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元サラリーマン、インド空母を検討する(1)

 私の名は市ヶ谷岩雄、かつてはただのしがないアラフォーサラリーマンをしていたが、今は違う。

 今はその生涯に幕を閉じ、転生後の新たな人生を歩むための一歩を踏み出している。


 その一歩とはつまり、転生後の異世界に連れて行く現代空母を選ぶ事だ。


 とはいえ考慮の末にアメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦がベストではないか? との結論にいたったが、まだ結論を早急に出す時ではない。


 アメリカ以外の国の空母も検討すべきであろう。


 そんなわけで今回はインド空母を検討してみようと思う。

 うむ、インド。それは摩訶不思議な国である。


 保有航空機という面では空軍がMiG-21bis、MiG-29B、Su-30MKI、ミラージュ2000、ラファールを保有しており、さらにイギリスとフランスが共同開発した超音速軽攻撃機SEPECAT ジャギュアもいまだ現役だ。

 そして幾多の苦難を乗り越えて完成させた国産戦闘機テジャスが2015年より運用が開始されている。


 さらにロシアとの共同開発で第5世代ジェット戦闘機を開発しようという計画FGFAが立ち上がるが、インドは2018年、これから撤退している。

 そんなFGFAと平行してインド単体で第5世代ジェット戦闘機を開発しようという計画AMCAも開始されている。


 また海軍では空母艦載機のMiG-29K、復座型のMiG-29KUBが運用されている他、テジャスの艦上機試作型があるが、これはまだ試作機で完成していない。

 いちようは2020年1月に空母ヴィクラマーディティヤへ着艦試験をおこなっているが、まだ採用とはなっていない。


 その他、将来的にはAMCAの艦上機型の開発も念頭にあるようだ。


 と、ここまであげてきた機体をみてもわかる通り、インドの航空機は東西入り乱れるカオスワールドだ。


 確かに戦闘機はどの軍隊も複数の機種を取得する。

 それは戦闘機に限らず航空機の種類は1種類のみに絞るのはリスクが生じるからだ。


 例えば、部品や機材に不具合が生じる。システムに重大なエラーが発生する。材質の劣化によって想定していなかった重大な欠陥が生じる可能性がある。パイロットが深刻な生命の危険に晒される恐れがあるetc……

 実際に運用を開始してから発覚するエラーというものは存在する。


 そして、そういったエラーが発覚すると原因究明のため、基本的に同機種すべての運用を一時中断しなければならない。

 何せ事故を起こした戦闘機が原因究明中にまた事故を起こしたとなれば「何をやってるんだ?」という話になるからだ。


 だから、仮に戦闘機を1機種しか保有していなかった場合、重大なエラーが発生し原因究明のため運用を一時中断すると、飛ばせる戦闘機が1機もないという事態に陥ってしまう。

 そして原因究明に時間を有すれば有するほど、自国の領空を無防備に晒す期間が長引いてしまうのだ。


 それすなわち、いくらでも領空侵犯してくれださいと言っているようなものだ。

 敵国に、いつでも爆撃しに来てくださいと宣言するようなものだ。


 だからこそ、1機種が運用を一時中断しても、他の機種がその間をカバーするという体制が必要なのである。


 とはいえ、インドの場合はやりすぎである。

 何せ西側フランスの戦闘機に東側ロシアの戦闘機、果ては国産戦闘機ときたらこれらに乗り込むパイロットは大変だろう。

 もし、異動による機種変換が発生すれば、また一から学び直さなければならないかもしれないからだ。


  航空機の操縦機器の扱いや配置、思想etc、東西で統一されているわけがない。

  これらが入り乱れるインド空軍は整備の面でもさぞ気苦労が絶えないことだろう。


 そんなインドであるが、では果たして東西どっちの陣営になるのか?

 これは極めてグレーと言わざるをえない。


 インドは元よりロシアと仲がいい。

 それはインド海軍の艦艇の多くがロシア製であったり、ロシアと共同で造った艦艇であったり、ロシアからリースした潜水艦であったりからもわかるだろう。

 ロシアと共同で開発した艦艇にロシアと共同で開発したミサイルを搭載して運用する実験艦も存在するくらいだ。


 また2021年12月にはインドの港湾施設や海軍基地を、ロシア海軍の艦艇が燃料補給や補修で利用できるようにする協定を締結している。

 これにはインド海軍の艦艇が航行中のロシア海軍の艦艇から補給支援を受ける事ができる事も含まれており、印露両海軍の親密ぶりが窺えよう。


 また中印国境地帯の部隊などに配備するためのロシア製ライフル銃50万丁をインド国内でライセンス生産する契約も結んでおり、2018年にはロシアの防空ミサイルS-400を購入している。

 これに伴って2021年1月には操作訓練のために100人規模の将兵団をロシアに派遣すると発表した。


 このインドの動きにアメリカは反発している。

 そしてスペイン空母の時にも触れた通り、S-400を導入したトルコにアメリカは制裁を科したが、インドに関してはその動きは今のところ見られない。


 何せインドは中国を牽制するアメリカ、日本、オーストラリア、インドの4カ国で構成する国際枠組みである「クアッド」の一員だからだ。

 中国を牽制し、押さえ込む意味でインドの脱落はあってはならない。

 だからこそ、クアッドに繋ぎ止める意味でもインドに対してアメリカはトルコほどの強い反発は示していない。


 何よりインドには中国、パキスタンという核を保有する敵国に挟まれた国土という地政学的な事情がある。

 西側のみ、東側のみという観点に立っての兵器調達では厳しいのだ。


 さて、話は空母から逸れたが、インドは空母の運用に関してはアジアでも古株だ。

 というよりも戦後のアジアでは長らくインドしか空母を運用していなかったのだ。


 インドが最初に空母を取得したのは1961年。

 元はイギリスで戦後すぐに進水しながらも未完成のまま放置されていたマジェスティック級空母ハーキュリーズを買い取って工事を再開、アングルド・デッキや蒸気カタパルトを設置しインド初の空母ヴィクラントとして就役させた事からインドの空母史ははじまる。


 ちなみにマジェスティック級空母はイギリスで改コロッサス級空母として1943年から1945年にかけて6隻が起工、進水するも第2次大戦が終結した事もあり、1隻も完成する事なく戦後放置されていた。

 そのためマジェスティック級空母はどれもイギリス海軍では就役していない。


 マジェスティック級空母は「ハーキュリーズ」がインド海軍で「ヴィクラント」に、「マグニフィセント」がカナダ海軍にレンタルされ退役、その後継として「パワフル」が「ボナヴェンチャー」に改名されてカナダ海軍に売却された。

 「マジェスティック」と「テリブル」はオーストラリア海軍に売却され「メルボルン」と「シドニー」となった。

 そして「レヴァイアサン」だけは他国で就役する事なく、故障したアルゼンチン空母の機関部を修理するため主機を外された後にスクラップとなっている。


 そんなイギリス空母なのにイギリス海軍に在籍した事のないマジェスティック級空母であるが、インド海軍においてはヴィクラントとして1997年まで現役にとどまった。

 この間、ヴィクラントは第三次印パ戦争に従軍し、実戦を経験している。


 1982年からは大規模改装をおこない、スキージャンプ勾配を設置。

 艦上機もBAe シーハリアーに更新しSTOVL空母となった。


 そしてインドは1986年、2隻目の空母を取得する。

 その空母はイギリス海軍を1984年に退役したセントー級空母ハーミーズだ。


 インドは購入したハーミーズを近代化改装し、1986年、ヴィラートとして就役させる。

 こうして1980年代後半、インド海軍は空母2隻体制を確立したのだ。


 しかし、複数の空母を運用する体制は長くは続かなかった。

 元よりヴィクラントは1961年に就役した空母、尚且つ進水したのは1945年、すでに艦齢は40年を越えていた。


 そのため90年代に入ってからは老朽化の影響で活発な活動はできなくなってしまった。

 そしてヴィクラントは1997年に退役する。

 その後はムンバイで水上博物館として展示されていたが2012年に博物館は閉鎖、2014年にスクラップ処分が決まった。


 ヴィクラントが退役し、インドに残された空母はヴィラートのみとなったが、このヴィラートもインド海軍には1986年に就役した身ではあるが、すでに老朽艦であった。


 当然だ、何せイギリス海軍時代に近代化改装でスキージャンプ勾配を設置しSTOVL空母になったとはいえ、元はセントー級空母4番艦ハーミーズ。

 起工は1944年、進水は1953年、就役は1959年とヴィクラントと同年代。


 というよりヴィクラントがインド海軍に就役するよりはやくイギリス海軍に就役している。

 つまりは老朽化で退役したヴィクラントよりも更に高齢艦なのだ。

 おかげでヴィラートは就役後も寿命延長のための補修作業が定期的に続く金食い虫となる。


 しかし、だからといってインド海軍はヴィラートを退役させようとはしなかった。

 何せヴィラートはインドが保有する唯一の空母。

 なので装備を一新しながら次の空母の登場まで寿命延長を続けた。


 そのおかげもあってか「世界最古の現役空母」と呼ばれヴィラートはギネス認定までされる次第となり、艦上機もBAe シーハリアーから更新をおこなわなかったため、2016年にシーハリアーの運用を終えるまで、インドは世界で最後のシーハリアー運用国であった。


 まさに空母のおじいちゃんと化したヴィラートであったが、1999年から2001年にかけて大規模な近代化改装が行われた。

 この間にインドは新たな空母を取得すべく、ロシアとキエフ級4番艦アドミラル・ゴルシコフの購入に関する交渉を開始、2004年には合意に至り、2008年からアドミラル・ゴルシコフを航空巡洋艦から完全な姿の空母へと大改装する工事がはじまる事が決定した。


 これによって後継空母の目処が立った事からヴィラートは2012年頃の退役が決定する。

 ところが、アドミラル・ゴルシコフの改装開始が2008年よりも後にずれ込む事になり、これにともなってヴィラートの退役時期はずれる事となった。


 そのため近代化改装を施して寿命を延長しなくてはならなくなり、2008年から2009年にかけてヴィラートは再び改修作業を受ける事となる。


 こうして2009年に現役に復帰したヴィラートであるが、この頃のインドの空母事情は二転三転していた。

 何せ、アドミラル・ゴルシコフの大規模改装に関してトラブルが続き、引き渡し時期が当初の予定からどんどんずれ込み、どんどん改修費用が膨れ上がっていったのだ。


 尚且つ2004年からはじまった国産空母ADS計画も2009年にIAC-1として起工するがインフラ不足など、様々な理由で工事は停滞し、2010年に進水、2013年に就役というスケジュールを当初は予定していたが、これはどんどん遅延していき、結局進水は2013年となり就役は2019年と大幅に遅れる事となった。

 しかし、工事はさらに遅れ、就役は2023年となってしまう。


 本来のスケジュール通りなら一瞬ではあっても空母3隻体制が実現したはずであったが、世の中ままならないものでヴィラートは2017年に退役する。

 1997年以来のインドの空母2隻体制は2014年から2017年のわずか3年で幕を閉じる。


 退役したヴィラートは博物館となる案が浮上するも2021年スクラップとして解体される事が決まった。


 そんなインドは現在、初の国産空母がようやく就役直前というところまでこぎ着けたがまだ未完成だ。

 現在、インドが保有する空母は1隻のみ。

 ロシアから買い取ったアドミラル・ゴルシコフを大規模改修した空母ヴィクラマーディティヤである。


 ではこの空母ヴィクラマーディティヤがどのようなものであるが、じっくりと見ていこう。

特にオチもない短い連載作品になるかと思いますが、気が向いたら☆評価なりブクマなり感想ください

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