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見知らぬ二人の訪問



「えっと……どうして、こうなった?」



 そして現在、幼女と美女を家の中に招き入れ、テーブルを挟んで向かい合うように座っている。


 なんで招き入れたかって? 俺だって嫌だったが、あのままパパパパ連呼されたらご近所さんに変な目で見られかねんし。苦渋の決断だ。



「あ、お構いなく」



 そう言われはしたし、俺も必要ないと思ったのだが……なぜか、茶をコップに注いで出してやった。幼女には、オレンジジュース。


 その幼女は、両手でコップを持ち、オレンジジュースをごくごく飲んでいる。……俺の膝の上で。



「んごきゅ、んごきゅ……んまーい! これんまい!」


「あぁ、よかったね」


「こら、はしたないですよ」



 向かい合うように座る美女とは違って、幼女は俺の膝の上に座っている。なぜか。ごねられたからだ。


 それにしても、よほど喉が渇いていたのか。まさか一気に飲み干してしまいとは。それも、すごく目を輝かせている。まるで見知らぬおもちゃを目にした子供のようだ、知らんけど。



「……ふぅ」



 とりあえず、俺もお茶をいっぱい。渇いていた喉を潤す。うん、冷たくてうまい。


 それから、正面に座る美女を観察する。輝くような金髪は腰まで伸び、思わず触ってしまいたくなる。宝石のような緑色の瞳は、まさに宝石をそのままはめ込んだのではないかと言われても信じてしまいそう。すっと伸びた鼻に、長いまつ毛……瞳は大きく、整った顔立ち。作り物のような、この世のものではないような顔。


 それに、顔以外も……服越しでもわかる大きな胸元は男の目を引くこと間違いないだろう。間違いないのだろうが……



「あの……まず、先に確かめておきたいん、ですが……」


「はい?」


「……ずっと、その恰好で?」



 まず確かめておかなくてはならないこと……それは、彼女の格好についてだ。とんでもない美女である彼女は、おそらくなにを着ても似合う、人の注目を集めることだろう。うん、人の服装にとやかく言うほど俺は野暮ではない。


 ……だが、その服装は藍色を基調とした、白いエプロンに膝下まである長いスカート……いわゆる、メイド服というやつだった。



「えぇ、このご自宅まで、この格好で歩いてきましたが……」


「マジかよ!」



 正面で正座のまま形を崩さない彼女は、表情を変えないままうなずく。うわ、うわぁ……


 そんな目立つ、メイド服でここまで? 勘弁してくれよ……誰にも見られてないよな? 傍から見たら俺、真昼間からメイド服の美女を呼び込むヤバい奴じゃん! しかも子連れで!



「頭を抱えて、どうなさいました?」


「……いや、いい。それより、そろそろ目的を……てか、あんたら誰?」



 このまま頭を悩ませていても、話は進まない。頭が痛くなるような展開だが、なんとか耐えるとしよう。


 まずはこの二人が何者なのか……それを聞くと、美女はなぜか軽くため息を漏らす。



「やはり、覚えていないのですね」


「?」


「いえ、なにも。……では、私から。私は、アーシャ・ライカと申します」


「アー……」



 名乗る美女、その名前は……やはりというかなんというか、横文字だった。髪の色や瞳の色、日本人ではないだろうと思っていたが、やはり外国の人だったか。



「どうか、アーシャとお呼びください」


「はぁ……アーシャさん」


「アーシャと」



 ……初対面なのにぐいぐい来るな、この人。


 ともあれ、アーシャと名乗る美女は、なぜか俺の名前を知っている。そして俺をパパと慕うこの子供……髪の色が似てるし、この子供とアーシャが親子だとしたら……


 ……いやいや、確かにこんな人と結婚できたらそりゃ勝ち組だろうけど。会ったこともないし、やはり俺がパパというのはなにかの間違いだろう。



「それで、えっと、アーシャ……この子は……?」


「あなたのお子様です」



 ……ダメだ、やっぱりわからん。



「なにがなんだかわからない、といった顔ですね」


「まあ……」



 やっぱり俺、騙されそうになってるのか?


 いくら、これまでに見たことのないほどの美女とはいえ、ここはやはり帰ってもらって……



「まず、簡潔に伝えさせていただきます。ユウヤ様……あなたと、私たちは決して短くない時間を、共に過ごしました」


「へ?」



 なにを、言っているのか。覚えなどないと、そう言おうとするが、彼女の真剣な顔が、それを言うのを躊躇させた。



「あなたには、記憶がない時期があるのでは、ありませんか?」


「!」


「……図星のようですね。それはこの世界で言うならば、おおよそ一年ほどのはず」



 アーシャの指摘に、俺は心臓を掴まれたような気持ちになる。だって、とある一年分の記憶がないというのは事実で、しかもそれを話したことは誰にもないからだ。


 記憶がない……そう気づいたのは、なにかがおかしい、周囲の反応がおかしいと感じたからだ。会話が噛み合わない。確かめる方法は、簡単だった。カレンダーを見れば、昨日までと知っている20XX年から、一年分進んでいるのだから。


 そのせいで俺の身に起こったことは一口では語れない……だが、今は置いておこう。それよりもだ。


 この女、今なんて言った? この世界……と、そう言ったのか?



「そのお方は、ティム・ラ・フランセル様。私たちの住む世界……こちらの方には、異世界と言った方が通じやすいですね。その世界、とある王国の後継者。あなたは異世界に召喚され、王国の姫と作った子……それが、そのお方です」


「……」


「パパー!」



 ヤバイな……本格的に、頭がに痛くなってきたぞ?

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