元サラリーマン、アメリカ空母を検討する(1)
私の名は市ヶ谷岩雄、かつてはただのしがないアラフォーサラリーマンをしていたが、今は違う。
今はその生涯に幕を閉じ、転生後の新たな人生を歩むための一歩を踏み出している。
その一歩とはつまり、転生後の異世界に連れて行く空母を選ぶ事だ。
別段、空母を連れて行かなければならないというわけではないが、女神が転生後の異世界に何か欲しいものはないか? それを与えてやるというので空母を所望しようと考えたわけだが、ではどの空母を所望するか? というところで今思考を巡らせているのである。
まず最初の決定事項は現代空母である事だ。
しかし現代空母と言っても色々ある。
2021年現在、空母保有国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、イタリア、中国、インド、タイと8カ国もある。
これに準空母、いわゆるヘリ空母や強襲揚陸艦も含めればその数は更に増えるわけで……これらの中から最適解を見つけ出さなければならない。
しかし、それぞれの空母は各国の運用条件や環境に適した設計思想の元建造されている。
一概にこれだ! というものはそうそうないのかもしれない……
せめて訪れる異世界の海洋事情がわかればよいのだが……
しかし、今それを言っても始まらない。
まずは一番無難な部分から検討していこう。
現代空母において、誰もが思い浮かべるのがアメリカ海軍の空母だろう。
世界の警察を自称する彼らは現代世界において唯一10隻以上の空母を保有、世界中で展開している。
まさにアメリカのシーパワーの象徴だ。
そのアメリカの現在の主力空母はニミッツ級航空母艦だ。
このニミッツ級は最初の1番艦ニミッツが就役したのが1975年なのに対し、最終10番艦のジョージ・H・W・ブッシュは2009年就役である。
空母は建造に膨大な予算がかかるため、10隻を建造すると決めても他の艦船と同じようにドンドン建造できるわけではない。
既存の現役の空母の老朽化による退役を持って交代する形で新造空母は就役するのだ。
だからこそ、アメリカであっても時間をかけて10隻を完成させたわけだが、おかげで1番艦のニミッツと最終10番艦のジョージ・H・W・ブッシュではシステムに大幅な変更が成されており、同型艦であっても同じと言っていいのかは微妙なところだ。
そんなニミッツ級を要求するとなれば、やはり最終10番艦のジョージ・H・W・ブッシュが良いのだろうか?
とはいえ、ジョージ・H・W・ブッシュはそれなりに曰く付きの空母だ。
システムを大幅に変更したりした影響なのか、不具合が絶えず、ドッグに入渠している期間も長い。
また、乗員が次々と自殺したという点でも話題となった。
そういう意味では別の艦にすべきかもしれない。
となれば日本にとってなじみの深い、ロナルド・レーガンがいいかもしれない。
ロナルド・レーガンは2015年からジョージ・ワシントンと交代する形で横須賀基地に入り、母港としている。
また2003年に竣工した9番艦と新しい空母でもある。
うん、いいのではないか? ロナルド・レーガン!
艦載機は戦闘機のF/A-18E/F スーパーホーネットに電子戦戦闘機EA-18G グラウラーに早期警戒機のE-2D アドバンスドホークアイなどだ。
機体数も最大で90機近く収容できるなど、こんな空母を連れていったら魔王軍など相手にならんだろう。
しかし、F/A-18E/F スーパーホーネットは優秀な艦上戦闘機ながら、最先端のデジタル化に対してはブロック3など次世代コックピット改良案がまだ提案中だ。
異世界でデジタルデータリンクが必要かは不明だが、ここは少し考えなければいけない点だろう。
そしてEA-18G グラウラーは電子戦戦闘機……異世界で電子戦なんて発生するのか?
まず誰もが異世界、魔王の単語から中世ヨーロッパ風の文化文明圏を思い描くだろう。
そんな世界で電子戦?
まず発生しないだろ……
まぁ電子戦戦闘機EA-18G グラウラーの処遇は後で考えるとして、次世代システムが欲しい……
そうなればやはり現代アメリカ空母の最先端であるジェラルド・R・フォード級空母。
その1番艦ジェラルド・R・フォードが本命だろうか?
設計や外観はニミッツ級を引き継いでいるが、次世代新技術が詰め込まれている。
特に電磁カタパルトは魅力的だ。
これの登場によって機種によって色々と調整していた搭載重量の問題が解決した。
とはいえ、この電磁カタパルトには課題が多いのも現状だ。
戦闘機に武装を多く搭載して射出できるようにはなったが、その一方でテスト中に増槽を装備した戦闘機は射出出来ない欠点が判明しており、これ以降の空母には採用しないと、かのトラ○プ大統領が発言している。
そして電磁カタパルトは電力の消費も激しく、燃費は悪い……使い勝手がいいかは微妙なところだろう。
まぁ、新システムを積んだ新造艦に課題は付きものだ。
ネガティブな面ばかり列挙しても仕方がないだろう。
ジェラルド・R・フォードで最も注目すべきはやはり艦載機に名前を連ねる戦闘機、F-35Cだ!
アメリカの航空機メーカーであるロッキード・マーティンを中心とした世界各国の複数企業によって開発された最新のステルス戦闘機!!
ヘルメットディスプレイによる全周囲視界を実現し、コックピット内の操縦機能は液晶タッチ画面でまさにスマホ世代の戦闘機と呼ばれている。
高度な情報システムと相手のレーダーに補足されないステルス性能。
まさに未来の戦闘機だ!
こいつを使って何もできない魔王軍を一方的に蹂躙する、最高じゃないか?
問題は、異世界でステルス性能って必要あるの? って話なのだが……
ステルス戦闘機は別段、機体が透明になるわけではない。
レーダーに補足させにくい形状のデザインと表面にレーダーを反射する塗料を塗っているだけで目視では確認可能だ。
つまりは、どれだけ高度なステルス技術を持った機体であっても、戦闘機をレーダーで捕らえるという文化がない異世界では無用な産物というわけだ……
これ、F-35Cが搭載されてるからという理由はアドバンテージにならなくね?
特にオチもない短い連載作品になるかと思いますが、気が向いたら☆評価なりブクマなり感想ください