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元サラリーマン、アメリカ空母を検討する(2)

 F-35Cが搭載されてるからという理由はアドバンテージにならない、そう一瞬考えたが、しかし即座にその考えを否定した。


 そもそもF/A-18E/F スーパーホーネットは設計がかなり古い機体だ。

 F/A-18 ホーネットの改良型とはいえ、航続距離が短く戦闘行動半径も決して広いとは言えない。

 旋回速度もあまりいいとは言えず、搭載ミサイルも1世代古い。


 とはいえ、これは地上の長い滑走路から飛び立つ通常の戦闘機と比べての話だ。

 空母という洋上の短い滑走路で離着陸する艦上機と、地上という余裕を持って離着陸できる場所で運用する戦闘機とを同じ目線で語ってはいけない。


 とはいえ、その点を考慮してもF-35CとF/A-18E/F スーパーホーネットではステルス性能を抜いてもF-35Cのほうが優れているのは間違いない。


 F-35にはF-35A、F-35B、F-35Cと3つの型があるが、それぞれが別物といっていい代物だ。


 F-35Aは地上滑走路にて運用する型であり、F-35Bが垂直離着陸ができる、いわゆる短い距離、強襲揚陸艦などで離着陸ができる海兵隊が運用する型。

 そしてF-35Cは空母で運用する事を前提に作られた艦上機型、つまりは完全にF/A-18E/F スーパーホーネットの後継機としての開発されている。


 だからこそステルス性能という特徴を取っ払ってもF/A-18E/F スーパーホーネットの悪い部分が改良されており、信頼性は高いのだ。


 うむ、やはりF-35C搭載はアドバンテージとなる。


 しかし、そこでふと考えてしまう。

 このままいけば、F-35Cを搭載した空母を持って異世界に赴く事になってしまうが、それで大丈夫か?


 考えてもみろ、空からの一方的な空爆は確かに相手の戦力を削ぐ。

 制空権の確保は敵の頭上を我が物顔で飛び回れる事であり、敵の士気を下げるには十分すぎるが、それで戦いに勝利できるのか?


 歴史が物語っているではないか!

 空爆だけでは敵は根絶できないと……


 アフガン、イラク、シリアを見て見ろ。

 どれだけ空爆しても、その被害が届かない洞窟などに逃げ隠れられたらお終いだ。

 敵はいつまでも戦力を維持し抵抗を続ける。


 そうなればいつまでも終わらない泥沼の戦争の幕開けだ。


 アフガンがどれだけ泥沼になった?

 ソ連やアメリカの辿った末路を見れば一目瞭然だろう。

 ナパームでジャングルを焼きまくったベトナムは最終的にどうなった?


 太平洋戦争で日本は確かに負けたが、地獄と称されたガダルカナルや硫黄島、沖縄を見て見ろ。

 どれだけアメリカが物量で勝る大艦隊で島を囲み、恐るべき量の艦砲射撃をおこなっても、無数の空母や地上基地から飛び立った爆撃機で空爆を行っても、それでも地下に大坑道を掘り、逃げ込んだ日本軍はこれに耐えて白旗を挙げなかった。


 地獄の玉砕戦、徹底抗戦にもつれ込んだ。


 空母から飛び立った艦載機による空爆にだけ頼っていては異世界版地獄の黙示録が開演するだけだ。

 空爆と同時に地上からの掃討作戦も両立できないといけないだろう。


 ではその能力が空母にあるか?

 残念ながらロナルド・レーガンやジェラルド・R・フォードがそれを有しているとは言い難い。


 それを体現できるとすれば、それは強襲揚陸艦だ。

 強襲揚陸艦は戦闘機などの航空戦力と海兵隊などの地上部隊の揚陸艇を収容し、発進させる事ができる万能艦だ。


 空爆で魔王軍アジトを叩き、すばやく空爆に耐え生き残った地上残党を掃討する軍を送り込むという戦略に合致した艦艇じゃないか?


 うん、これは空母より強襲揚陸艦のほうがいいかもしれない。



 では現在のアメリカの最新の強襲揚陸艦であるアメリカ級強襲揚陸艦はどうだろうか?

 残念ながら、このアメリカ級は論外である。


 なぜかと言うと、この最新の強襲揚陸艦アメリカはウェルドックを廃止して航空機運用能力を強化した艦艇であり、そのため強襲揚陸艦というよりは軽空母に近い形になってしまったからだ。


 ウェルドックとは、艦艇の船尾に設置されるデッキ状のドック式格納庫であり、これによって強襲揚陸艦内に収納したLCAC揚陸艇などのエア・クッション型揚陸艇を効率よく運用できるのだが、アメリカ級ではこれが廃されている。


 一様艦内にエア・クッション型揚陸艇は収容できるが、航空機運用能力を優先したため前級から搭載できるエア・クッション型揚陸艇の数は減っている。


 何よりウェルドックがない以上は洋上から素早くエア・クッション型揚陸艇を発進させる事ができず、強襲揚陸艦の強みは減った。


 とはいえ、これには最前線で任務につく海兵隊から不満の声が噴出しており、3番艦以降は元のウェルドックがある形に戻るという。

 これによって航空機運用能力は大きく下がる事になるが、強襲揚陸艦はあくまでも強襲揚陸艦、軽空母ではない。

 これは目を瞑るしかないだろう……


 では既存の強襲揚陸艦ではアメリカ級の前級であるワスプ級強襲揚陸艦が大本命だろう。

 LCAC揚陸艇は3隻収容でき、LCUなら2隻収容できる。

 車両も戦車が5両、歩兵戦闘車が25両、自走榴弾砲が8門、各種トラックや兵站車両が多数搭載可能と戦力輸送能力はバッチリだ!


 肝心の艦載機に関しては大型ヘリにオスプレイなどの輸送ヘリが搭載されているが、戦闘機に関しては垂直・短距離離着陸機のAV-8B ハリアー IIが6機ほどだ。


 問題はこの戦闘機をどう捕らえるかだ。

 AV-8B ハリアー IIは傑作機ではあるが、初飛行が1978年と古い機体である。

 すでにイギリス軍では2011年に運用を終了しており、老朽化が否めないが、強襲揚陸艦における地上への上陸支援などでは信頼は厚い。


 そう、強襲揚陸艦はあくまで艦内に収容した上陸部隊を素早く陸地へと展開するための支援艦艇なのだ。

 だから航空戦力もウェルドックから発進するLCAC揚陸艇などが安全に浜辺へと上陸できるよう航空支援する。

 その目的が強い。


 だからこそ、機体の航続距離がそこまで長いものは求められていない。

 うん、この点は魔王軍本拠地を叩く際、どう影響するだろうか?


 しかし一方で、アメリカ級でなくともワスプ級でもAV-8B ハリアー IIからF-35Bに機種変更する計画は進んでおり、航続距離の問題も空中給油機の役割を兼任できるオスプレイの海兵隊型であるMV-22Bを搭載する事でクリアしようとしている。


 となれば艦載する戦闘機をF-35Bにすればワスプ級は大本命と言えなくはないか?

 うん、ワスプ級で決定だ!!


 しかし、本当にそれでいいのか?

 空母を所望しようと思っていたのに、結果ワスプ級強襲揚陸艦のワスプを所望する……この結論は正しいのか?


 答えを出すのはまだ時期尚早な気がする……

 もう少し、他国の空母も検証してみよう。

特にオチもない短い連載作品になるかと思いますが、気が向いたら☆評価なりブクマなり感想ください

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