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薬局よもやま話

罵詈/有無~独白~ ~警告なく進行するため注意を要す~

作者: 須加登呂慈

前回のを読み返して、やっぱり自分はこういうのが好きだと再認識しました。


誰からも見向きもされなくても、また出します。

想像してみてほしい。



君は白濁した液体を飲むことを強要され、そして台へと拘束される。


そして、相手から命令されるまま、さまざまな体位をとるんだ。


君は苦しさと恥辱に耐えながらも、相手の言いなりだ。


そして君は、有害な照射を何度も何度も浴びせられるんだ。



さあ、君はどんな光景を思い描いただろうか。



大人の世界を知っている君なら、想像することは容易だったと思う。



そう、上部消化管造影検査。


つまり、バリウム検査のことだね。



え? 違うことを想像した?



ははは、きっと君は僕と同類かもしれないね。


どうかこれからも僕と仲良くしてくれると嬉しいよ。



ちなみにバリウムという名称は『永久の白』という語源があるんだ。

とても美しく清らかな女性を彷彿とするような由来だね。



そんな無垢で汚れない彼女によって、僕たちは体の中へ侵入され、中を白濁液でべったりどっぷりたっぷりといっぱいにされるわけだ。



もう無理。もう許して。


彼女に苦しめられ、そう懇願する僕たちを嘲笑うように、


とどめの放射線の照射プレイが待っている。



これだけの侵襲行為のオンパレード、垂涎ものだね。


君もそうだろう?



ああ、最後のお土産の刺激性下剤で腹痛まで起こさせてくれるのも大事だね。



浦島太郎に乙姫さまがくれた玉手箱のように、完全放置状態で痛恨の一撃をお見舞いされると、苦しみから沸き上がってくる悦びもひとしおだ。



時間差で、油断したときに責められるのって結構、僕は好きだ。


君はどうかな。



さて、そんなバリウム検査は、僕としては毎日でも受けたいプレイだけど、ノーマルな人たちってどうしてあれを受けるのかな?


やっぱり人間誰しも、誰かに虐げられたい欲求を持っているということなのだろうか。


でないと辻褄が合わない。



だってバリウム検査では実際、早期の異常は難しく、ある程度の形状まで進行した異常でなければ見逃されてしまうからね。


もちろん、進行しても病変が平坦であれば、見落とされる可能性も高い。


僕は侵襲のデメリットに対して、ほとんど異常発見のメリットはないと思っている。

一説によると内視鏡の1/3程度しか胃がん発見率はないらしいね。


よもや、それを毎年受けるなんて、僕の同類以外ありえないと思っている。



苦しめられたいんだろう? 君も。

体を思いっきり痛ぶって欲しいんだろう? 君も。


わかってるよ。

恥ずかしがらなくてもいいんだ。



ちなみに一番のリスクである腸管(ちょうかん)穿孔(せんこう)は、高齢者しか今のところ報告はない。


僕は毎年、下剤を飲まずにどこまで腸管裂孔の恐怖に耐えられるか自分を虐め倒すんだけれど、僕の腸管括約筋が、僕の意思に反して異物を押し出してしまうから、まだその恐怖や苦しみを本気で味わったことはない。



まあ、もしなったら緊急手術+人工肛門。

場合によっては死亡するケースもあるらしい。


まあ僕はМなだけで死にたいわけじゃないから、その辺は気をつけて楽しむけどね。



あと、トイレを詰まらせたりするとほんとうに大変だよね。



僕の自宅のトイレは節水タイプだから、毎年妻や娘に怒られるんだ。



特に娘の、汚物を見るような目がさ、


たまらないんだよね。



汚物はトイレの奥に潜んでいるんであって、僕自身は汚物ではないんだけれど、それを生成したものとして同一の扱いを受けるわけだ。


でも、娘に怒られながらゴム手袋を何重にも装着して、トイレに手を突っ込ませられてる自分の虐げられている姿も、なんか、いいかなって思ったりすることもあったりして。




あれ? 何の話をしてたんだっけ?


ああ、そうそうバリウムの話だったね。



昔見た医療ドキュメンタリーで、

『人間が摂取した抗生物質が尿中に排泄され、下水を経て、河川へ流入し耐性細菌を増殖させている』って特集をしてたのを見たことがあったのだけど、


僕としては、そんなことよりも、あの決して融解しない金属が便と結合した後、どこへ流れ、蓄積しているのかの方が心配だよ。



これから先の未来、バリウムと結合し、永遠の白さを手に入れてしまった糞便が、地球を覆い尽くしてはしまわないかと。


碧く輝く惑星である地球が、永遠の白い惑星になってしまわないかと。



僕は日夜それを危惧しているんだ。



今日も僕は、そんな地球の未来を憂いながら、患者に下剤を渡し続ける。



ただひたすら、下剤を渡し続けるんだ。



本当はこの話をバルスカ・ウム・ゲリータという悪の大佐に独白してもらうつもりで書いていたのですが、名言を使い倒せないまま、お蔵入りとなりました。


オチはもちろん、

あぁあ!! 腹がぁぁぁ! 腹がぁぁあ!!

でした。

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