていた。

 そして、その理由も上記にあげたものであった。


 韓国としても建前としては北朝鮮、恐らく本音では変化する周辺国(日中露)情勢に対応するため自前の軽空母を導入しようという思いがあり、スクラップに出されたサン・パウロを研究し、あわよくば再整備して練習艦として就役させようと考えたわけだが、当然これには国内からも懐疑的な声が続出した。


 結局のところ、中国が購入したスクラップを空母として再就役させた実績を打上げてしまったため、他国も「このやり方ならいけるんじゃね?」と思い始めたわけだ。


 とはいえ、スクラップにするサン・パウロを落札したのがトルコという事からもわかる通り、結局韓国のこの思惑は国民的な議論になる前に立ち消えてしまったわけだが……



 少し脱線してしまったが、フランス空母に話を戻そう。


 フランスはクレマンソー級空母2隻を就役させた直後の70年代から、クレマンソー級空母の後継艦について検討をはじめた。


 当初は当時の主流であったの垂直・短距離離着陸機を運用する軽空母を3隻建造する構想であったが、これでは海軍の求める要求には合致しないとなり、この案は却下される。

 結果、クレマンソー級同様の大型の原子力空母2隻の建造が承認された。


 原子力推進の空母は1960年に就役したアメリカの空母エンタープライズが世界ではじめてであったが、後を追うようにソ連も研究を重ね、ついには原子力空母のウリヤノフスク級の起工までこぎ着けるがソ連崩壊によって、これは未完成に終わった。

 結果、フランスはアメリカ以外では唯一の原子力空母保有国となったのだ。


 その原子力空母の名はシャルル・ド・ゴール。

 現在フランスが保持している唯一の空母である。


 とはいえ、このシャルル・ド・ゴールは順風満帆な船出だったとは言い難い。

 そもそも当初は原子力空母2隻を建造する予定であったが、予算が確保できず、建造開始は当初の予定から大きくずれ込んだ。

 結果、当初の計画では1992年就役となるところが2001年就役と大きく遅延し、建造数も2隻から1隻に減らされ、シャルル・ド・ゴールのみの就役となったのだ。


 と、まぁ予算不足で思い描いた艦隊を作れない、艦隊構想を実現できないのはどの国にもついて回る共通の悩みの種だ。

 とはいえ、シャルル・ド・ゴールはフランスが保持する唯一の空母となっていまった分、その内容は充実したものとなった。

 個人的にはシャルル・ド・ゴールは大いにありだと思うが、その内容を精査してみよう。

特にオチもない短い連載作品になるかと思いますが、気が向いたら☆評価なりブクマなり感想ください

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